特撮向上委員会
『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』はネタバレ厳禁!その魅力とは?
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『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』はネタバレ厳禁!その魅力とは?
■オジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会
終盤、世界が本当に終わってしまうかもしれないと思うところまで丁寧に物語を紡ぎあげ、剣士たちがそれを救う壮大なストーリーに心奪われた『仮面ライダーセイバー』。
そのラストから8年後の世界を描いた続編『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏(トリオ)』が、先日28日にようやく公開されました。
今からネタバレ無しで感想を書いていきますが、何の前情報なく見るのが絶対に一番いいと思うので、まだ見てない方は見た後に覗きに来てください。
どうして何の前情報も入れない方がいいかというと、前半部分はミステリー要素が強めで、何がどうなっているのかよくわからないまま進んでいきます。
8年後というのは冒頭で早々に出てくるのでそれはわかってるんですが、8年経ったらこんな感じになるのか、なるか?なるか。
え?これ誰?あっそうなん。ちょっと待って。じゃあこれ誰?ひょっとしてこういうこと?まじかよ。辛いじゃん。
もれなく、こんな感じになると思います。
自分の記憶も疑ったりしました。
あれ?俺「セイバー」全部見たやんな?これどういうこと?俺が忘れてるのか?この作品がご都合主義で入れ込んでるのか?
当然「この部分」はこの作品の背骨の部分なので、都合よく入れてるわけでは一切ないのですが、こんな感じでいろんな可能性を探ってしまうほど、心地よいミニパニックを起こしてしまうのです。
こうやって考えながら見てるうちにすっかり物語に引き込まれ思いっきり没入。
あと映画が始まってしばらくすると、こんなことも思います。
ん?これ「セイバー」?これ仮面ライダー?いや、確かにキャストは「セイバー」のキャストではあるねんけど。静かやし。でも、おもろいからいっか。
特撮作品の枠に囚われず、そしてお客さんに寄せたり媚びたりすることなく、自分が見たいものを撮る、上堀内佳寿也監督のらしさを今作からも感じることができ、その手腕が遺憾無く発揮されていました。
上堀内監督といえば斬新な映像や撮影方法が話題に上がることが多いですが、その根幹には各キャラクターの感情を大事にされているのが伝わってきます。
「セイバー」の上堀内監督回を振り返ってみると25章では倫太郎の組織への葛藤、26章ではプリミティブドラゴンの少年に対しての飛羽真や、世界が滅ぶ未来を何度も見て変えることはできないと悟った賢人、そしてやはり、なんと言っても記憶に強烈に焼き付けられたのは43章の蓮とデザストの一騎打ち。
無音にしたり色味を消してみたりする演出はメインディッシュに見えて、実はキャラクターの感情を際立たせるスパイスとして活用されています。
今回もそれが全編に張りめぐらされています。
アクションも感情が動いたからこそのアクションで、戦いをエンタメ的に派手に見せるというよりかは、アクションすることで会話している、そんなふうに感じました。
デザスト戦の時にいきなり初出しの川津明日香さん歌う「Will save us」がかかって、でもそれがすごくよくて、監督は音楽にもしっかり熱量込めてるんだなと当時思ったりしたんですが、「深罪の三重奏」でも音楽の力、すごかったです。
ラストでかかるメインキャストの内藤さん、山口さん、青木さん、そして川津さんが歌う主題歌「Bittersweet」。
この曲が流れたら、できるだけ瞬きせずに存分に映像を楽しんでください。
僕からはこれしか言えません。
「セイバー」の醍醐味のひとつに、剣士たちが力を合わせて悪に立ち向かうということがあると思うんですが、今作はそういった派手さはありません。むしろ個を大事に扱っていて、ひとつの作品の中でトリロジーを成立させているとんでもない映画です。
世界を救う壮大な物語の「セイバー」が実は取りこぼしていた部分、いや「セイバー」だけでなく多くの特撮作品があまり扱わなかった部分について、今作は正面から真っ向勝負しています。
そして「記憶」がとても重要な役割を果たしています。
『スーパーヒーロー戦記』でもそうだったんですが、書き換えや改竄するということと「セイバー」のキーアイテムである本の親和性はとても高く、「セイバー」が本の物語である以上、この部分において他のライダー作品が「セイバー」を越えることは難しいかもしれません。
特撮作品ではなく、1本の普通の映画として、それこそ「セイバー」どころか「仮面ライダー」をまったく見たことがない人にもきっと刺さる本作。
ぜひ映画館で。
(文:篠宮暁)
【オジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会】
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