2022年02月12日

<独占インタビュー>「不自由のない作品を届けたい」細田佳央太が映像のバリアフリー化に思うこと

<独占インタビュー>「不自由のない作品を届けたい」細田佳央太が映像のバリアフリー化に思うこと


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現在放送中のドラマ「もしも、イケメンだけの高校があったら」(テレビ朝日系)で連続ドラマ初主演を果たした細田佳央太。これまで様々な難役に挑んできた細田だが、特に「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」(2021)で演じた全盲の高校生・青野は、実際に視覚障がいのある方や、その周りの方々からも大きな反響があったという。

今回は、映画・映像作品の字幕や音声ガイドの制作などバリアフリー化に従事しているPalabra株式会社(https://palabra-i.co.jp/)の山上庄子氏を交えて、障がいのある方々を取り巻くエンターテインメント作品の現状について話を伺った。

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――細田さんはこれまで、作品自体がシリアスではなくても、繊細なお芝居を求められる役が多かったように感じます。何か印象的だった反響はありますか?

細田佳央太(以下、細田):SNSなどで、例えば「恋です!」の青野くんのような方と関わるお仕事に就いている方や、「ドラゴン桜」の健太くんのようなお子さんを持つ親御さんから、「元気をもらいました」「勇気をもらいました」というお声をいただいたのは嬉しかったですね。青野くんを演じるときには盲学校で勉強をさせていただいたんですが、健太くんに関しては同じものを持っている方とは直接お会いできていないので不安がありました。だからこそ、当事者の方を知っている方々から認めてもらえられたように感じましたね。届いてよかった、と。

――山上さんは普段から当事者の近くにいらっしゃる方かと思いますが、実際に「恋です!」ではどういった声を耳にされましたか?

山上庄子(以下、山上):「恋です!」は、これまでの障がいがある方を主人公にした“障がい者作品”とは一線を画していて、いち若者がどういうふうに生活しているのかが描かれており、「ものすごくリアルだった」という声を多く耳にしました。視覚障がいの当事者たちにとっては自分の日常なわけで、当たり前ですが同情されるために生活をしているわけではありません。「これがちょっとあれば人の助けを借りなくても動けるのに」「社会としてここがちょっと変わってくれればいいのに」という気づきが、自然に含まれている作品でした。セリフひとつとっても、当事者性のある言葉ばかりで、皆さんすごく注目されていました。

細田:ありがたいです。ただ事実を描くだけではなく、それを明るく伝えるという作品はたしかに少なかったかもしれませんね。
杉咲(花)さんが演じたユキコ、田辺(桃子)さんが演じた空ちゃん、僕が演じた青野くんでさえ、見え方が全然違う。あのドラマを見るまでは、全員が全盲だと思っていたり、弱視にも違いがあることを知らなかったり、といった方もいらっしゃると思うんです。視覚障がいの中にそれぞれに違いがあるということを、あの作品に関わった全員の力で届けられていたらうれしいです。


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――実際に青野くんを演じる上で、どういったことを意識しましたか?

細田:僕が盲学校で教わった先生は3,40代くらいで後天的に全盲になられたそうです。でも、お話をしているとすごく目が合うんですよ。ただ、僕が席を立ったことには気付かない。これをどう表現したらいいんだろう、というのは考えました。目線を外しているだけが表現ではないので。瞬きや瞳の動かし方を意識しましたね。

山上:おっしゃる通り、本当に多様ですもんね。ドラマを拝見していても、そういった部分が細かく設定されていることが伝わってきました。細田さんが習った先生がそうだったように、視覚障がいのある方は、後天的に見えなくなった方が圧倒的に多いんです。見えていた経験がある分、それまで楽しめていた映画やドラマを見られなくなってしまうのは辛いですよね。ただ、そこで失ったと思って諦めてほしくない。聴覚障がいの方には字幕、視覚障がいの方には音声ガイドで、変わらずに楽しんでいただきたいと思っています。


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――音声ガイドなどはどの程度普及しているのでしょうか?

山上:現在、年間で約1200本の映画が公開していると言われています。その中で、字幕や音声ガイドが対応しているのは邦画を中心に100本程度。当事者の方たちは、100本の中からしか選べないのが現状です。実は細田さんが出演されている作品は、これらに対応している作品が多いんですよね。今後、障がいのある方々にも自身の作品を届けたい、という思いはありますか?

細田:まず、1200本のうちの100本ほどしか対応できていないということに驚きました。そんなに少ないんですね。僕も「恋です!」を通して、ボイスコミックというものがあることを初めて知りましたし、映画を観に行けば、チケットを買うときにバリアフリー上映などを見かけることがあります。だからこそ、漫画も映像も、楽しむ手段がないわけではないんだと思っていたんですが、数にそこまで差があるとは……。芸術分野に関わっている1人として、やっぱり人に勇気や元気、感動を与えられるようなパワーのあるものが、平等に届いていないことがショックですね。不自由のある方にも不自由のない作品を届けたいです。僕らにも何かできることはあるんですかね?

山上:日本国内では洋画の音声ガイドは全然進んでいないのですが、海外では俳優さんが音声ガイドをやるといった活動もはじまってきています。SDGsなどの社会的な背景もあり、ほぼボランティアのような形で参加されているケースもあるようです。なので、日本でも役者さんや関係者の方々が実情を知ってくださることで、次の展開や、新しいエンターテインメントの発信の可能性が出てくるんじゃないかなと思います。


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――細田さんご自身、今後そういったバリアフリーの活動に向き合っていきたいですか?

細田:音声ガイドは、やらせていただけるのならぜひやりたいですね。だって、本来当たり前にならなきゃいけないものが、当たり前になっていないわけですから。自分が生きている間に音声ガイドがついている作品が少しでも増えたらいいなと思います。
今は僕の力が小さいものなので、自分で企画して何かをやるというのは現実的には厳しいかもしれません。でも、僕が青野くんを演じて知ったことがあるように、まずは知ってもらうことが大事だと思うので……。そういった役をいただいたときは積極的に向き合っていきたいです。それが今の僕にできることかなと思っています。


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(撮影=田上富實子/取材・文=あまのさき)

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