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2022年12月25日

「ジャパニーズスタイル」最終回:生演劇の楽しさを思い出させてくれた仲野大賀率いる座組に拍手

「ジャパニーズスタイル」最終回:生演劇の楽しさを思い出させてくれた仲野大賀率いる座組に拍手

仲野太賀主演のドラマ「ジャパニーズスタイル」が2022年10月22日放送スタート。

本作はさびれた温泉旅館のセットを舞台に、俳優たちが観客の前で“ほぼ本番一発勝負”の演技を繰り広げるテレビ朝日初の本格シットコム。仲野太賀のほか、市川実日子、要潤、KAƵMA(しずる)、石崎ひゅーい、檀れい、柄本明ら豪華俳優陣が登場する。

本記事では、最終回をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「ジャパニーズスタイル」最終回レビュー

2020年に新型コロナウイルスが海外のみならず、日本を襲い、数々の業界が大打撃を受けた。その一つが、ひと所に大勢の人が集まる演劇界だ。当時は不要不急の扱いを受け、たくさんの公演が中止になった。だけど、演劇が好きな人たちは誰一人として不要不急なんて思っていなかったと思う。

その場にいる誰もが目の前で繰り広げられる劇にハラハラしたり、ドキドキしたり。あの全てが溶け合い一つになる楽しさは何にも代えがたい。それを今、改めて思い出させてくれたのがドラマ「ジャパニーズスタイル」(テレビ朝日系)だ。

仲野太賀、市川実日子、KAƵMA、檀れい、石崎ひゅーい、要潤、柄本明という豪華俳優陣がスタジオに招いた観客の前で繰り広げた演劇を、現場の空気感そのままに放映した本作。

日本ではまだ馴染みのないシットコムというジャンルに、リハーサル1日、翌日に本番で週2本撮影という過酷なスケジュール。何から何まで新しい試みを成功させようとするキャストやスタッフの気概がひしひしと伝わってきた。

そして、ついに大団円を迎えた「ジャパニーズスタイル」。ストーリーも最初から最後まで斬新だった。始まりは、人里離れた場所にある旅館「虹の屋」の跡継ぎを拒んで、家を飛び出し上京した哲郎(仲野太賀)が、10年ぶりに帰ってくるところから。

そこにはバツ2のフラメンコダンサー・ルーシー(市川実日子)に、弟が指名手配されている料理長の浮野(KAƵMA)、二時間ドラマオタクの支配人・影島(要潤)、女霊媒師に全幅の信頼を置く仲居頭の桃代(檀れい)に、その息子で成人しているのに幼児のような凛吾郎(石崎ひゅーい)、いい歳してご当地アイドルにハマる温泉水質管理責任者の梅越(柄本明)と、一癖も二癖もある従業員がいた。

だけど、蓋を開けてみたら哲郎が一番のくせ者で問題を起こしてばかり。特に専務になってからの哲郎はやりたい放題で、それに反発する従業員たちの絆は深まっていった。孤立した哲郎はまたもや送迎車で家出……というのが前回までの展開。最終回は第一話と同じように、哲郎が再び1年後に帰ってくるところから始まった。

ただ、流石に哲郎も反省しており、二度と旅館の敷居はまたげないと思っている様子。そんな哲郎をルーシー以外は何故か快く受け入れる。実は哲郎の父であり、社長の宗八(ベンガル)が旅館の売却を目論んでおり、みんなは哲郎がそれを止められることを期待していたのだった。

それぞれに問題を抱えている従業員たちは他に行くあてがない。そんな彼らを、これまで“クズ”としか言いようのない行動を繰り返してきた哲郎がついに改心し、救うのか。そういう何だかんだ感動的な展開が待っているのかと思っていた。でも、良い意味でその期待を裏切られるラストだったように思う。

どうにか宗八と和解し、再び専務の座に就いた哲郎。しかし、その矢先に宗八が急死する。茫然自失となりながらも、哲郎は喪主を務めたが、どこか様子がおかしい。なぜか急いで東京に戻ろうとする哲郎をみんなが問い詰めると、葬儀の翌日に元カノであるイチ子(モトーラ世理奈)との結婚式をあげるのだという。

しかも、哲郎は香典をみんなに黙って持ち逃げしようとしていた。ここにきて、最大級のクズっぷりを見せる哲郎。もはや清々しい。哲郎が言い訳を重ね、ほかの人たちが責め立てる図は今やお馴染みだが、最終回ということでいつも以上に気合いが入っているように見えた。

だけど、なんだかんだいってお互いを見捨てられない家族愛のようなものがそこにあって微笑ましい。最終回まで共に走り抜けてきたキャストたちの信頼関係も劇に反映されているのだろう。

エンドロールで流れる舞台裏でもキャスト同士の仲が良く、現場の雰囲気が良かったからこそ、一人ひとりが伸び伸びと自由に自分の役を演じられたのだと思う。だから、全てのキャラクターが生き生きと輝いており、見れば見るほど癖になっていった。

彼らとお別れするのは寂しいが、あのわちゃわちゃ感が「虹の屋」ではこれからも繰り広げられていくのだろう。できれば、「ジャパニーズスタイル」パート2があってほしいし、こういうスタイルの作品がもっと普及すればいいなと思う。また、このドラマを観ていると舞台演劇も観たくなる。そういう意味でも、かなり演劇界に貢献した作品になったのではないのだろうか。

(文:苫とり子)


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