インタビュー

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2022年06月13日

TikTokクリエイター・しんのすけ:「ファスト映画問題」を経て考えたいこと

TikTokクリエイター・しんのすけ:「ファスト映画問題」を経て考えたいこと



映画感想TikTokクリエイターのしんのすけさんを迎えた短期連載の第4回。

今回は「ファスト映画問題」を経て考えることや、「映画を語ること」について語ってきただきました。

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“ファスト映画問題”を経て考えること

洋画の面白さを伝えたうえで、映画館に観に行ってもらうことはやはりハードルが高いんだなと思います。だからこそ、「過去作で面白い映画があるよ」ということを引き続きやっていきたい。

それこそファスト映画の問題が顕在化した時に出た、「ファスト映画があったからあの過去作に出会った」という意見には、考えさせられることが結構多いと思います。

ファスト映画ではないところで、各映画会社が過去作に出会える機会をちゃんと作れるかどうか。そこを怠っていたのはもう間違いない。強い言い方をすると、業界の怠慢だなと思います。

「ファスト映画」というものが作られてしまったので、ファスト映画に慣れてしまった人は、知る前にはなかなか戻れません。

だからこそ、過去作のを殺してしまわないように、きちんと活用するためにはどうしたらいいのか。過去作をどうやったら観てもらえるのかは、試行錯誤しつつ考えていきたいです。

映画を語るTwitter文化に思うこと

「ファスト映画」がダメだということは念頭に置きつつ、いわゆる「オタクがジャンルを潰す」というのは、ここ10年ほどのTwitter文化の動きを見て感じています。

Twitter文化と映画のプロモーションの相性が密接になりすぎて、InstagramやTikTokなどの他のSNS媒体が入りにくいような環境になってしまっている気がします。

10年前であれば、Twitterで映画を語り合うことが“新しい感覚”で、ある種の部活のような感覚があったように思えます。でももう10年も時間が経っているので、そのあたりの価値観のアップデートは必要なのかなと。

「自分が古い場所に浸かっているのかもしれない」という感覚は、他のSNSを使わないと見えにくいし、強制するべきではないので、難しいなって本当に思います。

映画ファンとして、どのように作品と向き合うか

例えば、賛否両論が巻き起こってTwitterのトレンドに載った『大怪獣のあとしまつ』の空気感を見ていて、熱くなっている人たちは、一周回って袋叩きにすることを楽しむ雰囲気があって。

『大怪獣のあとしまつ』はコアファンや特撮ファンに向けたプロモーションが良くなかったこともあって、余計にSNSの空気感が偏っていった気がします。

『100日間生きたワニ』の時にも感じたこととして、大喜利状態で盛り上がって終わる分にはいいなって思うんです。でも、いつも大喜利だけでは終わらない。

特にTwitterは感想を言い合うだけで終わらないというか。リツイートやいいねの機能で、ツイートが自分を評価してくれるスコアのような感覚で書いてしまう側面があるんです。

「コメントにいいねがつく感覚」が大喜利を助長してる1つの原因だなと思うし、一方で素敵な感想にいいねがついてリツイートされることはすごく良いことだと思います。そこはもう一長一短だなと。

僕はTikTokをやっているので、「映画作品に参加したい」「感想も作品の一部」という感覚はよく分かります。TikTokやYouTubeだと動画にコメントが付随して表示されるので、コメントの内容が独り歩きしにくい構造になっている。

一方でTwitterは、断片的な情報が切り取られて拡散することも多い。その部分がTwitterで悪い意味で大喜利化しやすいのかなと思っています。

例えば『大怪獣のあとしまつ』の場合も、文脈を完全にぶった切って「面白くない」という抽象的なイメージに大喜利をくっつけて、作品を知らない人に届けようみたいな空気感がありました。

大喜利化に便乗してただバズらせたい人間も少なからず紛れているので、さらに部分的に切り取られて拡散されていく。

良いコメントが人に届くという仕組みはTwitterの良い部分であるなと思うと同時に、最近はあまりにも良い要素より悪い要素が目立っていることには、結構思うところがあります。

(語:しんのすけ/取材・構成:シネマズ編集部)

しんのすけ(映画感想TikTokクリエイター)プロフィール



1988年生まれ。京都芸術大学映画学科卒業後、「水戸黄門」や『HiGH & LOW』シリーズで助監督を務める。2019年より映画感想TikTokerとして活動。

TikTokでは主にエンタメや社会問題の情報発信を行い、人気を集める。現在は情報発信の他にもドラマ・映画の監督業をはじめとして幅広く活動。

初めての著書「シネマ・ライフハック」がKADOKAWAより好評発売中。

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