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2021-11-05

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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』考察|物語の鍵"三つ編み関係"とは




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感情を知らなかった少女がたくさんの愛に触れ、人として成長していく過程を描いたテレビアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。その少女・ヴァイオレットが成長し、数年経った舞台を描いた作品が「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」だ。

本作を語る上で欠かせないキーワードに、「三つ編み」が挙げられる。

※テレビアニメのネタバレ有。11月5日(金)放送の金曜ロードショーをはじめこれから視聴を予定している人は、ぜひ観賞後にご覧ください。

ヴァイオレットは、3束目の髪



「2つではほどけてしまいますよ」
「3つを交差して編むとほどけないのです」


本作を象徴するヴァイオレットのセリフだ。髪を整えているヴァイオレットを真似て2束に分けた自身の髪を結ぼうとする幼い少女に、彼女は優しくこう語りかける。

この言葉は、本作の主要人物である貴族の娘イザベラと孤児院で育った少女テイラーが置かれている状況と、そこに関わっていくことになるヴァイオレットの関係性を暗喩したものだろう。



イザベラはもともと、戦争のせいで貧しい生活を余儀なくされていた、エイミーという名の孤児だった。テイラーとはその頃に出会っている。エイミーは自分の手を握った幼い少女を幸せにすることで、自分を苦しめ続けている社会に復讐すると心に決める。そしてともに暮らす中で、エイミーにとってテイラーは生きる意味そのものとなっていく。

ところがエイミーは、貴族と血がつながっていると判明する。テイラーの生活も保証すると言われてしまえば、エイミーの取るべき決断は1つしかなかった。彼女はテイラーの未来を守るために、自分の幸せを犠牲にする。

全く望まない形で離れ離れになったふたりの姉妹。一緒に暮らしていた頃を大切に想いながらも、その想いが交わることは許されない。この状況は、ヴァイオレットが言う「2つではほどけてしまう」髪の束だと言える。



そんなふたりを交差し結ぶ3束目の髪として加わるのが、ヴァイオレットだ。彼女は2つの異なる時間軸で、互いを大切に想う姉妹の想いを手紙で紡ぐ。たとえどんなに離れていても、会えなくても、変わることのない絆があるという希望を未来にまでつないだ。

本作の主軸にあるのは、この3人(束)の関係だ。しかし本作においてこの「3つを交差して編むとほどけない」関係は、他にも存在していると思う。

「はじめての友達」も永遠に



©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会   TVアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」第1話より

エイミーとテイラーのほどけた関係に3束目の髪として加わるヴァイオレットだが、彼女も別の関係でほどけてしまっていた2束の髪のうちのひとりだったと思う。その関係は、イザベラとの「はじめての友達」。そのほどけてしまっていた関係を結びつけたのが、ヴァイオレットと同じ郵便社で働く郵便配達人ベネディクト・ブルーだ。

ヴァイオレットは、イザベラの淑女教育を担うため男子禁制の全寮制女学校に派遣される。イザベラは家柄でしか人を見ない人間ばかりのコミュニティに辟易していた。しかし自分のもとへやってきた家庭教師だという同世代の少女は、どうやら学友とは違う。自分を見てくれるヴァイオレットに対してイザベラは心を開いていき、ふたりは互いにとって人生初となる友達となった。しばらくは手紙のやりとりがあったことからも、その関係性の深さが伺えるだろう。



互いが「はじめての友達」という特別な存在であるはずのふたり。しかし手紙のやりとりが途絶えて以降ヴァイオレットは、イザベラの消息すらつかめていない。そんなふたりの絆を未来へとつなぐきっかけとなったのが、ベネディクトの「(テイラーの)手紙はヴァイオレットが手伝った」という一言だ。

イザベラはかつて、テイラーに何も与えてあげられなかったとヴァイオレットに漏らしていた。そんな彼女にヴァイオレットは、自分に「はじめての友達」をくれたことを挙げながら、テイラーにもたくさんのことを与えたと思うと声をかけている。

「妹の手紙をヴァイオレットが手伝った」という事実は、イザベラがテイラーを大切に想っていることは届いていると“思う”と想像、仮定でそう伝えるしかなかったヴァイオレットからの、時を越えた証明だ。と同時にイザベラにとっては、自分がふと漏らした言葉をずっと忘れずにいてくれた友人がいるという証でもあっただろう。その証拠にベネディクトが手紙の背景にあるヴァイオレットの存在を告げた瞬間、イザベラは普段の丁寧な言葉遣いを忘れ、ヴァイオレットと語り合った日々のような話し方に戻っている。

ベネディクトの仕事上、ヴァイオレットが手伝ったことを伝える必要はないはずだ。しかし彼の一言があったからこそ、「はじめての友達」という変わらない絆があることをイザベラは確かめられたと思う。

忘れていた気持ちを取り戻し、未来を描く



交差する3束の髪はなにも、すべてが人とは限らない。その1つにベネディクトと郵便配達人という「仕事」の関係性が挙げられる。そしてこの2束の髪をほどけなくする3本目の髪束が、テイラーだ。

建設中の大きな電波塔。街を照らす電気の街灯……。ベネディクトは驚くほどのスピードで進化を遂げる世の中において、何も変わらない郵便配達人という仕事に、というより自分に誇りを失いかけていたと思う。

そんなベネディクトのもとに、彼を見て郵便配達人を志したテイラーがやってくる。彼女は、彼が誇りを持てずにいた郵便配達人の仕事を、「幸せを運ぶ仕事」だと言った。



テイラーが郵便配達人の仕事をこう語るのは、かつて文字が読めなかった幼い自分に、エイミーからの手紙を手渡すだけでなく読んで聞かせてくれたベネディクトの存在があったから。かつてのベネディクトは、エイミーにテイラーの手紙を届けたときと同じように「郵便配達人の域を越えた」仕事をしていたのだ。このことから彼は、「人の想いを届ける」という仕事にやりがいを感じていたとわかる。

ただ人というのは、初心を忘れてしまいがちな生き物だ。ベネディクトも進化する世の中で、自分だけが取り残されたような感覚を味わっていたのだろう。そこに郵便配達人の仕事を「幸せを運ぶ仕事」と言い、目を輝かせる少女が現れたのだ。テイラーのこの一言は間違いなく、ベネディクトが「自分の原点」に帰り、郵便配達人としての誇りを取り戻すのに必要な3束目の髪だった。

さまざまな三つ編み関係から読み取れるメッセージ



誰もがきっと、自分が大切な人や社会にとって無力な存在だと感じたことがあると思う。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』で描かれたさまざまな三つ編みの関係は、そんな不安感に対して「そんなことはない」という希望を示してくれた。

「自分なんて」と思ってしまうことがあってもおかしくない、なにかと分断を感じることが多い世の中だ。そんな社会で生きる人々に「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」は、「自覚していないだけで、誰もが誰かに希望を与える存在なんだ」というメッセージを届けてくれているような気がしてならない。


(文:クリス)

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