「ちむどんどん」第115回:今週のサブタイトルはなぜ「にんじんしりしりー」だったのか
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第115回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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健彦、誕生
サンサン商店街に来てから暢子(黒島結菜)は太陽を拝むようになりました。子供の頃、実家で、お父さん賢三(大森南朋)が拝んでいたように。そういえばお父さんが謝らないといけないことってなんだったんだろう。
暢子は過去に謝ることは一切合切なくただただいまの感謝と未来に向かって祈っているのでしょうか。
鶴見は日が当たらない場所で、銀座も不思議と太陽を感じさせない中、杉並だけは明るい。これは暢子がようやく日の当たる場所に出て来ることができたというなのだと解釈できます。自分のやりたい沖縄料理の店を持って、ようやく光が当たってきました。
暢子の出産が近づいて、優子(仲間由紀恵)がまた東京に来ます。何度も東京に来ることができる恵まれた経済状態の比嘉家。沖縄や九州方面には交通費がかかるからなかなか帰れないという声を聞きますが、比嘉家はそんなことないのです。昔、あんなに苦労した人たちが豊かになってなによりです。
ただし、賢秀(竜星涼)は期待を裏切りません。優子と清恵(佐津川愛美)を引き合わせに来て、プロポーズをしますが、不完全。まさかやー でした。いつかダイヤモンドの指輪を買ってやると言い続けて買えないみたいなままが賢秀らしい気がします。
この場面で、賢秀が膝を打って痛てて……となっているところや、離れて聞いていた優子、歌子(上白石萌歌)と智(前田公輝)と和彦(宮沢氷魚)が一言ずつセリフを与えられてしゃべるところが、昭和のホームドラマ的でもあり、学校でやる演劇のようにも見えました。ほら、生徒に平等にセリフをくれるやつです。こういう、ひとり一言の元は古代ギリシャ劇のコロスであり、市民の声の代弁なんですけど、それが時を経て謎の学校演劇芝居になってしまったんですね。
賢秀はこころのきれいなまっすぐな子、心が健やかだと優子が言います。清恵も結婚に失敗しているけれど関係ないと、じつに素朴な善意の話にまとまってきます。矢作(井之脇海)もすっかり素直になりました。三郎(片岡鶴太郎)と多江(長野里美)と房子(原田美枝子)も3人でちむどんどんで会います。これで房子もようやく積りに積もった孤独や恨みから解放されたんでしょうかね。フォンターナも太陽光が注がなかったのは房子の心理の現れなんでしょうたぶん。一流店で太陽のイメージの強いイタリア料理を扱っていながらフォンターナは路地裏で暗かった。
これで誰もに光が注がれるようになったわけです。それも順光線が。にんじんしりしりーのオレンジは太陽の恵みの色、そのものです。
生まれた子供の名前は「健彦」。誰もが健やかでさえあればいいという願いを込めた名前です。
憲法に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を思い出しました。
ときに1980年ーー
あと2週!
(文:木俣冬)
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