続・朝ドライフ

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2022年04月18日

「ちむどんどん」第6回レビュー:父(大森南朋)の遺言が暢子にだけなかった理由(※ストーリーネタバレあり)

「ちむどんどん」第6回レビュー:父(大森南朋)の遺言が暢子にだけなかった理由(※ストーリーネタバレあり)


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第6回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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やりきれないお父さんの突然死

先週土曜日に放送された第1週の振り返りでは暢子(稲垣来泉)がいままでとれなかったシークワーサーの実を自力でもぎとることができたとき、お父さん賢三(大森南朋)がさとうきび畑で倒れるように編集がされていました。それによってまるで小さくて丸く瑞々しいシークワーサーの実がお父さんの命のように見えました。

第1週第4回で「命を頂きます」の話を賢三がしていたように、父の命が子どもに引き継がれたかのようです。

第2週「別れの沖縄そば」第6回の冒頭で賢三は心臓発作で亡くなります。

学校から猛スピードで帰宅した4人の子どもたちひとりひとりに賢三は苦しい息の下で語りかけます。でもなぜか暢子にだけは無言で微笑むのみ。えええ〜 あとでその理由が明かされるとしても暢子がお気の毒になりました。

どうしようもなく哀しい父との別れ。長患いしていたわけではなくなんの予兆もなく急なのですからもっと混乱するのではないかと思うのですが、子どもたちはすっかり父の死を覚悟しているようでした。観ているこちらのほうが気持ちのもっていきようがなくなってざわざわが止まらなかったです。嗚呼お父さん!

子どもたちは物分りがじつによく、お父さん亡きあと、めそめそすることなく、働きはじめたお母さん優子(仲間由紀恵)に代わって家の仕事などをします。

海で、ニライカナイに行ったお父さんに向かって叫ぶ4人(ニライカナイの歌が物哀しい)。このとき、暢子が自分にだけ何も言ってくれなかったとしょげると(そりゃそうです、ともすればトラウマになりますよ)、きょうだいが、「暢子は暢子のままでいい」と思ったからだと慰めます。

「自分の信じた道を行け」と父が言ってくれていたことを思い出す暢子。じつのところ、ドラマ上では第1週でじゅうぶん過ぎるほどお父さんは暢子に遺言のようなメッセージを語っていました。沖縄そばの作り方まで伝授しているのですが、亡くなるとき無言はなあ……。それでなっとくした暢子は強い。

稲垣来泉さんの大人びた表情が印象的です。「おいしいもの食べたーい」と海に向かって叫んでいたときとはまるで違う。父の死を乗り越えてすこし成長したことを感じます。

第1話では海も長く伸びる道も、じつに清々しいものに見えましたが、お父さんが亡くなったあとは違って見えます。第1回で家族で楽しく走った道、おいしいもの食べたいと叫んだ海が、父を想って走るときは陰影を帯びて見える。でもそれは観るほうの気持ちの変化であって、自然は変わらずそこに悠々と存在しているだけ。
一見、シンプルなホームドラマの哀しい別れの場面が、俯瞰で観るととても哲学的だと感じました。

さて。海で亡くなった肉親を偲ぶ場面には、「エール」を思い出しました。「エール」もヒロイン音(二階堂ふみ)のお父さんが早くに亡くなり、海に散骨しました。ほかに主人公のお父さんが早く亡くなるのは「とと姉ちゃん」もそうでした。朝ドラでは、家長である父の死、あるいは父が父らしい責務を果たさないことを、主人公が自立する契機にするのです。


(文:木俣冬)

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