2021年12月02日

「RISKY」「ただリコ」狂演が話題の萩原みのり「徹底したのは、少しも“許さない”こと」『成れの果て』インタビュー

「RISKY」「ただリコ」狂演が話題の萩原みのり「徹底したのは、少しも“許さない”こと」『成れの果て』インタビュー


劇作家・映像作家のマキタカズオミが主宰するelePHANTMoonが上演し話題となった戯曲「成れの果て」が12年の時を経て映画化、2021年12月3日(金)より全国で公開される。主演を務めるのは、ドラマ「RISKY」、「ただ離婚してないだけ」での怪演が印象的な萩原みのりだ。

東京でファッションデザイナーの卵として暮らしていた小夜(萩原みのり)のもとに、姉のあすみ(柊瑠美)から結婚報告の電話が入る。相手は、8年前に事件を起こしていた男だった。いてもたってもいられず、親友のエイゴ(後藤剛範)をつれて地元に戻る小夜。それをきっかけに、様々な歪みがあぶり出されていく。


——もともと舞台作品だった「成れの果て」、ご存じでしたか?

知らなかったです。初めて台本を読んだときは、全然理解が追い付かないというのが正直な感想でした。特に、小夜が取っていく選択が全然分からなかったので、この思いのまま小夜を引き受けてしまっていいのか悩みました。

——「小夜を守りたい」という気持ちが出演の決め手だとコメントを出されていましたが、“守りたい”とはどういうことなのでしょう?

小夜が取る選択って、めちゃくちゃ苦しくないとできないと思うんです。その苦しさってどれくらいだろうと考えて、理解するのは難しいけど、小夜の横にいたいなと思いました。私も絶対に許さないという思いを持って、小夜の見た景色を一緒に見たい。そう思えたので、この役に挑むことにしました。


——そんな思いで出演を決められたんですね。実際に撮影に入る前には、どういった役作りをされたんですか?

分からないという状態だと撮影に臨めないので、小夜の苦しさとの隙間は埋めて挑んだつもりです。とにかく徹底しなきゃいけないと思ったのは、少しも“許さない”こと。小夜が少しでも許しているような隙が見えてしまったら、お客さんがついてきてくれないんじゃないかなと思いました。絶対に許さないと徹底しているからこそたどり着く結末だと思うので、そこは丁寧に向き合っていかないと、作品が成立しないんじゃないかという緊張感が常にありました。

——本当に衝撃の結末ですよね。それ以外も張り詰めたシーンばかりですが、撮影中はやっぱりしんどかったですか?

私自身というよりは、演じている時間、小夜から見る景色は想像を絶する苦しさでした。それこそ最後のシーンを撮った後は、憑き物が取れたような感じでしたね(笑)。

——演じる上で意識されたことはありますか?

この作品を見てくれたお客さんに、この子(小夜)分からないなって思わないでもらうにはどうしたらいいのかなということは、クランクインする前から1番に考えていました。これ以上小夜が苦しまないでほしいから、この作品を見て小夜を嫌いになる人がいないといいな、と。だから、お客さんが小夜を普通の女の子として見られる数少ないシーンはすごく大事にしようと思っていました。

——小夜が地元に連れて帰った親友のエイゴと、縁側で話しているシーンは拝見していてすごくほっこりしました。

小夜が普通の、ただの女の子である瞬間ってあそこしかないので、あのシーンは私もすごく好きですね。一生撮っていたかったです(笑)。後藤(剛範)さんとのシーンはめちゃくちゃ楽しくて、セリフをしゃべっているんですけど、ずっとしゃべっていたいなと思いながら撮影していました。


小夜の過去も、それまで経験してきたことも知ってくれているエイゴは安心できる場所なので、エイゴがいてくれてよかった。エイゴはきっとこの作品が終わっても小夜のそばにいてくれると思うんです。無敵というか、絶対的な安心感を持って接することができる人や場所がある心強さってすごく大事ですよね。

——小夜をはじめ、『成れの果て』の登場人物たちはみんなちょっとずつ歪んでいる人ばかりですが、共感できる人はいましたか?

みんなちょっとずつ分かります。何もかもがきれいな人なんていないじゃないですか。というか、いないでくれと思ってるんですけど(笑)。自分の近しい人たちのきれいじゃない部分って分かるけど、近しくない人って分からない。それって、分からない、知らないだけで、みんな持っていると思うんです。だから、この作品もすごく離れたところにあるわけではなく、みんなの中でどこかちょっと分かるな、知ってるなと思ってもらえたらいいですね。


——萩原さんも、お友だちのきれいじゃないところを積極的に見たいタイプですか?

そうですね。そっちのほうがいいです。整っているよりも、かっこわるい瞬間のほうが好き。最近、エッセイを読むのが好きなんですが、すごくきれいな生活をしている人の本よりも、かっこつけてない、誰にも媚びていないエッセイを読みます。自分がかっこいい人生を生きていないから、そういうほうが安心するんですよね。

——ちなみに、最近面白かったエッセイは?

こだまさんの「ここは終わりの地」(講談社刊)がめちゃくちゃ面白くて、久しぶりにエッセイで大泣きしました。大泣きしながら、笑いながら(笑)。心の本当に奥で思っても、友だち同士でも言わないような口の悪いことが書いてあって、こんなにさらけ出してこんなに面白くて、こんなに泣ける本があるんだ、と。今、宝物のような本です。


——「RISKY」や「ただ離婚してないだけ」、そして「成れの果て」と大変な役が続いて、“狂演”と言われることもありますね。

こういう役が得意というわけではないけど、タイミングが重なったからそう言ってもらえるようになりました。だから、そう見えるんだ~と不思議な感じです(笑)。

——最後に、これからやってきたいことがあれば教えてください。

きちんとした生活をするということはどんどんやっていきたい。ずっと好きなものや趣味もなかったし、頭では思っても実際に自分から何かをする行動力も全くないんですけど、最近急に器にハマったんです。1番好きなのは益子焼。ネットで調べて、実際にお店に行ったりしています。自分の生活を充実させると変化があるんですよね。


今日も久しぶりに会った人たちに「柔らかくなったね」って言ってもらえました。だから、やりたことは自分の人生を充実させること。それがきっと、役にも影響してくるだろうなと思っています。

(スタイリスト:清水奈緒美、ヘアメイク:石川奈緒記、撮影:八木英里奈、取材・文:あまのさき)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!