続・朝ドライフ

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2022年04月21日

「ちむどんどん」第9回レビュー:暢子、東京に行くチャンス(※ストーリーネタバレあり)

「ちむどんどん」第9回レビュー:暢子、東京に行くチャンス(※ストーリーネタバレあり)


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第9回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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青柳史彦(戸次重幸)が故郷と思い出の大切さを語る

働きすぎて優子(仲間由紀恵)が貧血で倒れてしまいます。
このままでは借金も返せないし、日々の生活も立ち生きません。
そこに、東京から手紙が。賢三(大森南朋)の叔母が子どもをひとり、引き取ってもいいという
申し出で、子どもたちは誰が東京に行くか考え始めます。

東京にはファッションがある
東京には歌手がいる
東京には美味しいものがある
東京では漫画読み放題

4きょうだい、それぞれがモチベーションを高めますが、優子は子どもを預けたくなくて、また無理して工事現場に復帰します。
優子に給金を多めにくれた現場の親方(肥後克広)も、自分も子どものとき出稼ぎに行かされたし、そういうことはよくあることだと今度ばかりはあまり同情してくれません。

朝ドラでは、貧しさゆえ、子どもが家庭を離れるエピソードが定番のようにあります。
絶対王者「おしん」ではおしんが、直近では「おちょやん」で千代が奉公に出され、別れの場面は涙、涙の名シーンとなっています。

「ちむどんどん」も涙の別れが近づいていますが、最初は先を争うように東京に行こうとしていた子どもたちですが、いざとなるとなんだかんだと理由をつけて尻込みをはじめます。
そのなかで、前から東京の食に強い憧れを持っていた暢子が、意を決して名乗りをあげました。

暢子は涙を滲ませていましたが、過去の朝ドラ出稼ぎエピソードと比べると、家を出されることがそれほど絶望的に見えないのは、昨今はしんどい描写が敬遠されるゆえの配慮でしょうか。
深堀りすれば、どれほど大変なことかは想像できますし、辛さの度合いも視聴者が自由に決められるように描写が淡くしてあるのかもしれません。七味やタバスコやコチュジャンをお好みでということでしょうか。

例えば、東京に行きたい行きたいと無邪気に行っていた暢子が、実際に東京に行くことになったものの、思いがけない家庭の哀しい事情によるものだったという巡り合わせの切なさを勝手に膨らませて考えることも可能です。あるいは当時の沖縄のことを調べて考えを巡らせることも可能でしょう。

戦前、貧富の差がかなりあり、「口減らし」が当たり前のように行われていた時代の物語だった「おしん」や「おちょやん」と比べマイルドな出稼ぎエピソードといえば……ありました、「ひよっこ」です。高度成長期のお話で、出稼ぎに出たお父さんが行方不明になったため、主人公が東京に働きに出ました。が、それは寂しいとはいえ、時々、実家に戻ってほっこりすることができるもので、不幸感はあまりなかったです。むしろ里帰りして田植えするエピソードが好評でした。

「ちむどんどん」の不幸感の少なさは故郷が善きものとして描かれていることです。「おしん」や「おちょやん」は故郷にいやな思い出があり、それを捨て去り、刷新したい気持ちが主人公を駆動します。

「ちむどんどん」は故郷を大切なものとする「ひよっこ」パターンのようです。

東京から沖縄に民俗学の研究に来た青柳史彦が暢子の学校でこの村のすばらしさと、思い出の大切さを語ります。

「民俗学とはみんなの思い出なんだと思います」と史彦。

辛いときや哀しいときに楽しかったことを思い出して、という言葉はよくありますが、史彦の
言葉で印象的なのは「間違った道に進みそうになったとき」です。

故郷の思い出はその人の原点であり、行動や考えの軸になるものなのです。

その思い出の大切さは沖縄に限ったことではなく、世界中の「どこの村でも どこの街でも 同じなんです」という史彦。
「そして思い出は必ずそれぞれに違います。その違いを知って互いに尊重してください。その先にだけ 幸せな未来が待ってると私はそう思っています」

賢三に続いて、父親がメッセージ性の高いせりふを言うドラマです。

この言葉から深堀りしてみると、「ちむどんどん」に見た人の思い出を重ねて、それぞれの味わいにして観てくださいねというところでしょうか。

激辛に感じるひともいれば、辛さ控えめに感じる人も、やや物足りない人もいていい。どれも観た人の思い出や経験に根付いた、その人だけの大切な感覚なのでしょう。


(文:木俣冬)


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