千葉真一・田中邦衛・福本清三へ贈る「仁義なき」追悼文
戦い済んで……
(C)東映
『仁義なき戦い』。その1作目が公開されたのは、1973年。思い入れたっぷりに語っているが、筆者もまだ生まれてはいない。もう半世紀近く昔の作品である。
近年、主人公の菅原文太始め、主要な登場人物が次々と鬼籍に入っている。そして、2021年は福本清三、田中邦衛、千葉真一が。
筆者は、田中邦衛の死因が「老衰」であることに驚いた。『仁義なき戦い』で暴れ回っていた人たちが天寿を全うしてしまうぐらい、年月は経っているのだなと。
『完結編』のラストシーン。長かった抗争もやっと終止符を打ち、お互い敵同士のボス格、広能昌三(菅原文太)と武田明(小林旭)が対峙する。この2人も元々は仲間同士であったが、いろいろな行き違いの果てに袂を分かち、争うこととなった。
多くの死傷者を出した30年近い抗争の果てに、お互いの組織はひとつにまとまることとなり、老いた広能と武田は引退を決意する。
ふと昔を思い出した武田が、広能に声を掛ける。
「落ち着いたら、今度吞まんか」
だが、広能は断る。
「こんな(お前)とは吞まん……。死んだもんに、悪いけぇのう……」
武田に背を向け、ひとり歩き出す広能。
最後まで馴れ合いを拒んだ菅原文太も、2014年に天に召された。
新たに文太の下にやって来た田中邦衛も千葉真一も、作中では敵であった(福本は味方だったり敵だったり)。
どうか、もう敵も味方もなく、みんなが穏やかに酒を酌み交わしていることを願う。
(文・ハシマトシヒロ)
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