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「雪女と蟹を食う」5話:“終わりの地”で聖女に救われる北(重岡大毅)。一方、彩女(入山法子)の胸中は…?

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
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重岡大毅が主演を務めるドラマ「雪女と蟹を食う」が2022年7月8日より放送を開始した。

冤罪により人生を狂わされた男・北(重岡)が死ぬ前に蟹を食べようと思い立ち、図書館で出会ったセレブ妻・彩女(入山法子)を襲おうと家に押し入る。そこで彼女は思いもよらぬ行動をとり、謎の旅がはじまっていくというラブサスペンスドラマだ。

本記事では、第5話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

「雪女と蟹を食う」第5話レビュー

北(重岡大毅)と彩女(入山法子)は、ついに北海道・函館に降り立つ。ついに終わりの地に着いてしまった。

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

活イカの踊り丼という、都内では食べることが叶わなさそうな衝撃の料理を前にする2人。食べるときの笑顔が、いつだって自然体だ。彩女はおもむろに「ずっと憧れだったんです、北海道」と呟く。「とても幸せ」という彩女に、幸せそうに微笑みかける北。しかし、当の本人は全然幸せそうじゃなかった。

市場を歩いていると、北は既視感に囚われる。そこは北が「死ぬ前に蟹を食べよう」と決意したあの日、テレビで目にしたまさにその店だった。そしてその番組を見ていたのは北だけでない。彩女も見ていた。蟹を、というより、食レポをするレポーターの背後で、自身の夫・一騎(勝村政信)が自分以外の女性と席につき、顔を寄せ合ってメニューを選ぼうとしているところを。

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

こんな偶然ってあるだろうか。あまりに残酷すぎやしないか。彩女は北海道のガイドブックを手にしていたようだったから、旅行の計画でもしていたのだろう。そんなタイミングで北海道の番組を選ぶのは必然だとして、見るともなく見ていた画面の中に、知った顔を見つけてしまう確率ってどれくらいだろう。あの瞬間、彼女は一体どんな気持ちになったのか、想像するのも辛い。

そして、例えその先に死を決意していたとしても北がもう少し生きようと思うきっかけになった映像が、もしかすると彩女の死を1歩進めてしまったかもしれないものと同じである現実も辛すぎる。

最期の地を稚内に定め、車の中でGLAYを流す(エキストラとしてTERUが出演していたのには驚いた)。地面に寝そべり溢れんばかりの星を眺めていたときは、まるで世界に2人しかいないみたいで美しく楽しげだったが、彩女はずっと元気がない。北も声はかけずとも心配しているのに、蟹のイラストに「たこ」と書かれたTシャツを着ているからいまいち緊迫感に欠ける。

彩女は、相変わらず熱心に何かを書き続けていた。気になる北は、彩女がシャワーを浴びに行っている隙にノートを見ようと試みる。記されていたのは「雪女と蟹を食う」というタイトルのようなものと、北と出会ってからこれまでの軌跡だった。「なんだよこれ」と狼狽える北。自分と過ごした時間が克明に記録されていたら、誰だってそんな風に思うだろう。

そこへ彩女が戻ってくる。人のものを見るなんて、と言いながらも、その声も表情も、冷たいくらいに冷静だった。彩女はそれを「日記」と一蹴したが、本当にそうなのだろうか?

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

「あなたのことを知りたい」と言う北に、「死ぬ覚悟ができていない」と返す彩女。そして「同じ景色を見ている人だと思った」「でも、あなたはもう違う景色を見ている」と続けた。旅が始まったとき、たしかに2人は入道雲を見ながら、夏になると死にたくなると共感し合っていたはずだった。北はきっと、今の夏にそこまでの絶望感を見出せないだろう。「生きているのにどこかひとつ欠けてるの」と口だけで笑む彩女に、背筋が凍った。

煙草を切らした北は、1人で買い物へ。ところが道に迷ってしまい、夜になって職務質問を受ける。北にとって警察はトラウマだ。パニックに陥って逃走し、北はますます自分の居場所を見失った。

セイコーマートの前で雨に打たれ、空腹に震える北。マリア(久保田紗友)と呼ばれた女性が、そんな北を見かねてか「生きろ」と唐突に声を掛けた。あまりにも唐突で少々面食らったが、死の空気が濃くなっていく物語の中で、端的で率直な言葉が重く響いた。どんなことがあったとしても、今、生きてここにいるという事実を突きつけられたような気分だ。

マリアというだけあって聖母のような彼女は、北にご飯までご馳走してくれた。まるでヒグマへの餌付けを見ているようだったが、マリアがこんなにも親切なのは、自分もかつて人から助けられた経験があったからだった。「過去のツケを払っているだけ」と言ったマリアも一筋縄ではいかない人生を送ってきたことが伝わってくるが、マリアの周りにはキラキラとした生の迫力が漂っていた。

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

マリアの助けにより、無事にホテルに到着できた北。ところが、すでに彩女はチェックアウトしてしまった後だった。荷造りをしていた彩女が、鞄の奥底から包丁を取り出していたのが気になる。

 

ところで、彩女が北に「死ぬ覚悟」を問うているのは今回が2回目だったと記憶している。本人が死を望んでいると明言しているのに、なぜ何度も尋ねるのか? これは筆者の希望的推測だが、彩女は北に生きていてほしいと思っているのではないだろうか。生きて、できれば幸せになってほしい、北にはまだその未来を享受する可能性があるはずだ、と。だからすでにチェックアウトしてしまっていたのも、帰ってこない北を見離したり、逆に自分が見離されたと考えたりしたのではなく、自分の死に巻き込みたくないからなのではないか。

そうだとすると、彩女のことをもっと知りたいと言った北を突き放したのにも合点がいく。また共感し合い、死への思いを強くすることを避けたかったのではないか。「好き」だからこそ、生きていてほしいと思う。それはごく当たり前の感情であるように思う。

「好き」ゆえに彩女のことを知りたい北と、「好き」ゆえにできれば北に生きてほしい彩女……。

とはいえ、彩女の本心はずっと読めない。引き続き推測しながら、物語の世界を楽しみたいと思う。

(文:あまのさき)

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