「ちむどんどん」第21回 「ストップ詐欺被害! 私たちは騙されない」になっている
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第21回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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第5週「フーチャンプルーの涙」は”大きな禍”からはじまりました。
いたたまれない〜。第4週から気になっていたにーにーこと賢秀(竜星涼)が一攫千金を狙った(といっても1000ドルが2倍になる)投資が詐欺だったことが判明します。
詐欺であることを信じたくない賢秀でしたがサンセットバーガーにほかにも投資した人物が現れて、これはもう詐欺確定です。
絶望した賢秀は荒れに荒れて店で大暴れ。下地先生(片桐はいり)の主催するフォークコンサートを台無しにして、先生は激怒。訴えるとまで言い出します。
肝心の賢秀は開き直ってふてくされるばかり。
せっかく暢子(黒島結菜)がやりたいことを見つけ、東京に行こうとちむどんどんしていたのに、また暗雲たちこめます。
いや、もう散々……。実際、こんなことがあったら悲惨ですが、そこはドラマなので、笑いに転じます。下地先生が比嘉家に来ると、今度は賢秀が隠れて、優子が布をかぶせて……と、ここを繰り返すのか!と驚きました。
「寺内貫太郎一家」などの昭和のホームコメディの復刻でしょうか。このコラムを読んでいる方々にはなにそれ?と思う人ももはや少なくないのではないかと思います。西城秀樹がいっつも小林亜星とけんかして転がったり、樹木希林(当時:悠木千帆)がおもしろいおばあちゃん役を演じていたりしていました。そういえば賢秀の歌い方は竜星さんがお好きだという矢沢永吉ふうのようでもあり西城秀樹みたいでもあります。
昭和のそれを知ってる世代にはなつかしいのかもしれませんが、それを知らない世代にとっては、何を見せられているのかわからないのではないかと余計なお世話ですが心配になります。いや、それで育った世代だって、アップデートしているわけで、さすがにこのスタイルは古い価値観だと感じるように思うのですが……。
いったい何を狙っているのかと考えてみました。夕方に放送している「首都圏ナビ」の中の「ストップ詐欺被害! 私たちは騙されない」という啓蒙コーナーにコメディをプラスしたものかなという印象です。
「ストップ詐欺被害! 私たちは騙されない」を見ていると、こんなことで騙されちゃうの? と思うわけです。
いわゆる「オレオレ詐欺」に代表される、身内を装った電話詐欺や、お金が返ってくると甘い言葉で騙し取る詐欺などです。でも実際、騙される人があとを絶たないわけです。
啓蒙ドラマでなくても、比嘉家のようなことは70年代だからということではなくいまもあり得るのです。
たぶん、きっと。
登場人物がまんまと騙されるドラマを見て楽しいかというと楽しくは……ないんですよね。
「おちょやん」(2020年度後期)の千代(杉咲花)のお父さんテルヲ(トータス松本)が朝ドラ史上最凶お父さんと注目されましたが、賢秀はテルヲと違って善人ではあるとはいえいまのままでは朝ドラ史上最凶お兄ちゃんになりかねません。テルヲは散々やらかしたすえ、最後は感動エピソードでイメージ回復しましたから、賢秀もそうであるといいのですが、そこまで待つのは気が遠くなりそうです。
下地先生がケチャップまみれになって「なんねこれ〜」と叫ぶのは「太陽にほえろ!」の松田優作演じるジーパン刑事殉職のパロディ「なんじゃこりゃあ」だと思いますが、元ネタは74年と未来の話になります。そうそう「寺内貫太郎一家」も74年の作品でした。
71年当時、すでにあったのは映画「寅さん」シリーズ。家族にひとりいる残念な人物といえば「寅さん」です。どんなひとも受け止める家族や隣人愛の大切さの象徴・寅さんですが、どれだけ日本の作り手は「寅さん」に頼っているんでしょうか。
(文:木俣冬)
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