「ちむどんどん」第95回:賢秀問題で和彦が新聞社を退職。家族という連帯責任の恐怖
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第95回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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家族、そのおそろしき絆
開店資金200万円を良子(川口春奈)に譲ってもらったおかげで無事、店舗を借りた暢子(黒島結菜)。お店の名前は「ちむどんどん」に決定。8月のはじめ頃には開店できそう。
ところが順風満帆にはいきません。
「えっ!?」
「僕、東洋新聞首になるかもって」
賢秀(竜星涼)のネズミ講乱闘事件が週刊誌に乗って、そこに和彦の関与が問われてしまいます。どうやら暴力沙汰になったことが問題のようです。
東洋新聞の信用にかかわるので、退職届けを書けと、笹森編集局長(阪田マサノブ)に迫られます。局長には以前から和彦は睨まれていますから、こういう機会に温情をかけてはもらえないでしょう。
田良島(山中崇)は自分が辞めると言い出します。
「考えろ! お前はいま、無職になるわけいかないだろう」
ネズミ講の情報は田良島が聞いてきたものですから責任を感じたのかもしれないですが、なんだかなあという気がします。
あの情報をもとに、和彦がもうちょっと頭を使ったら、ネズミ講を捕まえてその取材もできて暢子もお金を失わずにすんだかもしれず……。
和彦は田良島に助けてもらうわけにはいかず、退職届を書きます。
「暢子も賢秀も僕の大切な家族、後悔はしてない」
このセリフ、感動ポイントなのかもしれませんが、ゾッとしました。このゾッには2つあります。ひとつは、家族という絆の重さに対する恐怖のゾ。ひとつは、ここまで誰かを守ろうとする気持ちに憧憬を込めた感嘆のゾ。です。
どちらも無償の想いという点で同じです。本来、後者を感じたいところですが、あまりに賢秀のこれまでの行いが度を越しているので、連帯責任みたいになるのが筆者だったらできないなと思いました。重子(鈴木保奈美)が心配していたのもそこでしょう。
このときかかっている劇伴がおなじみのアコーディオンかバンドネオンの南米ふうな切ない曲。序盤、飼ってた豚を食べたシーンにかかったものです。この、愛情注いだ家畜を食べるという身を引き裂かされる生きる辛さが「ちむどんどん」の味わいだと筆者は思っているんですが、そこをどストレートに描かず、淡く書くものだから、もやもやするんです。本格派四川料理で辛くつくればいいのに、大衆向けにマイルドな味わいにしてしまっているんですよね。第94回の賢秀の、一般人相手に本格的なパンチは打てないみたいなことです。
賢秀は、反省して、養豚所で真面目に働きはじめます。
「ここで一生、一緒に働かせてください」
清恵(佐津川愛美)はこう言われて、告白(求婚)と思ったみたいです。これがほんとうにそういう意味だったら、賢秀ってやっぱり懲りてない気がしてしまいます。観念して猪野家に潜り込むという発想ですよね。もちろん清恵に対して好意もあるのでしょうけれど。なんかずる賢い感じがしてしまいます。こういうふうに結婚して落ち着くことは世の中にいくらでもあるのもわかるのですが、物語だからもうちょっと盛った夢を見せてほしいのです。
和彦は不祥事にもかかわらずさわやかな顔で退職。なぜか、そこに暢子が同席しています。お母さんか! 手土産がサーターアンダギーじゃなかったことがSNSで話題になりました。
田良島は和彦が辞めることになった悔しさに、「関係ないなんて言うな!」と第94回の賢三(大森南朋)と同じことを言います。彼もまた、どんなことがあっても、大事な仲間を家族のように守りたいと考える人なのです。
ここまでくると、何があっても守り抜くことの大切さを感じます。しかもこれは、小さな単位の話ではなく、いま経済的にとても不安定なこの国は何があっても私達国民を守り抜いてほしいという願いではないでしょうか。
「上層部は田良島さんのことも目をつけています」という和彦のセリフは、じつはもっと大きなことに関与しているように聞こえるセリフです。WOWOWあたりでやってる公安ドラマみたいな。ほんとは、和彦はものすごい日本を揺るがすような大きな事件を追っていて、その核心に行き当たり、上層部に止められたのではないでしょうか。ちむどんどんが止まりません。
でも、和彦が退職するのは、ネズミ講の犯罪性ではなく、あくまで暴力を振るったことです。和彦が退職しフリーライターにしたい、賢秀を犯罪者にはしたくないという狙いが感じられます。だから思わせぶりなセリフもアクセントでしかない気がします。
田良島の「この先生の中身の薄い話、そのまま載せるつもりかよ」というセリフが作り手の自虐なのではとも思いましたが、それもおそらく考え過ぎでしょう。
(文:木俣冬)
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