2022年01月13日

片山友希×坂東龍汰:映画『フタリノセカイ』で感じた「自分が知らない世界」を演じる難しさ

片山友希×坂東龍汰:映画『フタリノセカイ』で感じた「自分が知らない世界」を演じる難しさ


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出会った瞬間から互いに惹かれ、運命を感じたユイと真也。ごく普通の男女が恋に落ち、結婚をし、家族を築き上げる物語かと思っていたが…。実は、真也はトランスジェンダーだった――。

“フタリ”にしかわからない心の葛藤を丁寧に紡いだのは、飯塚花笑(いいづか・かしょう)監督。監督自身もトランスジェンダーを公表しており、手掛ける作品は国内外で高い評価を得ている。

今回cinemas PLUSでは、1月14日(金)に公開される『フタリノセカイ』でダブル主演を務めた片山友希と坂東龍汰にインタビュー。かなりの難役にそれぞれがどのようにして向き合ったのかを伺った。

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自分が知らない世界だからこそ、きちんと向き合おうと思った


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――トランスジェンダーとして葛藤する真也を演じた坂東さんと、その彼を支えるユイ役の片山さん。それぞれ非常に難しい役だったかと思いますが、ダブル主演が決まったときの率直な感想を聞かせください。

坂東龍汰(以下、坂東):舞台で共演したことのある片山友希さんとダブル主演の話が決まったと聞いたときは、「やったー!」と純粋に嬉しかったです。そのあとで作品の内容や、役柄について詳しく聞いたのですが、そこからは一気に不安になりましたね。ただ、難しい役だからこそ気合は入りました。 

片山友希(以下、片山):これまで性について詳しく知る機会がなかったので、まずは勉強しなければいけないなと思いました。また、監督自身が女性として生まれたものの、性自認は男性の「FtM」だとは聞いていましたが実際、監督にお会いしてみると私には男性にしか見えなかったので男性ホルモンを注射すると本当にひげが生えるんだ、見た目がこんなにも男性らしくなるんだという驚きがありました。自分が知らない世界がそこにはあったので、これはきちんと向き合わなければいけないな、という姿勢になりました。


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――撮影に入る前に準備したことはありますか?

坂東:作品に触れるまでは「トランスジェンダー」という言葉を聞いたことがなかったので、監督にトランスジェンダーの方が集まるバーに連れていってもらったり、監督自身の体験談を聞かせてもらったりして役に向き合う準備をしました。また、撮影に入るまでエピテーゼで胸を作ったのですが、胸があるとこんな感じなのか、服を着ると意外と目立つな、など貴重な体験もしました。

片山:顔合わせの時、監督から自身の学生の時に受けた診断書のコピーを見せていただいたので、色々ネットで調べるよりもその診断書に何度も目を通すことで、ユイという役に近づけることができるんじゃないかと思いました。

目の前に当事者(監督)がいるというプレッシャー


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――とくに難しかったシーンはどこでしょうか?

 坂東:そうですね、真也がユイに自分の性についてカミングアウトをするシーンが一番難しかったです。事前に打ち合わせを重ねていたので監督が求めるお芝居の空気感を理解していたつもりでしたが、撮影に入ると真也の気持ちだったり、ユイに対する感情だったりが複雑に交差してしまい、かなり時間がかかってしまいました。そして、実際に真也の人生に似た体験をされている監督が目の前にいることで「中途半端に演じられない」というプレッシャーもありました。ただ、撮影の前半で難所を終えたので、そこからはリラックスして演じることができました。

片山:私は真也のお母さんに怒るシーンが難しかったです。ユイのセリフが人として失礼ではないかと思えるほどキツく感じたので、セリフが自分の中になかなか入りませんでした。私なら彼のお母さんにこんな風に当たらないということを監督に正直に話し、相談をさせてもらいました。


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――監督からはどんなアドバイスがあったのですか?

片山:監督からは、ユイの立場や真也のお母さんの感情についてじっくり丁寧に説明してもらえたのでそこで自分の中にストンと落とすことができました。感情を整理すると、さっきまであんなに言いにくかったセリフもこんなにもすっと言えるようになるんだ、という驚きもありました。
 

それぞれが「幸せ」について考えることができる作品


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――作中、「幸せなら手を叩こう」が流れていたり、松永拓野さん演じる俊平が「幸せってなんだろね」って聞くシーンがあったりと、「幸せ」について考えさせられました。片山さん、坂東さんが考える「幸せ」とはどんなことだと思いますか?

 片山:幸せの形は人それぞれだと思うのですが、私の考える幸せとは自分で作っていくものだと思っています。選択肢は常に自分が持っていて、自分が選んだ選択には責任を持つということで「幸せ」に近づけるのではないかなと思っています。

坂東:僕は人を許すという感情が「幸せ」に近づけると思っています。もともと僕はどんなこともポジティブに考えるタイプなので出会った人のことを(人として)好きになりますが、上京してこの仕事をはじめてから現場でいろんな人に出会って不得意な人も出てきました。でも、24年間かけ続けてきたフィルターを外して相手と向き合うと、悪いところ以上に良いところも見えてくるようになりました。自分の基準を少し変えれば、世の中は素晴らしいと思えることも多くなりました。


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――最後になりますが、これから作品をご覧になる方にメッセージをお願い致します。

坂東:僕自身も知らないことだらけではじまった撮影でしたが、自分なりに理解をして真也を演じました。100人いたら100通りの受け取り方がある作品かもしれませんが、一人でも多くの方にLGBTQという存在を知ってもらい、理解してもらえ、あらゆる人が生きやすい世の中になればいいなと思っています。

片山:新型コロナウイルスの流行により、国民全体が政治に強い関心を持っている中、同性婚や夫婦別姓、性的マイノリティの問題にも注目が高まっています。このタイミングで『フタリノセカイ』が上映されることは非常に意味があると思います。私もこの作品に出会ってから、LGBTQの問題に強く関心を寄せるようになりました。これまでLGBTQについて考えたことがなかった人たちにも興味を持っていただき、作品を観てもらえたら嬉しいです。

(ヘアメイク=浅井美智恵/スタイリスト=髙山エリ<片山友希>/撮影=野本佳子/取材・文=駒子)

<片山友希衣裳クレジット:オールインワン(セラー ドアー/アントリム 問い合わせ先=アントリム03−5466−1662)、その他スタイリスト私物>

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