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映画コラム

REGULAR

2022年04月27日

『バブル』日本のアニメ映画史上最高峰の“体験”ができる「5つ」の理由

『バブル』日本のアニメ映画史上最高峰の“体験”ができる「5つ」の理由


3:「虚淵玄らしさ」もある、王道ボーイ・ミーツ・ガールな青春ラブストーリー

本作のもう1つの注目ポイントは、虚淵玄が脚本を務めていることだ(大樹連司と佐藤直子との共同脚本)。テレビアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」に代表される「鬱シナリオ」の作家としても有名ではあるが、今回はどちらかと言えば明るい内容で、なおかつ存分に「虚淵節」を感じられる内容となっていた。

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『バブル』の導入部は「コミュニケーションが苦手な少年ヒビキが、謎の少女ウタと出会い、交流をしていく」という、王道の「ボーイ・ミーツ・ガール」だ。その2人の出会いが、やがて世界を揺るがす真実へとつながっていく様は、『新世紀エヴァンゲリオン』や『君の名は。』に通じる「セカイ系」と呼ばれるジャンルの特徴でもある。

虚淵玄脚本作品でもっとも作風が近いのは、テレビアニメ「翠星のガルガンティア」だろう。こちらも王道のボーイ・ミーツ・ガールかつの物語であると同時に、かわいらしくて魅力的なキャラクターが織りなす群像劇になっていることも共通している。



荒木監督によると、『バブル』のコンセプトは「アクション作画を使える青春ラブストーリーが大前提」だったそうで、その大前提に虚淵玄の「翠星のガルガンティア」に通ずる「陽性」のラブストーリーを紡ぐ手腕が発揮されたのではないか。

両作品に共通する、コミュニケーション下手であった男の子と、天真爛漫な女の子が仲良くなっていく過程、言葉のみに頼らない信頼関係を育む様は、なんともニヤニヤさせられて楽しいのだから。

なお、虚淵玄が具体的に脚本のアイデアとして打ち出したのは、童話の「人魚姫」をモチーフにしたうえで、「少女が恋した末に泡になる」を「泡が恋して少女になる」に組み替えてはどうか?ということだったそうだ。



いわば、『バブル』は、悲劇的な結末を迎える物語を「創り変えた」内容だ。「世界の理(ことわり)」を見つけ、より良い選択をしていこうとする意思、そして終盤に哲学的な問答をする様には、「魔法少女まどか☆マギカ」に通じる精神性、まさに虚淵節を感じ取ることができた。

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