〈新作紹介〉『SAYONARA AMERICA』細野晴臣がライヴを通して伝え得る、コロナ禍を乗り越える自由の意思
〈新作紹介〉『SAYONARA AMERICA』細野晴臣がライヴを通して伝え得る、コロナ禍を乗り越える自由の意思
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
細野晴臣といえば2019年にドキュメンタリー映画『NO SMOKING』が公開されたばかりだったので、立て続けに第2弾?と思いきや、これがコロナ禍の音楽界はもとよりエンタテインメントの世界や社会そのものの閉塞感と、そこからの自由な旅立ちを祈る作品に成り得ていることは驚きでもありました。
本作自体の主軸となるのは2019年のアメリカ、ニューヨーク&ロサンゼルスで開催された彼の音楽活動50周年を迎えてのソロ・ライヴ。
現地のファンの熱狂と圧倒的支持などにも改めて驚かされますが、コロナ禍を抜けるか抜けないかの瀬戸際に来ている今、このライヴを見ていますと幸福感と昂揚感もさながら、同時に「かつてこんな幸せな時代があったのか……」とでもいった複雑な想いにまで囚われてしまいます。
そう、このライヴからたった1年も経たないうちに、世界全体が大きく変わりはててしまいました。
それ以前の日々は、まるで夢だったのではないか?
ある時期は外に出ることもままならず、じっと家の中で過ごした日々も一度体験してしまうとそれが普通になっていき、マスクなしに他人と接することもはばかられるという、そんな今、これからのエンタメはどうなっていくかが2021年の細野晴臣とメンバーのトークも交えながら示唆されていきますが、正直なところ全員明快な解決策を見出しているようにも思えません。
ふと、ライヴのさなか“BODY SNATCHERS”の楽曲演奏に合わせて映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)の映像が挿入されますが、あたかもウイルスの脅威と映画のテーマがシンクロさせられてしまう瞬間もあったりします。
それこそ2年ぶりにギターを持った細野晴臣が語るモノローグの中に、こういうものがあります(予告にも出てきます)。
「このパンデミックはオペラのように感じる」
しかしながら世界的脅威と化したオペラを体感して久しい私たちに、本作のテーマ曲“Sayonara America,Sayonara Nippon”の曲と詩が、音楽でしか伝え得ないであろう未来への自由を取り戻すための意思を心に響き渡らせていきます。
音楽、そしてエンタテインメントを改めて渇望させてくれるライヴ映画の秀作です。
(文:増當竜也)
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(C)2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS ARTWORK TOWA TEI & TOMOO GOKITA