『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』:文句なし痛快すぎる97分間
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』:文句なし痛快すぎる97分間
スパイダーマン・ユニバースのこれまでとこれから
(C)Marvel Studios 2017. (C)2017 CTMG. All Rights Reserved.
MCU=マーベル・シネマティック・ユニバースがすっかり定着しましたが、DCコミックスに比べるとマーベルコミック原作の映画というと実にフワフワし続けてきました。
これはDCコミックスが早々にワーナー・ブラザースグループの傘下に入ったことで、権利関係も自由自在だった件もあって、マーベルには経営難が常に付きまとい、コミックスの映像化権利などを切り売りした結果したことが原因です。
1998年の『ブレイド』、2000年の『X-MEN』あたりでやっと王手の映画会社がメジャーな俳優を使って映画にするようになりましたが、それまでははっきり言って“なかったことにしたい黒歴史”、“封印作品のオンパレード”状態でした。
『ヴェノム』難産の歴史
2000年代にブランドイメージの向上が軌道に乗り始めたマーベルですが、“最初の大成功例”となったのがサム・ライミ監督による『スパイダーマン』3部作でしょう。
1作目、2作目共にビジネス面でも批評面も非常に高い評価を受けたこのシリーズ。そして、待望の3作目の撮影に入る時に、映画会社側からサム・ライミ監督に「ヴェノムを出せ!!」というオーダーが入りました。
“ヴェノム”は今でこそ、単独主演映画シリーズを持つほど大きな顔をしていますが、実は長い長いスパイダーマンの歴史で見ると比較的“新参者”のヴィランなんですよね。
数万冊のコミックブックのコレクションを持っていると言われるサム・ライミですが、“クラシカルなスパイダーマン”にしか興味のなかったこともあって、この“新参者”の介入に露骨に嫌な顔をしました。
『スパイダーマン3』にヴェノムが出たことは出たのですが…、ほとんどの人が「出てたっけ?」と思う程度の印象しか残っていません。
断っておきますが、“ヴェノムの原作人気”はかなりのモノがあって、1988年に原作でデビューを飾ると5年後にはただのヴィランから、ダークヒーロー、アンチヒーロー的な立ち位置を核として、早々に主役のミニコミックシリーズが展開されました。
ちなみに、当時のタイトルは『リーサル・プロテクター』。『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の中で、エディ・ブロックとヴェノムが「自分たちはリーサル・プロテクター(=残虐な庇護者)だ!!」と名乗るシーンがありますが、これはコミックファン向けのオマージュですね。
しかし、思い入れのないサム・ライミと出会ってしまったがゆえに、ヴェノムは非常にぞんざいな扱いを受けてしまいました。こんなことがあっては『スパイダーマン3』の出来がそれまでの2作品と比べて見劣りがしてしまうのも仕方のないこと…。
パート4の予定もなくなり、仕切り直しになって『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを再スタートすることになりました。
スパイダーマン自体が大混乱!?“3作目”はいつも鬼門
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この頃にはMCUがすっかり定着。MCUでもX-MENでもないマーベルの『アメイジング・スパイダーマン』は実に中途半端な立ち位置になり、そして実に中途半端な形でシリーズ終了。
『アメイジング…』の3作目からは“シニスター6”というマーベル版スーサイド・スクワッドのようなヴィランチームを動かす予定で、ここには仕切り直しのヴェノムの参加も構想にあったようですが、“3作目自体”がなくなってしまったので全ておじゃんとなりました。
サム・ライミ版は内側の軋轢がもろに出てとっ散らかったようになり、『アメイジング…』では予定はあったものの、俳優をトム・ホランドに変えてMCUに合流する方向に方針転換して製作中止。
つくづく”映画のスパイダーマンの3作目”は恵まれていない感じがあります。
『アベンジャーズ』をカウントしないで見ると全米年末、日本年始公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が3作目に当たるのですが、不吉なジンクスに終止符が打たれることを祈るばかりです。
と言いながらもサム・ライミ版と『アメイジング…』の新旧ヴィランが大挙して登場するマルチバース方式を採用した作品になっているようで、“とっ散らかってしまわないか?”という一抹の不安があります。
スパイダーマン・ユニバースにダークヒーローが続々登場
スパイダーマンとそれに関連するヴィランキャラクターの権利を継続して持ち続けているソニー・ピクチャーズは“SSU=ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース”構想をぶち挙げていて、『ヴェノム』シリーズを中心にスパイダーマンのヴィランを主役にした映画シリーズを続ける予定でいます。
すこし前まではソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクターという名称を使っていましたが、長すぎて分かりにくいというどうしようもない理由で定着せず、しれっとソニーズ・スパイダーマン・ユニバースに切り替えました。
このユニバース、すでにジャレッド・レト主演の『モ―ビウス』はもう完成済みで、コロナ禍の延期の嵐に飲み込まれてしまっていますが、もう公開するだけの状態です。また『クレイヴン:ザ・ハンター』までは2023年に公開予定というところまでアナウンスがあります。
ユニバースの難点はヴィランしか主役にできないということでしょう。どんどんダークな作品が続くことになりまして、ちょっとファンとして付き合って行くのがしんどくなるかもしれないですね。
”業務提携”状態のMCUとの兼ね合いを考えると、やはり”スパイダーマン”を何とかして登場させたいというのが本音でしょうね…。
“スパイダーマン・ユニバース”と言っておいて、スパイダーマンがいつまでも登場しないのはやはり不自然ですよね。
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