俳優・映画人コラム
<桜井ユキの魅力>表現の開拓者を名作と共に語る
<桜井ユキの魅力>表現の開拓者を名作と共に語る
昏い愛の形を全身で表現『真っ赤な星』で演じる救われない女
桜井ユキにとって二度目の主演作となる映画『真っ赤な星』(2018)は、人間同士の”愛の形”について極限にまで迫った作品だ。14歳の少女・陽(小松未来)と27歳の元看護師・弥生(桜井ユキ)の交流を描いたラブストーリー。最初こそ、怪我をして入院した陽に優しく世話をしてくれた弥生だが、訳あって看護師を退職した後は、つっけんどんな態度を貫くようになる。
自宅には居場所がない陽、売春で生計を立て始める弥生。歪で不安定なふたりが、土台をグラつかせたまま始める共同生活は、最初から終わりが見えている悲しさに満ちていた。
特筆したいのは、弥生の自宅である狭いアパート、暗いキッチンでお互いの欠落を埋め合うように、身体を求め合う陽と弥生のシーン。どこか艶やかで、しかし限りなく寂しい。二人にとってのハッピーエンドを想像しながら、やるせない気持ちでラストシーンを迎えることになる。
従来、役者・桜井ユキには、どこか影のある役柄のイメージが強かった。そのイメージは、先述した『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』や、本作『真っ赤な星』に由来するものだろう。
余談だが、2018年に公開された松坂桃李主演映画『娼年』にも、桜井ユキは主人公の同級生役で出演している。娼婦ならぬ娼年として仕事を始めた同級生に対し、憤りを隠せない純な女性の役だ。
先に紹介した二作と合わせて見ることで、また彼女の引き出しの深みを知れるかもしれない。
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