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【映画VS原作】『ドライブ・マイ・カー』が魅せる狂愛|原作を読むからこそ楽しめる“村上春樹ワールド”


衝撃のストーリー:映画『ドライブ・マイ・カー』は「ドライブ・マイ・カー」ではなかった



家福(西島秀俊)と音(霧島れいか)のベッドシーンから映画はスタートする。行為中の会話、と言ってもほとんど一方的に音が家福に話しているだけだが、そのセリフを聞いて頭の中が「?」だらけになった。

ーーこのセリフ、見たことあるけど、「ドライブ・マイ・カー」じゃない。

でも、確実に見たことがある。なんだっけ、これ。…あ、「シェラザード」のセリフだ。

「シェラザード」には、いわゆる不倫関係の男女が登場するのだが、その女が行為中に話す現実離れした物語と内容がほとんど同じなのだ。「前世はやつめうなぎだった」とか「高校生の頃、好きな男の子の自宅に空き巣に入ってバレない程度に物々交換をしたり、男の子の部屋のベッドの上で自慰行為をしていた」とか、聞けば聞くほどよくわからない物語である。

映画『ドライブ・マイ・カー』では、不倫関係の男女ではなく愛し合っている夫婦が、このような絵空事を話しながら互いを求め合っている。その姿は、紛れもなく理想の夫婦像だった。だって、結婚から数十年経ち年齢も重ね、普通は色恋だなんて気付かないフリをしながらなくなっていくものであろう。なのにあんなに…

他にも、「ドライブ・マイ・カー」のようで「ドライブ・マイ・カー」じゃない、既視感のあるシーンがあった。「木野」に登場するとあるワンシーンだ。



家福と音について理想の夫婦像だと語っておいてこんなことを話すのは心が痛いのだが、原作でも映画でも、音は家福以外の男性と大胆に不倫をしている。ただ、原作では不倫現場の目撃はしておらず家福の勘で察していた程度だったが、映画では出張が急遽なくなり帰宅したところ高槻(岡田将生)と関係を持っている現場を見てしまうシーンが出てくる。この部分は「木野」のモチーフが刷り込まれており、順風満帆な結婚生活との溝がより鮮明に描かれていた。

原作がそのまま映画化されるなんてことは思っていない。ある程度の脚色がついて当然だし、ましてや51ページの短編小説がそのままの形で3時間もの超大作になるとは(通常だと長編小説がたった2時間で映像化されるなんて、とむしろ逆のことを思うが)考え難い。

でも、まさか「ドライブ・マイ・カー」以外の作品の要素が盛り込まれているとは。これは、「女のいない男たち」を読んでいたからこそのサプライズだった。

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(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会