2021年12月30日

<新作レビュー>『君といた108日』信仰によって愛する者の死を乗り越えたシンガーの実話

<新作レビュー>『君といた108日』信仰によって愛する者の死を乗り越えたシンガーの実話




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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT


人気シンガーソングライター、ジェレミー・キャンプの愛と信仰にまつわる実話を基にした作品。

敬虔なクリスチャンシンガーでもある彼は恋人がガンであることを知りつつ結婚し、必死に神に祈り続けるものの、結果としては4か月後に亡くし、絶望の淵に追いやられていきます。

しかし、最終的に彼の心を救ってくれたのもまた篤い信仰心であったという、文章にしてみるとキリスト教の布教映画みたいに思われる方も多いかもしれません。



実際、信仰心の重要性を説くことが製作意図に込められているのも紛れもないことでしょうし、ジェレミー・キャンプ自身、本作の制作に対しての協力を惜しまなかったとも伝えられています。

ただし、信仰云々はともかくとして、多くの人は何かを信じ、すがり、祈ることで心救われることが多々あるのも事実であり、この主人公に関してはたまたまそれが信仰であったという解釈で接していけば、本作も人生の大きな別れにつきまとう苦悩の果ての絶望、それを乗り越える再生と、また必ず訪れるであろう新しい愛を麗しく描いたラブ・ストーリーとして見ることは大いに可能な気もします。

またそれこそ“奇跡”の世界はSFやホラー、ファンタジーなど私たちが日ごろ見慣れたフィクションでは普通に描かれ訴えられてきているものであり、今回はそれが実話を基にした信仰心を軸に、心の中で成し遂げられていった……。



そう捉えつつ、一方ではちょっと視線を変えて、たとえば主人公に扮したKJ・アパの誠実な佇まいや、心洗われる歌曲の数々。

さらにはその頼もしくも慈愛深い父親に、数々のコワモテな役柄で知られる名優ゲイリー・シニーズが扮しているという映画的快哉よ!

(私生活の彼は、負傷退役軍人へのチャリティ活動を積極的に行い、またミュージシャンとしてバンドでベースを弾いているとのこと。もしかしたら彼も敬虔なクリスチャンなのかな?)

映画とは見る人の意思ひとつで、いかようにも中身を換骨奪胎させながら印象を変えることが可能であることを、改めて教えてくれる作品です。

もちろん、クリスチャンの方々にとってはありがたい映画であることでしょう。

(文:増當竜也)

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