『子供はわかってあげない』レビュー:美波ちゃんは、緊張すると笑い出してしまう女の子。劇中に描かれていないその理由
美波ちゃんは、緊張すると笑い出してしまう女の子。水泳部の大会中や、監督の真面目な会議中、そして大事な告白をしたりする時など、勝手に笑顔になり堪えられず笑ってしまう。
その姿から、この子はどこか自己防衛をしているのではないのだろうかと、推測する。
幼い頃に両親は離婚し、今のお父さんは実は本当のお父さんではない。しかし、美波が暮らす朔田家からは悲壮感や暗さは微塵も感じられない。それはきっと母や父のお陰かもしれないが、きっと美波自身が、知らず知らずのうちに犠牲にしている部分があるのかもしれない。
作中では、そんなことには決して触れないが、一夏で経験したことを母と語るシーンで、ダムの一部が決壊したかのような感情が漏れ出す姿を見て、そう感じてしまう。
「もういいんだよ」隣に座って、そう言いたくなってしまう。こんなにも人の温もりを感じ、人と関わりたくなるのは、きっと沖田マジックなのでしょう。
人との距離感が分からず、どこか温度の低い世の中に優しさをぶち込んでくださる監督の作品は、本当に多くの方に観ていただきたい。
豊川悦司演じる、友充と美波が別れ、それぞれの暮らしに戻る背中。あの背中は、今後ずっと脳裏に残っていくでしょう。
色んなことを想像させてくれるとてもお気に入りのカット。
思い返すと、まるで自身の思い出の夏ではないかと錯覚するほど、色んなシーンが蘇ってくる。こういった残り方が、いい映画というものなのでしょうね。
皆様もどうか、この優しさに包まれてみてはいかがでしょうか?
それでは今回も、
おこがましくも紹介させていただきました。
(文:橋本淳)
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