2021年10月29日

<東京が焼け野原?>『東京自転車節』は狂気あり笑いありのリアル・ロード・ドキュメンタリー

<東京が焼け野原?>『東京自転車節』は狂気あり笑いありのリアル・ロード・ドキュメンタリー

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ドキュメンタリー映画『東京自転車節』の快進撃が止まらない。7月10日にポレポレ東中野(東京)で公開されて以降、第七藝術劇場(大阪)、名古屋シネマテーク(愛知)で順次全国公開され、10月に入ってからはシネマチュプキタバタ(東京)、ジャック&ベティ(神奈川)、川越スカラ座(埼玉)、元町映画館(兵庫)とさらに館数を伸ばしている。

筆者は、10月に「青柳拓監督のトークショー付き上映」@シネマチュプキタバタに駆けつけ、その後監督と実際に話をする機会に恵まれた。いや、マジでコレいい映画!んで、青柳拓マジでいい人!…という訳でいま筆者は、「少しでも、この映画の素晴らしさを多くの人に伝えたい」という想いで、この稿を執筆しております。まずは、簡単に『東京自転車節』の概要から紹介していこう。

映画を観れば、絶対好きになる。愛されキャラの青柳監督

【予告編】


映画は、2020年3月の山梨県甲府市から始まる。地元で映画作りを続けながら運転代行のバイトをしていた青柳監督は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて職を失うことに。もともと大学進学時に借りた奨学金の返済額が500万円を超えているうえに、生活費のアテもない。たちまち困窮の危機に瀕してしまう。

そんなとき、日本映画大学(旧日本映画学校)の先輩から、「コロナで需要が高まっているウーバーイーツのバイトをやってみたら?」という提案を受ける。そして、ついでに「その様子を映画にしてみたら?」と。その先輩こそが、本作の構成・プロデューサーを務めている大澤一生さんである。

青柳監督は単身自転車で東京に乗り込み、スマートフォンとGoProで撮影しながら、ウーバーイーツ配達員としてコロナ禍の東京を駆け抜ける。宿無し金なし状態のなかで、彼は必死に毎日を生き抜いていく…。と書いてしまうと、いわゆる貧困層の実態を追ったヘビーなドキュメンタリーと思われそうだが、時々「あー疲れたー」と大の字になって、友達の家でゴロゴロしたりするのが逆にリアル。彼は、映画を観れば絶対好きになる愛されキャラなのだ。

青柳監督を取り巻く面々も個性豊か。例えば、飲み物を奢ってくれたり、何かと電話をかけてきて彼のことを心配してくれるひいくん。彼は生まれ故郷・市川三郷町の有名人で、監督第1作『ひいくんのあるく町』(2017年)の主人公でもある。第2作『井戸ヲ、ホル』(2020年)にも出演している、いわば「アオヤギ・ユニバース」のメインキャストも言える存在だ。

緊急事態宣言が解除されるまでステイホームを続ける、映画仲間の土くん。「大スターになりたい」と夢を語る、俳優(?)のおじさん。みんなみんなインパクト大で、みんなみんな愛おしい。『東京自転車節』は、緊急事態宣言下の東京を生々しく切り取った社会派セルフ・ドキュメンタリーではあるけれども、どこかユーモラスな雰囲気に包まれている。

そしてこれこそが、終盤に訪れる“ある展開”のフックになっているのだ。

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(C)2021水口屋フィルム、ノンデライコ

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