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2022年07月22日

「ちむどんどん」第75回:暢子(黒島結菜)と和彦(宮沢氷魚)の海辺のキスを素直に祝福できない理由

「ちむどんどん」第75回:暢子(黒島結菜)と和彦(宮沢氷魚)の海辺のキスを素直に祝福できない理由


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第75回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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僕はこの手を絶対に離したくない


ウークイの夜を終えて、朝。
朝日に祈る賢秀(竜星涼)。無性に働きたくなって朝早くから旅立っていきました。これはいい傾向です。

賢秀だけではありません。上白石萌歌さんの歌う「芭蕉布」の歌をバックに、比嘉家、それぞれの再出発です。

優子(仲間由紀恵)善一(山路和弘)に再婚はできないと断りを入れます。

良子(川口春奈)博夫(山田裕貴)のことを「絶対に諦めない」と決意します。必ず3人で暮らせるようにすると。

歌子(上白石萌歌)は民謡教室に通いはじめました。はにかみ屋な彼女が思いきり高く明るい声で挨拶したとき、ちむどんどんしました。

そして暢子、房子(原田美枝子)に電話して「(仕事も結婚も)両方つかみなさい」と発破をかけられます。

どうしようかな〜みたいな感じで浜辺でぼんやりしていると、和彦(宮沢氷魚)が現れます。嘉手刈(津嘉山正種)が遺骨収集をはじめた理由を暢子に話す和彦。

敵軍の攻撃から逃げる途中、女の子の手をつないで一緒に逃げたものの、あまりの激しさに手を離してしまった。それで、
「ずっとあの子を探しているだけなんです」

その切実な言葉を聞いた和彦は、感極まって暢子の手を握ります。
「僕はこの手を絶対に離したくない、嘉手刈さんの分まで。絶対に 絶対に離したくないんだ。暢子」

戦争に関するひとり語りを行っている津嘉山さんの語りの力。ほんとうに経験したことのように語ります。沖縄の言葉も出身者だから自然です。

言葉の力、語りの力が強く、あまりにも迫真で、言葉ひとつひとつが胸に響きます。知らなかった過酷な戦争、知らなかった父母の馴れ初め……それらを聞いた暢子や和彦の心は平常よりも鼓動が早まったことでしょう。体温もあがり、呼吸も速くなり、得体のしれないざわつきが心身を襲ったことでしょう。その現象はいわゆる「吊り橋効果」のように、暢子と和彦を急速に結びつけます。

幸せになりたくて、なりたくてちむどんどんしている

房子の「つかみたくてもつかめなかった人たちの分まであなたは全部両方つかみなさい」というセリフにもあるように幸せの途中で亡くなった方々のためにも、残された者が幸せにならないといけないという考え方に基づいたのでしょうか、暢子と和彦は、たくさんの命が眠っている海の前で結婚を誓います。

「うちと結婚してください」と暢子は、先日の和彦の告白の回答をします。タイム終了です。

口づけを交わすふたりを見て、残された者が幸せになって、誰もが幸せになれる世の中を作っていくのだという教訓を感じることは可能です。命は循環します。結婚とは命をつないでいくための行為です。

単純に、おめでとう〜!と嬉しくなる視聴者もいるでしょう。一方、この人達はいつだって他者の話を自分の話にすり替えてしまうのだなあと、やれやれ……という気持ちになる視聴者もいることでしょう。それと、思ったことをすぐに行動に出すのだなあとも(和彦が海に急に現れるのは、智が暢子の気持ちを考えずにどんどん行動するのと似ています。このドラマ、複数の登場人物の行動や考え方がいっしょなんですよね)。

気になっていた、房子が遺骨収集に寄付をはじめたきっかけは、暢子の養子話のときに、優子から手紙で聞いたそうで。これもまた、暢子を養子に出すと言ってドタキャンのお詫びの手紙に、私は遺骨収集をしていますという余談(この件は大事ですが、お詫びが主題の場合は余談でしょう)を書いたのか首をかしげます。房子にとってはいい情報だったから結果オーライですが。

「つかみたくてもつかめなかった人たちの分まであなたは全部両方つかみなさい」はそのとおりなのですが、愛(飯豊まりえ)と別れて数日、戦争の知らなかった側面を知って翌日、自分たちは幸せになる! というのはあまりに早くないでしょうか。幸運には前髪しかないから思い立ったが吉日なのでしょうか。沖縄戦の話→プロポーズ が映像を飛ばし見しちゃったかと思うほど速かったです。

戦争で離してしまった手とさほど苦労していない自分たちの手を一緒にしてしまうのはあまりに乱暴ではないでしょうか。理屈じゃないんだ、考えるな感じろであって、詰まるところ同じだとしても、その結論にたどりつくにはもっとゆっくり時間をかける。それが多くの人に届ける物語ではないでしょうか。なにしろこれは125回もあるドラマなのです。

あらゆることを”自分事”にして考える というのははたしてこういうことなのでしょうか。今日もまた課題をもらいました。


(文:木俣冬)

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