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2022年07月21日

「ちむどんどん」第74回:賢秀(竜星涼)の”秀”に込められたであろう優子(仲間由紀恵)の想いを想像して泣けた

「ちむどんどん」第74回:賢秀(竜星涼)の”秀”に込められたであろう優子(仲間由紀恵)の想いを想像して泣けた


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第74回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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ウークイの送り火の粉が空に舞う

いつかこの記憶を子供たちにも話そうと思いながら、話したら泣けてくるから沈黙を貫いていた優子(仲間由紀恵)がついに戦争の記憶を暢子(黒島結菜)たちに語ります。

戦争で家族を全員亡くし、収容所で孤独だった優子(若い頃:優希美青)は、実家の食堂で働いていた賢三(大森南朋/若い頃:桜田通)と偶然再会し、共に生活するようになりました。

泣くことも笑うこともできなくなっていた優子に「家族の分まで幸せになれ」と励ます。当の賢三も戦争のあと東京の房子(原田美枝子/若い頃:桜井ユキ)のところに身を寄せたときは笑顔が消えていました。感情がなくなって虚ろになるほどの壮絶な体験をしたのでしょう。

最初は兄妹のように暮らしていたふたりは結婚して4人の子供に恵まれたのです。

賢秀は死んだ弟・秀夫にそっくりと思ったと語る優子。賢秀の「秀」は弟の名前からとったものだったのでしょうね。賢秀が何をやっても叱らず、自由にさせてきた理由は、長男だからというだけではないことがここでようやくわかります。

秀夫がこの手のなかで死んで後悔ばかりの優子は、生まれ変わりのような賢秀にはやりたいように生きてほしいという一心で溺愛になってしまったのでしょう。

賢秀に限らず、優子が常に子供たちの自主性に任せ、何をしても黙って肯定、できるだけ協力しようとしてきたのはひとり生き残った彼女ができることがそれしかないと思っているからなんでしょうね。
「亡くなった人の分まで あなたたちには幸せになってほしい」

自分の家だって裕福ではないにもかかわらず、智(前田公輝)一家にごちそうをまるごと譲ってしまうのも、弟が亡くなったとき、自分の食べる分も弟にあげたらよかったという後悔がそうさせるのだと思います。

それは引いては、誰もが平等に生きる自由があるという世の真理でもあります。

さらに言えば、どんなに自由気ままに振る舞える環境にあっても、志半ばで亡くなっていった先人たちがいて今があることに思いを致しながら生きなくてはいけない。

比嘉兄妹が奔放でわりと他人を気にしないで自分勝手に振る舞っているのは、この真理や教えを際立たせるものなのでしょう。彼らがどんなに共感できないキャラでも生きる自由がある。だから誰も彼らをとがめる権利はないのです。ただ、彼らもまた周囲に配慮して生きることを覚える必要があるのです。そんなメッセージを感じるドラマにもかかわらず、主要人物たちが許容できないという視聴者の声が多いというパラドキシカルなドラマです。この身を引き裂かれるように痛い気持ちが、多様性や共生がいかに困難なことかと伝えてくるようです。

この難しいことを実践することも、伝えることもほんとうに難しいと感じます。どうしたら実践できるか、伝わるのか工夫しながら続けるしかないのでしょう。

生き残った優子は家族と隣人に無償の愛情を注ぐ一方で、遺骨収集活動にも参加していました。そのきっかけになったのが、田良島(山中崇)の書いた嘉手刈(津嘉山正種)たちの活動の記事。それを読んで賢三と共に手伝いに行っていました。

田良島の記事が、優子たちを突き動かし、20年もして和彦(宮沢氷魚)をも突き動かしたということです。房子も記事を読んで寄付するようになったのかもしれません。優子は東京に来てそれを初めて知ったのでしょうか(前から知ってたら暢子が房子の店で働いていることを知らなかったことと辻褄が合わないですものね)。

田良島自身、沖縄戦で兄を亡くし「いまでも沖縄のどこか山のなかにいるんです」と心に引っかかりを持ったまま生きています。
「終わっていないわけ うちの戦争は。いつまでたっても……」

当事者の代で解決できないことは代々引き継いでいく必要があります。ジャーナリストの記事が多くの人の心を動かし、活動の一助になったことを書いたことは光です。

また、これは沖縄の話だけれど、沖縄に限ったことではない気がします。いろんな局面で亡くなった人がいて、その亡骸を残された者たちが葬ることができない状態で、長い時間、探し続けている人達が世界にはたくさんいるのです。


優子の話が終わると、送り火を焚きます。長男の賢秀がウチカビという紙幣を燃やします。これはあの世にもっていくお金だそうです。「あさイチ」で博多華丸さんが説明してくれました。六文銭のようなものですね。地域が違っても死者にお金をもたせる習わしがあると思うと興味深いです。

歌子がおなじみの「てぃんさぐの花」を歌います。
天上に群れる星は数えられるが親の言うことは数えきれないという親の言うことがことのほか大切であることを歌った歌が、これまで以上に胸に響きます。

「また来年ね」と遠い空に向かって語りかける優子の声も染みました。

無数の小さな灰と火の粉がゆらゆらと空に上がっていきます。

「あさイチ」で博多大吉さんも言っていたけれど、これをきっかけに賢秀は考え直してほしいですね。「グレート」とか言っていないで真面目に働いて。


(文:木俣冬)

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