2021年11月18日

〈新作紹介〉『COME&GO カム・アンド・ゴー』必見!大阪キタに集うアジア9か国の人々の混沌から未来を示唆する群像ヒューマン劇

〈新作紹介〉『COME&GO カム・アンド・ゴー』必見!大阪キタに集うアジア9か国の人々の混沌から未来を示唆する群像ヒューマン劇



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

北京、香港を経て、現在は大阪を拠点に活動を続ける中華系マレーシア人の映画作家リム・カーワイ監督が、大阪の中心ともいえるキタにやってくる、もしくは住んでいるアジアンたちの日常を描いていく、多国籍&多言語の群像ヒューマン映画。

明日には平成に代わる新元号が発表されようとしている1日という、何やら象徴的な設定の中、韓国やマレーシア、中国、ヴェトナム、ミャンマー、ネパールなど9か国のアジア系のさまざまな立場の人々が、キタの地にて交錯していく姿が綴られていきます。



リー・カーション(台湾)をはじめ、リエン・ビン・ファット(ヴェトナム)、ナン・トレイシー(ミャンマー)、J・C・チー(マレーシア)、モウサン・グルン(ネパール)など、当然ながらにキャストも国際的。

日本からは千原せいじや渡辺真起子、桂雀々、兎丸愛美、尚玄などが出演。



タイトルの“COME & GO”には「行ったり来たり」「ちょっと立ち寄る」「定まらない」などの意味があります。

もともとリム監督は大阪の新世界、ミナミ、そしてキタを舞台に日本とアジアの関係性を露にしていく「大阪三部作」を構想しており、それは『新世界の夜明け』(10)と『恋するミナミ』(13)、そして本作によって達成されたわけですが、『新世界の夜明け』からおよそ10年の間に大阪が「アジア人種のるつぼ」とでもいうべき混沌とした様相を呈していることに改めて気づかされたとのこと。

しかし一方で、日本人は一体どこまでそのことを意識しているのか?

さまざまな言語が飛び交いつつ、どこかしら飄々とした日常のオフビート感覚の描出の中から、日本にやってきた外国人の夢と希望、挫折と絶望、搾取や裏切りといったさまざまな現実は、そのまま日本人にも突きつけられていることにも気づかされていくのでした。



さらには劇中「ハーフへの差別はどうなんですか?」とケンジ(望月オーソン)が何気につぶやいて周囲がきょとんとなるあたり、つい先日東京でも公開されたばかりの『WHOLE/ホール』まで思い起こされます(これも大阪を舞台にした映画でした)。

AV監督役の尚玄が、ふと沖縄民謡をつま弾き歌う、さりげないショットにもハッとさせられました。

しかし、それでも本作は劇中に登場する人々を冷たく突き放すことはなく、軽妙なタッチを以って、厳しくも優しいエールを贈っていることにも気づかされます。



第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020国際交流基金アジアセンター共催上映」作品。

まさに本作こそ「国際」映画として、これからの「未来」を示唆する上で、令和を生きる全ての人々に一度は見ていただきたい必見作です。

(文:増當竜也)

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