続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年02月27日

「ブギウギ」負傷したタナケン(生瀬勝久)の猛烈な焦り<第103回>

「ブギウギ」負傷したタナケン(生瀬勝久)の猛烈な焦り<第103回>


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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第103回を紐解いていく。

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代わりはいくらでもいる?

「真相婦人」に掲載された、タナケン(生瀬勝久)がケガをして公演が中止になったという記事を読み、スズ子(趣里)山下(近藤芳正)と入院先に見舞いに行きます。

朝ドラ名物・立ち聞き――スズ子は病室の前で、タナケンがマネージャーに大声を出しているのを聞いてしまいます。

いつもクールで斜に構えていたタナケンが、まっすぐ熱く、動けない自分の焦燥感を語ります。

以前、舞台装置の下敷きになって負傷した足を騙し騙しやってきたのが、とうとう悪化してしまい、復帰してもいままでのような動きはできないと医者に言われてしまったタナケンは、いても立ってもいられない様子です。

スズ子はいまはゆっくり休むべきと思いますが、タナケンは、そんなことをしたらすぐに忘れられてしまう。空いた椅子には別の者がすぐに座る。代わりはいくらでもいる。それが業界の常だと達観しています。

待っていてくれるお客様を喜ばせたい。でも、体はもう動かない。さぞ辛いことでしょう。

でも、「やぶ医者め」と自分を鼓舞し、「見事に復活してみせる」とスズ子の見舞いの林檎を力強くかじります。

たくさんの人を笑わせたいという大きな欲望は、演劇というものに対する強い思いの現れですが、りつ子(菊地凛子)のように、お客さんがたったひとりでも感動させる、という考えとは違っていて、たくさんの人に笑ってほしいという欲望がタナケンのなかでは大きいのです。

絶望と焦りと、それでも負けたくない克己心。いろんな感情がないまぜになって制御できなくなっているます。タナケンのいつもの冷静さを失っている感じが伝わってきました。

それだけ演劇に心血を注いできたのです。たくさんの人に支持されてきたのに、急速に離れていかれる怖さ、孤独になることへの恐れ。芸術とビジネスとの矛盾も抱えているのが、芸能を行う人達の業です。業界歴の長い、山下はそれを理解しています。

スズ子もいまや「ブギの女王」として大スターで業界の荒波に揉まれているはずですが、楽しく歌っているだけでここまで来た彼女にはまだタナケンのような感情がわかっていないようです。

いや、スズ子だって、声のケアや、身体のケアは、絶対にやっていると思いますし。それこそ、産後、体型や体力を戻す努力などは大変だったでしょう。「ワテかて必死や」というセリフもあるように、必死に芸を磨いていると思うのですが。

タナケンの気迫に刺激され、スズ子は羽鳥(草彅剛)の自宅を訪ね新曲の相談をします。羽鳥も、純粋に音楽のことだけ考えていられた頃を懐かしんでいました。

誰もが最初は、好きなだけではじめたものが、いつしか、ビジネスの大波に飲まれて、好きなだけではやれなくなっていく。その悩みを、タナケンもスズ子も羽鳥も抱えています。

大野(木野花)に頼まれた買い物をして帰ってきたスズ子に、さらに驚きの報告がもたらされました。トミ(小雪)が……。

楽しいことばかりは続かず、つらいことがどんどん押し寄せてきます。ケガや病気や災害や戦争、死と人間には限界を痛感させられる出来事がたくさんあります。それにどう対処したらいいのか、どうするスズ子。


(文:木俣冬)

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