2021年08月28日

千葉真一 追悼:世界のアクション映画を変えた名優に捧げる「決まってるね、千葉ちゃん!」

千葉真一 追悼:世界のアクション映画を変えた名優に捧げる「決まってるね、千葉ちゃん!」


JACを率いての
1980年代の大躍進

千葉真一の大きな功績のひとつとして、1970年にジャパンアクションクラブ(通称JAC)を創設し、そこから志穂美悦子や真田広之など世界に通用するアクション・スターやスタッフを数多く育成し続けていったことも挙げられるでしょう。

JACの面々は1970年代以降数多くの映画やドラマのアクション・シーンやスタントを担うことになっていきますが、千葉真一自身がアクション監督を務めながらJACの面々ともども臨んだ超大作が、1979年の角川映画『戦国自衛隊』でした。



半村良の原作を基にした、現代の自衛隊隊員たちが戦国時代にタイムスリップするという前代未聞のアイデアは、当時のメジャー映画会社のお偉方からまったく理解してもらえず、製作の角川春樹は企画を通すのにかなり苦労したとのことですが、千葉真一はこれに大きく賛同。

戦車やヘリコプターなどから繰り出される現代兵器の爆炎の中を人馬が走り回り、戦国武者(真田広之!)がヘリから命綱なしで飛び降るなど、これまで外国映画でもお目にかかったことのないセンス・オブ・ワンダーな映像がこれでもかといわんばかりに繰り広げられていきます。

今、これらのシーンをCGなしで描出することはおそらく不可能であろうことの数々が、ここではCG抜きの(そもそもそんな技術はまだ映画に用いられていない時代)生身のスタントを駆使して全編にわたって展開されていったのです。

千葉真一本人に「撮影を終えた夜毎に飲む酒が、こんなに美味いと感じたことはない」と言わしめた充実した作品であり、後に俳優生活50周年記念パーティの際も、彼は本作のエンディングテーマ「ララバイ・オブ・ユー」をお祝いに駆け付けた人々の前で熱唱したとのこと。

そして、「また新たな『戦国自衛隊』を作りたい!」と企画を練っていたとも聞かされています。

『戦国自衛隊』以降の千葉真一はJACをベースに、さまざまなアクション&時代劇を映画、ドラマ、舞台を問わず繰り広げていきますが、映画の主演は『魔界転生』を最後にしばらく途絶えていくのは、彼自身が映画スターであること以上に、映画人として日本映画界にアクションの新風を吹き込むことに意欲を燃やしていたからでしょう。

演出・主演を務めたミュージカル「ゆかいな海賊大冒険」(82・83・84)は連日満員となり、「深夜へようこそ」(86)「夢に見た日々」(89)と山田太一脚本のTVドラマに主演、そして1990年には真田広之主演『リメインズ 美しき勇者たち』で映画監督デビューも果たしています。

一方では『里見八犬伝』(83)『必殺4 恨みはらします』(87)『いつかギラギラする日』(92)といった深作欣二監督作品に助演しているときの彼の活き活きとした姿!

かたや五社英雄監督『闇の狩人』(79)や岡本喜八監督のTV時代劇『太閤記』(87/何と千葉扮する明智光秀が、松方弘樹扮する織田信長と本能寺の変で一大チャンバラを展開!)では、ずっとリスペクトし続けてきた監督の作品に初出演するということで、現場では新人俳優のようにガチガチになっていたという、今となっては微笑ましいエピソードも伝え聞かされたりもしています。

こうした流れの中、千葉真一の時代劇アクションとしてのひとつの到達点が、1989年の降旗康男監督作品『将軍家光の乱心 激突』でしょう。



徳川三代将軍家光の乱心によって命を狙われることになった実子・竹千代を護ろうと奔走するする浪人衆の決死の活躍を描いた本作で、千葉真一は家光側の剣豪、即ち悪役を買って出ながらアクション監督も兼任し、それまで培ってきたアクション技術の数々を惜しむことなく注ぎ込みながら、その映画愛を露にしています。

劇中『ワイルドバンチ』(69)など彼が愛してやまない名作映画群へのリスペクトも大いにうかがわれ、また父と子の絆が隠れたモチーフになっていることから、音楽監督の佐藤勝には本作を「時代劇版『チャンプ』(79)にしたいんだ!」と口角泡を飛ばす勢いで訴えていたとのことでした。

また本作で千葉が演じた役の名前は伊庭庄左衛門、そして『戦国自衛隊』で彼が演じた主人公の名前は伊庭義明三等陸尉。

この両名、もしかしたら同じ血筋だったのかもしれませんね(少なくとも本人はそう思って演じていた?)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!