<2022年総括>映画産業10大ニュースをチェック!配信成長鈍化と映画館が見直された年に?

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2022年の映画産業は、コロナからの回復期となりました。2021年は、理不尽にもゴールデンウィークに政府からの休業要請が出されるなど混乱もありましたが、今年は年間を通して概ね通常通りの営業ができて、多くの話題作で賑わいを取り戻しました。

そんな2022年を振り返り、2023年以降の映画産業の動きを占うためにも、昨年末に引き続き映画産業10大ニュースをお届け。コロナの混乱期の出口が見えてきて、次なる展開の序章が始まった、そんな1年だったと思います。

※取り上げるニュースの順番は、話題性や影響の大きさを考慮したものではなく、順不同です。

1:『呪術廻戦』『ONE PIECE』他、ジャンプアニメの大躍進

(C)2021「劇場版 呪術廻戦0」製作委員会 (C)芥見下々/集英社

今年の映画産業は、昨年12月24日から公開された『劇場版 呪術廻戦 0』の大ヒットから幕を開けました。本作はロングランヒットを記録し、興行収入は137億5000万円を記録。

今年は本作を皮切りにテレビ・劇場で少年ジャンプ原作アニメが躍進しました。映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』に『ONE PIECE FILM RED』とレジェンド旧のタイトルも大ヒット。

(C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会

特に『ONE PIECE FILM RED』は、これまで歴代映画興行収入の上位を独占してきた東宝配給ではなく、東映配給作品が東宝の一強状態に土を付けた記念碑的作品となりました。「東映&ジャンプ」としては、12月には『THE FIRST SLAM DUNK』も大ヒット。本作も100億円を狙える勢いで成績を伸ばしています。



しかも、その勢いは国内だけでなく海外にもおよび『呪術廻戦0』や『ドラゴンボール超』『ONE PIECE FILM RED』などが海外でも高い興行収入を記録しています。

テレビアニメに目を向ければ「SPY×FAMILY」「チェンソーマン」「僕のヒーローアカデミア」「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」や「サマータイムレンダ」に「BLEACH」など、1年を通してジャンプ原作アニメが話題になり続けました。



2023年は「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「Dr.STONE」が帰ってきますし、「るろうに剣心」や「推しの子」など新旧タイトルが目白押し。そして、劇場版『SPY×FAMILY』も予定されています。ジャンプは完全に日本のコンテンツ産業の中心にいると言っていいでしょう。

2:ハリウッドスター来日解禁

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コロナ禍で世界中が海外渡航制限となり、映画のプロモーションで来日するスターは激減しました。しかし、今年はついに大物ハリウッドスターの来日が解禁。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』のエディ・レッドメインに始まり、『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズ、『ブレット・トレイン』のブラッドピットなどスターの来日が続きました。

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『ブレット・トレイン』では実際に走る新幹線の中で会見を行うといったユニークな試みもなされました。

銀幕で観るスターはもちろん素晴らしいのですが、こうして来日して元気な姿を見せてくれると映画を見に行きたい気分も高まります。スターの魅力を再認識できる1年でした。

3:東宝がアニメ事業を「第4の柱」に



国内最大の映画会社である東宝がアニメ事業を映画と並ぶ事業の柱にしていくことを、超長期計画で発表。これまでの東宝は映画・演劇・不動産が事業の3本柱でした。そこに4つ目の柱としてアニメを据えるということです。

映画会社の東宝が、アニメを映画と同じ位置に並べたことには大きなインパクトがあります。すでに国内興行収入の上位はアニメ映画に占められているとはいえ、東宝がアニメに本腰を入れることでその傾向は加速するかもしれません。

▶︎東宝がアニメ事業を「第4の柱」に|映画のイメージは変わっていく?

4:『トップガン』旋風!ハリウッド映画の本格的な映画館復帰

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今年、洋画No.1ヒットとなったのはトム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』でした。本作は製作当初は2019年公開予定でしたが、完成の遅れで2020年にずれ込み、コロナを理由にさらに何度も延期を繰り返していました。



多くのハリウッド大作がコロナを理由に公開できず、ネット配信会社に権利を売却するのとは対照的に、トム・クルーズは劇場公開を諦めませんでした。そして今年、ついに満を持して全世界で公開。大ヒットとなったのです。

本物にかけるトムの執念、そして絶対に劇場で観てもらうという執念が幾重にも重なった本作は、観る人を圧倒。世界中の人に映画館で映画を観る楽しさを思い出させた作品となったことでしょう。

5:映画業界、性暴力被害報道相次ぐ

今年、映画監督の榊英雄氏や園子温氏・俳優の木下ほうか氏らに対して、共演女優やワークショップに参加した方からの性暴力を告発する報道がありました。業界の権力構造など長年見逃され続けてきたことが問題視され、業界全体の体質改善が叫ばれるようになってきました。

是枝裕和監督ら映画監督有志による「映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対する声明」も出され、業界人から問題に取り組む動きが起きています。

映画は人に夢を与える仕事だとすれば、その裏でこのような事件が起きていることはショックです。現実に目を向け改善すべき点はみんなで声を上げて改善していく姿勢が求められるでしょう。

6:ファスト映画アップロードに5億円の賠償判決

大手映画会社をはじめとする13社が、映画の内容を10分~15分程度に編集した「ファスト映画」を動画投稿サイトなどに投稿した者に対して5億円の損害賠償を求めた裁判が開かれ、訴えが認められました。

被告の3人はすでに刑事裁判では有罪が確定しています。しかし罰金額は計350万円で、執行猶予つきの判決です。被告3人はファスト映画で700万円稼いだと言われており、前科がついたといっても利益を生んでしまっているため、抑止力として弱かったのです。

今回の判決が重要なのは、民事の賠償で大きな金額が認められたことです。今回を機に「著作権侵害は儲かるどころか大損する」という認識が広がれば、大きな抑止力となることが期待できます。

ファスト映画については、タイムパフォーマンスを重視する現代人の嗜好に対応している面もあると言われているため付き合い方が難しく思えますが、著作権侵害は明確にアウトです。そのため判例が1つできたことで、各社も対応しやすくなるのではないでしょうか。

著作権侵害、ダメ、ゼッタイ。

7:お蔵入りに製作中止?ワーナーの明日はどっちだ?

今年8月、ワーナー・ブラザースの映画『バットガール』がお蔵入りになるというニュースは、世界のDC映画ファンに衝撃を与えました。完成間近かつ製作費9000万ドルを費やした大作が、劇場公開もネット配信もされないという異例の事態です。

この決定の背景には、コロナ禍を脱しつつある過渡期で、ワーナーが戦略を変更したことがあります。新CEOデイビット・ザスラフ氏は、前CEOのストリーミング重視から劇場重視の戦略に切り替え、同時にDC映画シリーズの刷新を計画。ジェームズ・ガン監督を新部門「DCスタジオ」の共同CEOに指名しました。

DC映画全体の戦略を見直すということで、既存の企画も見直されるようで『ワンダーウーマン3』の製作中止やヘンリー・カヴィルがスーパーマン役から降板となるなど、ファンにはショックなニュースが立て続けに起きています。

ジェームズ・ガンはMCUにおけるケヴィン・ファイギのような立ち位置となるわけですが、最近の製作中止報道が全てジェームズ・ガンの責任とは言えないでしょう。彼の構想の全てはまだ不明ですが、今後の成り行きを見守りたいと思います。

8:ディズニーCEOに黄金時代を築いたボブ・アイガー復帰

ワーナー同様、ディズニーも体制に大きな変更がありそうです。ウォルト・ディズニー・カンパニーは、CEOに2000年代から2010年代のディズニーの黄金時代とも言える業績を作った功労者であるボブ・アイガーの復帰を発表。2020年からCEOを務めたボブ・チャペックは2年で退任となりました。

ワーナー同様、ディズニーもコロナ禍で自社の配信サービス「ディズニープラス」に注力し、会員数は今年9月で1億6420万人と順調に増えていますが、赤字額は拡大。2024年には黒字化できるとの見通しとはいえ、映画館の復活で今後も順調に会員数を伸ばせるかは不透明です。

ディズニープラスはボブ・アイガー時代に構想されたため、今後も重視されるとは思われますが、劇場作品とのバランスについては注目です。

9:Netflix、突然の広告付きプラン開始


今年、Netflixは会員数が過去10年で初めて減少に転じました。改革の必要に迫られたNetflixは急遽、広告付きの低価格プランの投入を発表。日本でも11月から利用可能となっています。

しかし、この広告付きプランが多くの混乱をもたらしています。日本のテレビ各局は「聞いてない」と不満を表明。NHK作品にすら広告が挿入される異例の事態となっています。今のところこの新プランのユーザー数は少なく、視聴率未達で広告主に返金したという報道もあります。

全米ではディズニープラスの広告付きモデルも開始され、アメリカでは価格高めの広告無しプランとの併存が主流となっています。果たして“広告付き低価格プラン”が世界的にも主流となるのでしょうか。いずれにしてもコロナ禍で大きく成長した配信市場は、大きな曲がり角にあると言えそうです。

▶︎<解説>Netflix広告付きプラン導入の背景とは?使い勝手やメリットを検証

10:ジャン=リュック・ゴダール死去

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ヌーヴェルヴァーグを代表する巨匠であり、20世紀の最も重要な映画作家と言われたジャン=リュック・ゴダールが9月13日逝去しました。91歳でした。

常に映画を刷新し続けた偉大な巨匠は、単に1人の映画監督がこの世を去ったということ以上に、1つの時代の終わりを告げているように思えてなりません。自ら『映画史』という作品を残してもいますが、まぎれもなく映画史における最重要人物の1人だったと言えるでしょう。

彼の残したフィルムはこれからも多くの映画人を刺激していくのではないかと思います。



振り返れば、今年も激動の1年でした。映画館に人が戻り始め、配信市場の成長もひと段落し、来年以降は新たな潮流が生まれる予感があります。

10大ニュースには含めませんでしたが、Amazonが劇場用の作品に年間10億ドルを投資するという報道もありました。この金額は、ユニバーサルやワーナーとほぼ同水準のため、全体的に“映画館”が見直されるのではないかと思っています。

2023年はどんな作品に出会えるのか、楽しみです。

(文:杉本穂高)

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