
2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第6回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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やりきれないお父さんの突然死
先週土曜日に放送された第1週の振り返りでは暢子(稲垣来泉)がいままでとれなかったシークワーサーの実を自力でもぎとることができたとき、お父さん賢三(大森南朋)がさとうきび畑で倒れるように編集がされていました。それによってまるで小さくて丸く瑞々しいシークワーサーの実がお父さんの命のように見えました。
第1週第4回で「命を頂きます」の話を賢三がしていたように、父の命が子どもに引き継がれたかのようです。
第2週「別れの沖縄そば」第6回の冒頭で賢三は心臓発作で亡くなります。
学校から猛スピードで帰宅した4人の子どもたちひとりひとりに賢三は苦しい息の下で語りかけます。でもなぜか暢子にだけは無言で微笑むのみ。えええ〜 あとでその理由が明かされるとしても暢子がお気の毒になりました。
どうしようもなく哀しい父との別れ。長患いしていたわけではなくなんの予兆もなく急なのですからもっと混乱するのではないかと思うのですが、子どもたちはすっかり父の死を覚悟しているようでした。観ているこちらのほうが気持ちのもっていきようがなくなってざわざわが止まらなかったです。嗚呼お父さん!
子どもたちは物分りがじつによく、お父さん亡きあと、めそめそすることなく、働きはじめたお母さん優子(仲間由紀恵)に代わって家の仕事などをします。
海で、ニライカナイに行ったお父さんに向かって叫ぶ4人(ニライカナイの歌が物哀しい)。このとき、暢子が自分にだけ何も言ってくれなかったとしょげると(そりゃそうです、ともすればトラウマになりますよ)、きょうだいが、「暢子は暢子のままでいい」と思ったからだと慰めます。
「自分の信じた道を行け」と父が言ってくれていたことを思い出す暢子。じつのところ、ドラマ上では第1週でじゅうぶん過ぎるほどお父さんは暢子に遺言のようなメッセージを語っていました。沖縄そばの作り方まで伝授しているのですが、亡くなるとき無言はなあ……。それでなっとくした暢子は強い。
稲垣来泉さんの大人びた表情が印象的です。「おいしいもの食べたーい」と海に向かって叫んでいたときとはまるで違う。父の死を乗り越えてすこし成長したことを感じます。
第1話では海も長く伸びる道も、じつに清々しいものに見えましたが、お父さんが亡くなったあとは違って見えます。第1回で家族で楽しく走った道、おいしいもの食べたいと叫んだ海が、父を想って走るときは陰影を帯びて見える。でもそれは観るほうの気持ちの変化であって、自然は変わらずそこに悠々と存在しているだけ。
一見、シンプルなホームドラマの哀しい別れの場面が、俯瞰で観るととても哲学的だと感じました。
さて。海で亡くなった肉親を偲ぶ場面には、「エール」を思い出しました。「エール」もヒロイン音(二階堂ふみ)のお父さんが早くに亡くなり、海に散骨しました。ほかに主人公のお父さんが早く亡くなるのは「とと姉ちゃん」もそうでした。朝ドラでは、家長である父の死、あるいは父が父らしい責務を果たさないことを、主人公が自立する契機にするのです。
(文:木俣冬)
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–{「ちむどんどん」第2週目のあらすじ}–
「ちむどんどん」第2週目のあらすじ
やんばる小中学校の運動会の日がやってきた。足の速い暢子(稲垣来泉)は、例年通り一等賞まちがいなしと思われたが、意外なアクシデントに見舞われてしまう。母・優子(仲間由紀恵)が見守る中、後を走る兄妹たちも気持ちの入った走りを見せる。さまざまな思いを抱えながら走る、四人の兄妹たちの運動会の行方は…。そして、優子の元に、遠い親戚からある一通の手紙が送られてきて…。
–{「ちむどんどん」作品情報}–
「ちむどんどん」作品情報
大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――
ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。
放送予定
2022年4月11日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人
作:
羽原大介
語り:
ジョン・カビラ
音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)
主題歌:
三浦大知「燦燦」
沖縄ことば指導:
藤木勇人
フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子
制作統括:
小林大児 藤並英樹
プロデューサー:
松田恭典
展開プロデューサー:
川口俊介
演出:
木村隆 松園武大 中野亮平 ほか