2021年08月27日

「八月は夜のバッティングセンターで。」第7話レビュー:山本昌と板谷由夏のアドリブ会話に泣いた(※ストーリーネタバレあり)

「八月は夜のバッティングセンターで。」第7話レビュー:山本昌と板谷由夏のアドリブ会話に泣いた(※ストーリーネタバレあり)



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テレ東が描く新感覚“ベースボール・ヒューマンドラマ”!
関水渚×仲村トオルW主演で、この夏開幕!

わけあって夏休みにアルバイトをすることになった17歳の女子高生・夏葉舞(関水渚)と「バットのスイングだけで、その人の悩みがわかる」と豪語する47歳の謎の元プロ野球選手(仲村トオル)。
二人がバッティングセンターに現れる女性たちの悩みを「野球論」に例えた独自の「人生論」で解決へと導いていく。

本記事では、そんな話題作の第7話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

「八月は夜のバッティングセンターで。」第7話レビュー



予告映像や「引き際」というタイトルから、つらい内容が予想できた回だった。レジェンドが登場するタイミングとその言葉が印象的だ。

今回の悩める女性は、雑誌の編集をしている尚美(板谷由夏)。
15年前は編集部のエースとしてたびたび表彰されていたが、最近いい企画を出せず、読者アンケートもビリから数えたほうが早い。後輩が上位になり、気まずい状況だ。

とうとう編集長(二人の話している感じからして同期っぽい)に異動を打診されてしまう。これからも世話になりたい、後輩の育成を頑張ってほしいと言う彼に「もう少し踏ん張りたいの」と頼む。そこまで言うならと、快く頷いてくれた。

バッティングセンターに訪れるが、懸命にバットを振るがほとんど当たらず、やっと当たっても球は飛ばずにすぐ落ちてしまう。そんな尚美を見て「少なからず俺には、彼女の心が泣いているように見える」と言い出す伊藤。「なにロマンチックなこと言ってんのよ」という舞(関水渚)のツッコミがよい。

「そんなやり方じゃずっと当たらない」という伊藤にイラつき「あなた元プロ野球選手なら教えてくださいません?」と言う尚美。

実は、尚美が舞に話しかけたときの態度が少し気になっていた。
企画のために話を聞いた舞に夏休み前に何をしていたか聞き、部活のことを思いだして言いよどむ彼女に「随分つまんない女子高生ライフね」と言ったり、自分からバッティングセンターの特徴を聞いておいて「もっと読者を惹きつける何かないのかな」と言ったり。

すべてにおいて感じが悪いわけではないし、うまくいかない焦りからそうなってしまったのかもしれない。

そんなわけで、今回もライフイズベースボールの世界へ。



尚美のいる編集部チームが現在勝っているものの、相手は勢いのある出版社だ。ピッチャーを務めることになった尚美は「経験者には経験者のやり方ってもんがあるんだから。まだ負けたくない」と勝負に挑む。だが失点を繰り返し、チームはピンチに追い込まれてしまう。

舞は「見てられない、いつもみたいにレジェンド出してよ」と抗議するが、伊藤は「それじゃあ彼女のためにならない」と拒否。

尚美の上司や後輩たちは、みんな本当にいい人だ。1話に登場したゆりこ(木南晴夏)の同期は手柄を横取りしたけど、後輩は仕事をほめられても尚美のおかげだときちんと言った。編集長も先ほど書いた通り、あくまで尚美の気持ちを尊重してくれた。

ライフイズベースボールの世界でもそうだ。尚美が投げる前も、失点を繰り返してしまった後も、変わらず励ましの声を送り続ける。どうするか伊藤に問われると「尚美さんが投げたいなら、うちらは反対しません」と強いまなざしで言う後輩女性。気を遣っているわけではなく、心からそう思っている目だ。

「ごめんね、もう大丈夫。こめんね、足ひっぱっちゃって。気づかないふりして。さすがに、もうちょっとつらいかなぁ、自分自身が」



客席へ去っていく尚美。現在のエースがピッチャーを交代すると、いい球を連続で投げ大勝利。歓声をあげる仲間たちを遠くの客席から見、タオルをかぶって泣く尚美。彼女の気持ちを思うと、見ているこっちもつらい。他人事ではなく、いつか自分にもこう感じるときがくるのかもしれないと思うと怖い。

尚美の場合、エースとして活躍していたことがあるからよりつらいのかもしれない。栄光を知っているから、今の自分に落差を感じてしまう。

そんな尚美のもとに近づく足音。

「誰にでも来るんです、このときが」

やってきたのは……

「ええ? ま、ま、昌だ~! 尚美さんの隣に山本昌がいる。あの! 山本昌がいる!」

興奮して横飛び? で伊藤の隣に異動してくる舞。今回もわかりやすい説明をありがとう。山本昌さんは私でもお名前聞いたことある。

「日本のプロ野球選手でただ一人、50歳まで現役で投げ続けたピッチャーだ。今の彼女に必要なのは、山本昌の言葉だ」



山本昌と尚美のやり取り、いつもにくらべてだいぶ長いが読んでいただきたい。すべての人に読んでほしいくらい素敵な言葉だ。

「誰にでも来るこのときって、どういうことですか?」

「周りを見て、自分を見て、何か変わんなきゃいけないな、って、悩むときです」

「それは、引き際ってことですか?」

「そうですね、後輩たちの成長を見て、そして今の自分を外から見て『この場にいちゃいけないな』と思うときが、引き際じゃないかなと、僕は思います」

聞きながら泣きそうに歪んでいく尚美の顔。

「自分では、まだまだやれると思ってたんです。ただ、遠くから自分を見たときに、ここにいちゃ、いけなくなったなと。そこで、自分で引退を決めましたね」

うなずきながら鼻をすする尚美。「あたし、ずっとこの仕事だけ一生懸命やってきました。そういう、誰にでも来るこのときっていうのは見えてたんですけどね。見ないふりしてました」

「自分が中心にいなくてもできることってあると思うんです。自分のために、会社のために、仲間のために。そういうふうに、自分で変わっていこうと。私は思いましたね」

「あたし変われますかね?」

「これまで一生懸命、夢中で、やることがあった人だったら、どんなことでも、夢中になることを探せるんじゃないですか。大丈夫だと思います」
笑顔でうなずきながら、尚美の顔をしっかり見て言う山本昌。

「昌さん強いな~」

「強くないですよ」

何だかぐっときて、涙が出てしまった。他に例がないくらい長い間プロとして活躍し、さらに自ら引き際を決めた、彼だからこそ響く言葉だった。

どうも、いつものこのシーンに比べてセリフっぽくないというか、ご本人そのものみたいな話し方だなと思った。

それもそのはず、実は今回のこのシーンは山本昌と板谷由夏のアドリブだったそう。どおりで、セリフにしてはゆっくり言葉を切りながら話しているなと思った。

吹っ切れて後輩の育成にまわると決めた尚美。最後の企画をちゃんと出して終わるところに、彼女の思いを感じた。

ラスト、舞と伊藤二人の会話もまた印象深い。

「精一杯やり切った人が、潔くやめて次のステージに進むの。それってかっこいいよね」

「たしかにかっこいいが、それは精一杯やり切った人間だから、かっこいいんだ」

そう言って去っていく伊藤。ボールをじっと見つめる舞。
話数は残り少ないが、舞の葛藤にも答えが出るのだろうか。


→「Paravi」で第7話を見る

第7話ストーリー



夏葉舞(関水渚)がバッティングセンターで準備をしていると外から女性の大きな声が。しかも電話で激しくやりあった後に1万円を全て両替してバッターボックスへ。その気迫は周囲の子供たちが驚くほどだ。舞はやがて女性が有名企業の社長・元山陽子(山下リオ)だと気づく。ネット記事によると陽子の会社が買収の危機にあるようで――。仲間のためにも譲渡すべきか否か…揺れ動く陽子に伊藤智弘(仲村トオル)がかけた言葉とは?

(文:ぐみ)

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