【Netflix】埋もれた名作5選『ムーンナイト』監督過去作etc
3:『コップ・ムービー』
今後アメリカで大作を撮る監督は誰かと考えた際に、メキシコのアロンソ・ルイスパラシオスを挙げたい。彼は長編映画3本全てでベルリン国際映画祭を受賞している注目の監督だ。彼が第71回ベルリン国際映画祭(21)で芸術貢献賞を獲った『コップ・ムービー』もNetflixで観ることができる。本作はメキシコ版警察24時ともいえる作品だ。
無線に連絡が入り、女性警官であるテレサが現場に向かう。そこには男が立っており、止まりなさいと言っても聞かず、ジワジワと近づく。銃が飛び出すのかと思うと携帯電話である。どうも女性のお産が始まったのだが救急車が来ていないらしい。彼女は出産の手伝いをすることとなる。タイトルから想像する警察物語とは異なった始まりをする本作。
実は、ドキュメンタリーなのである。この映画では、役者に警察の日常を演じさせているのだ。なので警察物語のプロットをなぞりながらも突如現れる、現実的シチュエーションに生々しさを感じる。
本作が面白いのは、役者が演技の勉強のために警察学校に入るドキュメンタリーパートがある点だ。ここでは、リボルバー銃を撃とうとするが、緊張のあまり中途半端にトリガーを引いて発砲されない様子がカメラに収められている。警察物語は悪に迫る時にスリルを感じるが、本作では銃のトリガーを引く場面にこそスリルがある。
これは現実でも、銃を初めて撃つ時に緊張する真実を捉えている。警察物語あるあるを描きながらも真のコップ・ムービーを目指していく意欲作となっている。
アロンソ・ルイスパラシオは一貫してジャンルを横断する作品を作っており、前作『Museo』ではモラトリアム青春ものから、ジャン=ピエール・メルヴィル『仁義』を彷彿とさせる静かな犯罪もの、そしてロード・ムービーへ次々と作風を変えていった。今後、マルチバース展開していくマーベル映画の監督に抜擢されるのではと期待している。
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