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“俳優・大沢たかお”の尽きない魅力:『キングダム』『GOEMON』で見せた表現者としての凄さ


(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会

映画『キングダム2 遥かなる大地へ』が7月15日(金)に劇場公開を迎えた。

人気漫画の実写化には制作発表の段階からネガティブな意見が見受けられるものだが、2019年公開の第1作『キングダム』は前評判をものともせず。興行収入57億3000万円という成績をマークしたのだから、実写化は「大成功」だったと言っても過言ではないだろう。

多くの観客に支持された理由の1つとして、間違いなく「キャストの魅力」が挙げられる。主人公・信役の山﨑賢人をはじめ、吉沢亮橋本環奈長澤まさみといった俳優陣がそれぞれのキャラクターに息吹を与え、文字どおりスクリーン内を所狭しと躍動してみせた。

映画公開後のSNSには多くのキャストに賛辞が寄せられていたのだが、その中で短い出演時間にもかかわらず大きな注目を集めていた人物こそ秦の王騎将軍を演じた大沢たかおだ。メインの若手キャストたちが気を吐く作品の中で、しっかりと爪痕を残していった大沢の実力は「さすが」と言うほかない。

『GOEMON』の名演:今だからこそ推したい、人間的魅力


(C)2009「GOEMON」パートナーズ

1995年公開の『ゲレンデがとけるほど恋したい。』をはじめ、これまでに『世界の中心で、愛をさけぶ』や『子ぎつねヘレン』など幅広いジャンルの作品に出演してきた大沢。

近年も主演作『AI崩壊』でシリアスな表情を見せたかと思えば、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』には特殊メイクを施して狸の大妖怪役で出演。ハーレーに乗って現れるだけでは飽き足らず腹太鼓まで披露する異色のキャラだった。大沢はどのような基準で出演作を選んでいるのか気になるところだ。

さて、数ある大沢のフィルモグラフィの中でも、筆者の心に強く残っている作品がある。



タイトルは『GOEMON』。

織田信長や豊臣秀吉が存在した戦国時代を描きつつ、紀里谷和明監督が“新解釈”のもとビジュアルセンスを遺憾なく発揮した2009年公開のエンタメ大作だ。

本作は戦国時代とは思えないセンスの際立つ衣装が話題を呼んだが、登場人物は実在・架空含めて歴史上で有名な人物ばかり。主人公の大泥棒・石川五右衛門に江口洋介が扮し、秀吉を奥田瑛二、石田三成を要潤、そして三成の部下にして五右衛門のライバルである忍・霧隠才蔵を大沢が演じた。

本作は紀里谷監督のビジョンが全面に打ち出されたこともあり、初鑑賞時には誰もがその世界観に圧倒されるに違いない。実際筆者も劇場鑑賞時は映像を大前提として記憶に刻まれることになったのだが、時間が経つにつれ(歳を重ねるにつれ)不思議なもので心境に変化が訪れる。実は映像よりも、ドラマパートこそ本作の見どころなのではないか──と。

振り返ってみると本作では様々な人間関係が入り組んでおり、中でもじわじわ真綿で首を締めるように心を搔き乱してきたのが五右衛門と才蔵の関係性だ。2人は寺島進扮する服部半蔵から忍術を学び(ちなみに青年期の才蔵を演じたのは佐藤健大沢たかおの若かりし頃は佐藤健!)、のちに五右衛門が自由を選んだことで才蔵と道を違えてしまう。

やがて再会した2人は皮肉なことに敵対する関係になっていて、序盤から激しいバトルを展開。VFXを駆使して縦横無尽にカメラが動き回る中、江口洋介vs仮面で鼻から下を隠した大沢たかおが激突するというご褒美的な場面に仕上がっている。


(C)2009「GOEMON」パートナーズ

一歩間違えれば白々しく見えかねないバトルシーンだが、やはり江口と大沢の名優2人が演じているというだけで画面の牽引力が違う

異様な状況下においても飄々とした五右衛門と、口元を隠しながらも目で怒りを露わにして(大沢の顔半分をあえて隠しているところに紀里谷監督の癖(へき)を感じる)対峙する才蔵。剣術や飛び道具、肉弾戦と目まぐるしく展開するアクションのつるべ打ちは、いま見ても全く色褪せない。

「結局アクションメインなのか」ということでは決してなく、五右衛門と才蔵の関係性がより大きく転換するのが物語の中盤。秀吉や三成の思惑が交錯する重要な展開なので詳細は伏せるが、アクション以上に鬼気迫る演技を見せる江口と大沢に注目してほしい。

特に衝撃的な事態に直面する才蔵の姿は、大沢の静と動を使い分けた感情表現も相まって必ず目に焼きつくはず。かつて五右衛門と過ごした時間と、再会を果たしたことで自身の中で膨れ上がった感情。それらを一身に背負った上で浮かべる才蔵=大沢の表情は、悲哀を感じさせると同時に儚げで美しいとさえ思える。

“異郷の地に身を置く”感覚を知るため単身渡英!

本人を直接知らずイメージだけで書くのも失礼な話だが、大沢たかおは“クール”という印象が強い。しかし役に向けた大沢のアプローチは、ちょっとやそっとでは触れられないほどの“熱さ”が内に秘められている。

役作りのエピソードでは、2009年と2011年に連続ドラマとして放送されて高視聴率をマークした「JIN -仁-」が有名だ。本作では大沢演じる脳外科医・南方仁が江戸時代にタイムスリップし、満足な医療機器もない中で幕末の人々を救おうとする姿が描かれた。

ヒューマンストーリー・医療&歴史ドラマ・SF要素とまさにてんこ盛りの内容。原作があるとはいえ、主演をオファーされたら萎縮してしまっても無理はない。ところが大沢の尺度はスケールが違う。江戸時代という異郷の地に飛ばされた仁の感覚を知るべく、携帯電話を置いて約3ヶ月もイギリスに渡って生活したのだ。

「なるほど!」と納得しかないアプローチだが、ちょっと待ってほしい。

冷静に考えて“情報をシャットダウンして渡英する”というアイデアを思いつく発想力にまず驚かされるし、実際に行動を起こせる実行力も驚嘆に値する。それだけの役作り(おそらく医療に関する知識も蓄えたに違いない)をしているからこそキャラクターに説得力が生まれ、作品に誰もが共感できるリアリティがもたらされたのだろう。

増量も厭わなかった、王騎将軍役


(C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会

役作りの意味では、前述の『キングダム』王騎将軍についても触れておきたい。王騎将軍は原作ファンに愛される人気キャラだけに、読者から厳しい目を向けられるのは確実。役が決まってからの重圧は当然あったはずだ。

しかしフタを開けてみれば、大沢が体現してみせた王騎将軍からは、躊躇や迷いといったものが微塵も感じられない。威風堂々とした佇まいはまさに秦の六大将軍の称号に相応しく、巨大な矛を振るって兵士たちをなぎ払う迫力満点のアクションは『キングダム』の見せ場の1つでもある。

王騎将軍のビジュアルが解禁になった際、筆者は正直なところ大沢のムチムチな体型を見て特殊メイクが施されているのかと疑った。実際は大沢本人が増量して王騎将軍に挑んでいたのだが、さすがにムチムチになりすぎていやしないか──。


(C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会

それもそのはず、大沢は巨漢の王騎将軍を演じるために17kgも増量。もともと肉料理が大好きで増量時には朝から肉を300gも食べる生活(さらに昼もステーキ夜もステーキ)を送っているらしく、体型変化も厭わない役者魂に唸らされるばかりだ。

キャラの内側からアプローチした南方仁とは対照的に、外見から役作りに挑んだ王騎将軍役。その魅力は、もちろん大沢の表現力による部分も大きい。特徴的なイントネーションがいつの間にかクセになり、王騎将軍が「ンフ」と笑えばこちらもつられて「ンフゥ」と笑いたくなってしまう

強さと威厳を併せ持ちながら愛嬌も感じさせる“余裕”こそ、王騎将軍を演じるうえで最も重要な要素だったのかもしれない。


(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会

ちなみに大沢は『キングダム2 遥かなる大地へ』で王騎将軍役を続投するにあたり、前作以上に増量したという。計り知れない深度で役作りに挑むストイックさは、まさに俳優・大沢たかおの真骨頂。今後どのような役柄に挑んでいくのか、興味が尽きない。

(文:葦見川和哉)

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| 2009年 | 日本 | 128分 | (C)2009「GOEMON」パートナーズ | 監督:紀里谷和明 | 江口洋介/大沢たかお/広末涼子/ゴリ |

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