2022年07月29日

映画『1640日の家族』里子を育てた家族の”タイムリミット”を描く感動の実話

映画『1640日の家族』里子を育てた家族の”タイムリミット”を描く感動の実話



ファビアン・ゴルジュアール監督が幼少期に体験した実話を元につくられた映画『1640日の家族』が2022年7月29日に公開される。フランスの里親制度を軸に、里子を受け入れる家族や支援団体の様子、里子自身の心境にフィーチャーした重層的な作品だ。

血の繋がりが家族にとっての必須条件なのか、それとも、ともに過ごした時間の濃さも大切なのか。たびたび突きつけられる「家族とは何か」が、この作品のテーマである。実話を元にしているからこそ、賛否両論な見方がありそうなラストシーンにも注目してほしい。

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「家族」に血の繋がりは必須か?

直近で言えば、是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』も「家族」や「人が生まれてきた意味」について迫った作品である。男女(子どもも含む)が集まり、赤ちゃんの人身売買のため行動をともにする様子は、さながら家族のよう。過ごす時間が長くなるにつれ”家族に似た関係性”が形成されていったのだ。

家族に血の繋がりは必須なのだろうか。

映画『1640日の家族』の主人公は、里子の少年シモン(ガブリエル・パヴィ)と、彼を育ててきた一家。理由あって生後18ヶ月で引き取られたシモンは、一家の長男・次男と混じって、まさに本物の兄弟のように育てられた。事情を知らない人間が見れば、実子にしか見えないだろう。



シモンを育てるアンナ(メラニー・ティエリー)は、実の子どもに与えるのと遜色ない愛情を彼に注いだ。食事をし、遊びに出かけ、時には親として叱りもする。血が繋がっていないから家族じゃない、なんて、そんな野暮なことは誰にも言えるはずがない。

しかし、シモンの実父が「あらためて彼を引き取りたい」と名乗り出てきた瞬間から、様子が一変する。家族を襲う天変地異。子どもにとっての大事な幼少期に、常に横に寄り添っていた自負もあってか、アンナは時に理解に苦しむ行動さえ起こす。

誰がそれを非難できるだろう。過剰な愛情は束縛になり、独占欲にもなり得るけれど、それを悪だと切って捨てることは、少なくとも私にはできない。


子役・ガブリエル・パヴィの演技とラストシーンに注目

本作で注目して見て欲しい点がある。それはシモンを演じたガブリエル・パヴィの演技だ。ガブリエル・パヴィは本作が映画初出演。監督とキャスティングディレクターが、公園で遊んでいた彼を見初めてスカウトしたのだという。



兄弟で遊んでいるときは本気で楽しんでいるように見え、気を悪くしたときは心底怒っているようにしか見えない。演じているように見えない自然な表現は見事で、ビギナーズラックと捉えるには少し出来過ぎている。

そして、実話だからこそのリアリティに満ちたラストシーンも必見。人によって真っ二つに賛否両論がわかれるところだろう。



映画らしい綺麗なエンディングと取るか、それとも救いがないと取るか。なんとも言えない焦燥とやるせなさを感じながら見るエンドロールは、ある意味、この映画の最後を飾るのに最もふさわしいかもしれない。

(文・北村有)

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