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2022年05月31日

「吉祥寺ルーザーズ」:“まとも”って何かを考える第8話。聡(増田貴久)のお節介が幡多(片桐仁)兄妹を救う!

「吉祥寺ルーザーズ」:“まとも”って何かを考える第8話。聡(増田貴久)のお節介が幡多(片桐仁)兄妹を救う!

ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会

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秋元康が企画・原作を務める増田貴久主演ドラマ「吉祥寺ルーザーズ」が2022年4月11日にスタートした。

共演に田中みな実、片桐仁らを迎え、“人生の負け組=ルーザー”6人がシェアハウスで一緒に暮らす日々を描いたシチュエーションコメディドラマ。

本記事では、第8話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

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「吉祥寺ルーザーズ」第8話レビュー

ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会


幡多(片桐仁)がお笑いのオーディションに落ち、意気消沈して帰ってくる。慰めようとする聡(増田貴久)と、披露したネタを見て「もうさ、芸人辞めれば?」と辛らつな言葉をかける桜(田中みな実)。

幡多は「きっとどこかにいると思うんだよ、俺のネタの面白さを分かってくれるやつが」「たまたま今回は審査員が悪くて客が悪かっただけ」と人のせいにしはじめる。ああ、それ1番言っちゃいけないやつ……。案の定、桜に「あなたと世間なら、世間が正義」と言い負かされる。そりゃそうだ。

聡はそんな幡多を庇おうとして、幡多がデビューしてないことをぽろっとバラしてしまう。嘘をついていたのかと桜、舞(田島芽瑠)に詰められる幡多。こっそり逃げようとするも舞に首根っこを掴まれ身動きが取れなくなっている聡。前回は番犬みたいだったけど、今回は大きめの猫みたいだ。

すると、結婚を控えているという幡多の妹・弥生(藤井美菜)が突然シェアハウスを尋ねてくる。婚約者の両親が結婚相手の親族の職業を気にしているから、幡多がどんな仕事をしているか事前に確認するためだった。芸人を目指しながら、実演販売員として最低限の収入を得ていることを話すと、弥生は「私のためにもまともな仕事をして」と言う。

“まとも”って何だろう? 幡多の懐事情ははっきりとはわからないが、ギリギリだろうと誰に迷惑をかけることもなく生きている幡多はまともじゃないのだろうか。

弥生は借金で苦労した両親のようにならないために、必死に結婚相手を探したのだと熱弁する。そして、矛先は聡たちへ。職業を聞かれ、それぞれが答えると「レベルが分かりました」と悪態をつく。弥生本人は銀行員だというが、銀行員がそんなに偉いのか! と、聡たちを援護したくなってしまった。

さすがに住人たちへのこの態度は幡多も看過できなかったようで「次のオーディションで合格してテレビに出る!」「出られなければ家族の縁を切る!」と豪語してしまう。その姿勢は大変に素晴らしいが、できないことは言わないほうがいいよ、幡多……。

ちょっとでも幡多がオーディションに合格する確率が上がるよう、方法を考える住人たち。すると、桜がYouTubeにネタ動画を上げてみては、と提案する。チャンネル登録者は弥生のみという惨状だったが、こつこつと動画を撮ってはあげていく。

そんな中、聡は幡多と弥生が言い争っているときに口にした「どれだけ家族に足を引っ張られたか」という発言が引っ掛かっていた。理由を問うと、借金の返済に追われていた両親にかわり、幡多は高校を中退し家族の生活費と弥生の学費を稼いでいたというのだ。ひと段落したときには30を超えていて、そこで芸人になりたいことに気づいたらしい。当時小学生だった弥生は、そのことを知らない。

その歳で何をしてるんだ、ではない。幡多はここ数年でやっと自分の人生を生きている。芸人としては開花する見込みがまだなさそうだけど、これは幡多を応援したくなる。

ついにやってきた起死回生のオーディション。しかし、幡多はネタを見てもらうことすらできなかった。現実は想像以上に厳しい。もはや、面白さを分からない世間が悪い! と騒ぐ元気すらなくなってしまった幡多。その背中はいつもよりも一回り小さく見えた。

ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会

なんとか幡多のことを弥生にわかってほしいと、シェアハウスの住人たちはいつものようにお節介を働く。それは、幡多のYouTubeチャンネルを使って生配信し、幡多が家族のためにしてきたことを話すというものだった。チャンネル登録している弥生は、それを必ず観るはずだ、と。

このやり方は賛否両論あるだろう。本人の許可も取らず勝手に生配信し、しかも不特定多数の人に向けて勝手に人の家庭の事情を話してしまうのだから。決して褒められたやり方ではないかもしれないけど、住人たちの幡多への思いは十分に伝わってきた。

そして、予想通り配信を観た弥生は再びシェアハウスへやってくる。「なんでそんな大事なこと隠してたの」と幡多を平手打ちする弥生に対し、幡多は「お前を学校に入れるのだって、やりたくてやってたことだから」と言う。その声は普段の幡多からは想像できないくらい、深くて優しい。見返りを求めないこの姿勢は、愛情以外のなにものでもない。

これをうけて、「体裁ばっかり気にする人なんて私から別れてやる!」と怒り出す弥生を、考え直せ、彼とちゃんと話し合えと説得できる幡多は、“まとも”な大人ではないだろうか。何の仕事をしているかで、一体その人の何がわかるというのか。幡多はそれを、身をもって証明している。

翌日、彼とちゃんと話せたらしい弥生はまたシェアハウスにやって来る。バージンロードを父と兄に挟まれて歩くのだと話すその笑顔は明るくて、なによりとってもかわいかった。

ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会

(文:あまのさき)

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