映画コラム

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2021年12月15日

『ジャネット』解説:ヘドバンする若きジャンヌ・ダルクから見えるもの

『ジャネット』解説:ヘドバンする若きジャンヌ・ダルクから見えるもの


神の「声」を捉えたショットとは?



ジャンヌ・ダルクの物語において重要なのは神の「声」の表象である。今まで、数々のジャンヌ・ダルク映画が制作されてきた。『月世界旅行』(1902)で知られるジョルジュ・メリエスは、明確に神を映画に登場させている。一方で、ヴィクター・フレミングやジャック・リヴェットは神を映画で描いていない。リュック・ベッソンは、VFXを使った幻覚描写で神の「声」を表現している。ではブリュノ・デュモン監督はどうか?

彼は、お気に入りのジャンヌ・ダルク映画であるジョルジュ・メリエス版『ジャンヌ・ダルク』(1900)へのオマージュとして、中盤に聖ミカエル、聖カタリナ、聖マルガリタと対面する場面を用意する。ジョルジュ・メリエスがイコンのように聖人を描いたように、彼も色彩豊かな服を纏った聖人が登場させるのだ。その一方で、神の「声」を特徴づける個性的なショットを観る者へ提示する。

例えば、ジャンヌが神の「声」を頼りに丘をのぼる場面がある。彼女は天を見る。彼女の目線の先は、フレームの外側にあたり彼女の目線の先にあるものは見えない。彼女が不安を吐露し、祈る。すると、羊がメェと鳴く。この偶然に神の「声」が宿るのだ。また彼女が祈る時は、天に眼差しが置かれている。天は眩しい程に美しく陽光を大地に注いでいる。その天を見た彼女は、丘の下にいる飢えた子どもたちに歩み寄りパンを与える。神の「声」を継承した印象的なシーンと言える。

天を向くジャンヌと美しい天の関係性から、彼女を動かしていき、そこへ気まぐれに反応する羊の声のスパイスを織り交ぜることによって、神の存在を形成していくのだ。

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