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2022年12月27日

「エルピス」最終回:牛丼、カレー、ケーキ。真実を求め、正しく在ろうとする者たちは腹が空く

「エルピス」最終回:牛丼、カレー、ケーキ。真実を求め、正しく在ろうとする者たちは腹が空く


長澤まさみ主演の“月10”ドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」が2022年10月24日放送スタート。

本作は長澤演じるスキャンダルで落ち目となったアナウンサーと若手ディレクターらが連続殺人事件の冤罪疑惑を追いながら、“自分の価値”を取り戻していく社会派エンターテイメント。共演は鈴木亮平、眞栄田郷敦ら。

本記事では、最終回をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「エルピス—希望、あるいは災い—」最終回レビュー

心が折れる瞬間には、音がする。

物理的に「心が」「折れる」なんてことはないのだけれど、人が絶望するとき、どうしたって勝てない相手だと痛感した瞬間などは、ほんとうにポキッと折れる音が聞こえる。

恵那(長澤まさみ)も、岸本(眞栄田郷敦)も、そんな音を聞いてきたのだろう。とりわけ、大門副総理(山路和弘)の秘書を務めていた大門亨(迫田孝也)が、自殺に見せかけられ消された件に対しては、文字通り立ち上がる気力さえなくなった。

もう諦める、もう勝てない。強大すぎる敵を前に、すべてを投げ出そうとする岸本。彼の姿を見て、またもや恵那の心に火がともる。

「当たり前の人間の、普通の願いが、どうしてこんなに奪われ続けなきゃいけないのよ」

国を背負って立つ者として、その責任の大きさは計り知れない。しかしそれが、国を、国民を守るための大義名分として、真実を覆い隠す理由になるだろうか。大門側がやろうとしていることは、言ってしまえば身内の失態を取り繕っているだけ

そのために命を落とした人間、そして、冤罪を着せられ命を奪われようとしている人間がいる。

人間不信になってもおかしくない壮絶な出来事を前に、この人なら信じられると思える相手と出会うこと。それを奇跡と言わずに、なんと表現できるだろうか。

「希望って、誰かを信じられるってことなんだね」

恵那にとって、その相手=希望が岸本だった。元はと言えば、彼がこの話を恵那に持ちかけなければ、今でも深夜バラエティ番組「フライデーボンボン」は続いていたかもしれない。何も変わることのない現状があるだけ。村井(岡部たかし)だって、いつまでもただの「セクハラカラオケおじさん」だったかもしれないのだ。

報道番組「ニュース8」のキャスターに返り咲いたことをきっかけに、冤罪事件から距離を置いているように見えた恵那。しかし、大門側の特大スキャンダル・強姦事件の揉み消しについて、番組のトップニュースで報道することを決意する。

「信用を裏切るってさ、その人から希望を奪うってことなんだよ」

覚悟を決めた恵那は強いし、カッコいい。慌てて斎藤(鈴木亮平)が、もっともらしいことを並べたて説得するが、もう流されることはない。交換条件として「本城彰(永山瑛太)が真犯人である証拠について報道させろ」と提示。折れた斎藤は、それを了承する。

あとは怒涛の展開だ。もはや言い逃れはできない、決定的な真実が世間に公表されるや否や、松本(片岡正二郎)は釈放された。チェリー(三浦透子)とともに、カレーとケーキを食すシーンは、今後も折に触れ思い出すだろう。

恵那は「ニュース8」のキャスターを続投。村井と岸本は会社を立ち上げ、独自に報道の姿勢を追い求める。斎藤は斎藤で、わかりやすく政治を解説するポジションを守っているようだ。

恵那が言ったように、本当は「正しい」も「正しくない」も、ないのかもしれない。人によって見方も意見も変わるし、立場によって正誤も変わるものだ。

しかし、だからと言って、各々の正しさを見極め、追求することをやめてしまったら。それこそ、この国はどうなってしまうのだろうか?

真実を求め、正しく在ろうとする者たちは、腹が空く。松元とチェリーが、カレーとケーキを食べたように。恵那、岸本、村井が牛丼をかっ食らったように。物語を物語のままで終わらせず、私たちも全身全霊で、正しさを見つめ直すときなのだ。このドラマから得たものは、大きい。

(文:北村有)

「エルピス」インタビュー「CINEMAS+ MAGAZINE」にて掲載中!


「エルピス—希望、あるいは災い—」岸本拓朗役の眞栄田郷敦、脚本・渡辺あやらのインタビュー掲載の「CINEMAS+ MAGAZINE no.01」、現在絶賛発売中です。

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