『ヴイナス戦記』から『ククルス・ドアンの島』まで、一貫した“テーマ”とは?


(C)創通・サンライズ

6月3日(金)より公開の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』

内容はもちろん、その作画崩壊も含めて文字通り“伝説”となった「機動戦士ガンダム」のエピソードが翻案されて、映画として蘇りました。

監督・キャラクターデザインを手掛けたのは40年以上前の“ガンダム”の立ち上げに携わった伝説のアニメーター安彦良和

安彦良和はこの『ククルス・ドアンの島』をもってアニメーターとして最後の仕事と宣言しています。

そんな安彦良和はアニメーターとしては大きな空白期間があります。その期間を追っていくと『ヴイナス戦記』という1本の長編アニメにたどり着きます。

『ククルス・ドアンの島』伝説


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今回映画化された『ククルス・ドアンの島』はいわゆる“ファースト”と呼ばれるテレビシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」の第15話を翻案したものです。

全体のシリーズを通して見てもシャア・アズナブルもザビ家も登場しない、サイドストーリーに近い立ち位置でした。

そのためか再編集+新規映像で構成された『機動戦士ガンダム』劇場版3部作では取り込まれることなく幻のエピソードとなっていました。


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自分が親を殺してしまったことで戦災孤児となった子供たちを、養い・守るために戦うジオンの脱走兵ククルス・ドアンと多くの戦いを経てきたアムロ・レイとの出会いを描いた内容は“戦争の縮図”ともいえる内容で、後年になって評価が高くなっています。

最近では意外と知られた話かもしれませんが、意外なことに「機動戦士ガンダム」は低視聴率に苦しみ、打ち切りの憂き目にあった作品でした。

しかし放映後、当時ネットもない中でファン同士の異常な盛り上がりと連帯、再放送の好評、そしてなんといっても“ガンプラ”の大ヒットで放送終了後にTVシリーズの再編集し新規映像を加えた劇場版3部作が公開され、その後の“ガンダム伝説”が始まりました。

「機動戦士ガンダム」が主人公アムロ・レイとライバルの“赤い彗星”シャア・アズナブルとの戦い、地球連邦軍とジオン公国との戦争、そしてジオン公国の率いるザビ家へのシャア・アズナブルの復讐が大きなラインの物語となっています。


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一方で本筋に関わらない部分もアニメシリーズには多くあり、「ククルス・ドアンの島」もそんなエピソードでした。本作は“戦争というもの”の一面の描きだしたアニメオリジナルであり、今回の映画版は、現在実際に戦火が拡がっているニュースが毎日流れる中で、映画の舞台となる土地柄も含めて、現実とフィクションが重なります。

そんな隠れた幻のエピソード「ククルス・ドアンの島」は、物語とは別に、壮絶な作画崩壊やそれまでにはありえなかった描写が多く、アニメファンやガンダムファンにとっては“伝説”となっています。

今回、監督の安彦良和はテーマから作画崩壊まで「ククルス・ドアンの島」が抱える“伝説”の部分をすべて取り込んだ形で再映画化しています。


(C)創通・サンライズ

3DCGで描かれながらも異形になっている“ククルス・ドアンのザク”は必見です。

彼が総監督として関わった『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』6部作は、“ガンダム”と言いつつもガンダム誕生前夜のシャア・アズナブルの物語でした。

“スクリーンで躍動するガンダム”が登場しないというジレンマもあり、今回はファンの想いも汲んで安彦良和は大いに躍動する“連邦の白い悪魔”RX―78ガンダムの雄姿を描いています。

アニメーター・安彦良和の挫折と再興



現在74歳の安彦良和は1970年代にアニメーターとして業界に入り、早々に「宇宙戦艦ヤマト」「勇者ライディーン」「超電磁ロボ コン・バトラーV」と言った今も根強い人気を誇るタイトルに関わることになります、

1977年に「無敵超人ザンボット3」に参加、ここでアニメ演出家と頭角を現してきた富野 由悠季と本格的に関わります。それ以前からも接点があったようですが、「ザンボット3」で本格的に共作、その2年後の1979年の2人は「機動戦士ガンダム」の企画をスタートさせます。

その後、安彦良和は1983年の『クラッシャージョウ』で長編アニメーション監督デビューを飾りますが、必ずしも監督志向が強かったわけでないようで、この頃から漫画家として活動していきます。

80年代に入ると、ガンダムシリーズのキャラクター造形などを除くとアニメから距離を置くようになります。


(C)学研・松竹・バンダイ

その間に発表したのが「ヴイナス戦記」

未来の金星を舞台にした二大勢力の軍事衝突を背景に、逞しく生き抜く若者たちの姿を描いています。

本作は安彦良和の手によって、1989年に長編アニメーション映画化されています。

ガンダムシリーズの声優が多く参加し、音楽は久石譲が担当しています。今見ると惹かれる要素が多いのですが、意外にも興行的には苦戦を強いられました。

『ヴイナス戦記』はガンダム的な世界観・戦闘シーンはもちろん、初期宮崎駿作品など80年代アニメーションの特徴をぎゅっと濃縮したような映画でした。

一貫したテーマ

戦後すぐに生まれた安彦良和は、その世代性もあってか学生運動に傾倒していた時代があったりと反戦という思いは常に抱えていました。

アニメーター時代から、漫画作品に至るまで安彦良和はSFや伝奇ファンタジーの世界観を利用しながら“戦争の惨禍”を描き続けています。それは『ヴイナス戦記』から『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』に至るまで共通したテーマになっていると言えるでしょう。


(C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を監督するにあたり安彦良和は、「戦いとは?愛する者を力で守るとは何なのか?」という根源的な問いかけを込めたと語っています。

「この問いにはついては永久に答えが見つからない」とも語っていますが、問い続けることが何よりも大事だという想いなのでしょう。


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もちろん、ガンダムやガンキャノン、ザク、ホワイトベースなど新規に書き起こされたモビールスーツなどのメカニックや、アムロ・レイを筆頭にお馴染みの人気キャラ(本来登場しないはずのキャラクターもサービス出演)の登場を素直に楽しむのが『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の正しい楽しみ方の1つです。

その後に少し、安彦良和が込めた気持ちに思いを馳せてみるのも良いのではないでしょうか?

 (文:村松健太郎)

■『ヴイナス戦記』配信サービス一覧




| 1989年 | 日本 | 109分 | (C)学研・松竹・バンダイ | 監督:安彦良和 | 植草克秀(少年隊)/水谷優子/原 えりこ/佐々木優子/納谷悟朗/大塚芳忠/吉田古奈美(現:吉田小南美)/菊池正美/梁田淸之/河口 宏/池田秀一/塩沢兼人/藤本 譲/玄田哲章

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