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2023年01月13日

『ウェディング・ハイ』まで、進化を続けるバカリズムの魅力

『ウェディング・ハイ』まで、進化を続けるバカリズムの魅力


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2023年1月クール、安藤サクラ主演の「ブラッシュアップライフ」で脚本と演者を兼任しているのがバカリズム。今や彼が脚本を手掛けることも珍しくなく、そのクオリティの高さから、ある種の武器=売り文句にもなるほどです。

本格的にシナリオを手掛けるようになったのはテレビ東京系のシットコムシリーズ「ウレロ」シリーズ(2011年※第8話のみ)のため、脚本家としても10年選手です。

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バカリズム脚本作品総ざらい!



バカリズムはもともと、ピン芸人になってからはより一層作り込んだネタを書くようになった印象があります。

2000年代後半にピン芸人になり、R-1グランプリやIPPONグランプリを賑わすようになると2011年にからテレビ東京系のシットコム「ウレロ」シリーズがスタート。元々役者として以前から映像作品出演歴がありましたが、この「ウレロ」は劇団ひとりや東京03、早見あかりが集まり佐久間宣行が演出を手掛けたものでした。基本的に30分ノンストップ、さらに撮影セットの体面に観客を入れるスタイルで撮影されました。

舞台版が作られたり、松岡茉優・高畑充希・福原遥(第3シーズン準レギュラー・第4シーズンレギュラー)など豪華な客演があったりして、話題に。コロナ禍に入りシリーズは停滞中ですが、機会があれば御一見をおすすめする秀作シットコムです。

その後、バカリズムは人気オムニバスドラマ「世にも奇妙な物語」の一遍「来世不動産」の脚本を担当。本作が好評で、竹野内豊主演の連続ドラマ「素敵な選TAXI」の脚本のオファーを受けることになります。



連ドラの脚本執筆はお笑いという本業をこなしながら手掛けるには大変ですが、「映画監督をやっているお笑い芸人」は何人もいる一方で「連ドラの脚本を手掛けたお笑い芸人」はまだいないことから受けたそう。

竹野内豊のコメディ演技もはまって、連ドラ「素敵な選TAXI」は好評のまま放送終了。さらにその後スペシャルドラマまで作られることになりました。「イチケイのカラス」を見てもわかる通り、実はコメディが上手な竹野内豊の主演がうまくはまったほかに、「素敵な選TAXI」で“脚本家・バカリズム”の地位は早くも確立されたといえます。 

この時にすでに時勢や視点を入れ替えて“IFの世界”や“実は……”を描くスタイルは出来上がっていて、そのまま人気女優が違った人生を歩んだ本人を演じる「かもしれない女優たち」、名作サスペンスの現代リブート「黒い十人の女」などを立て続けに手掛けます。

(C)2020「架空OL日記」製作委員会

バカリズム・イズムの1つの完成形は、2017年に連ドラ放映・2020年に劇場版も公開された『架空OL日記』でしょう。

もともとバカリズムが“バカリズムである”ということを隠してOLになり切って日常を綴ったブログを元ネタにした作品で、劇中でも特段過剰な女装をするわけでもなく銀行に勤めるOLを演じています。このシュールにして、妙にリアルな世界観は高く評価され、なんと向田邦子賞まで受賞する快挙を成し遂げました。

この「架空OL日記」に前後する形で3シーズン続いた連ドラ「住住」や、特別企画作品「桜坂近辺物語」「生田家の朝」「緑山家の朝」などを手掛けます。

 いよいよ映画へ:『架空OL日記』

(C)2020「架空OL日記」製作委員会

バカリズムは2010年代後半になると、原案を担当した「ひらがな男子」の劇場版を皮切りに映画の脚本も手掛けるようになります。

2020年の『架空OL日記』はドラマシリーズのレギュラーキャストに加えてシム・ウンギョンなどが出演しパワーアップ。とはいえドラマシリーズを見ていなくても楽しめる作品に仕上がっています。ちなみに、本作の監督の住田崇は、バカリズム関連のライブやドラマや映画の演出やプロデュースを手掛ける名パートナーといえる存在です。

(C)2021「劇場版 殺意の道程」製作委員会

バカリズム×住田崇としては、2021年に井浦新とバカリズムがW主演したWOWOWドラマ「殺意の道程」を再編集した『劇場版 殺意の道程』が公開。本作は基本的には復讐譚であるサスペンスドラマなのですが、普段なら描かれない復讐の段取りを一つひとつ拾い上げて取り上げていくという変化球作品です。

あくまでも真剣なのですが、打ち合わせの場所選びから始まり、道具(=手段)選びなどいちいちなぜか躓いていく様がおかしな笑いを誘います。

進化する脚本:『地獄の花園』『ウェディング・ハイ』

■『地獄の花園』

(C)2021「地獄の花園」製作委員会

映画作品としては『劇場版 殺意の道程』に続く形で2021年5月に『地獄の花園』が公開されます。普通の会社のOLの中にヤンキーが混ざっていて熾烈な闘争を繰り広げているという“言った者勝ち”に近い世界観の作品ですが、とにかくキャストが豪華。

主演が永野芽郁で共演に広瀬アリス・菜々緒・川栄李奈・大島美幸・勝村政信・松尾諭・丸山智己・遠藤憲一・森崎ウィン・ファーストサマーウイカ・室井滋・小池栄子とオールスターキャストが揃いました。ちなみに森崎ウィン以外は男優も含めて全員OL役という『架空OL日記』のパワーアップ版といった印象です。

本作で感心したのは、これだけのオールスターキャストをバカリズム脚本がたくみにさばいていたことでした。これだけのキャストが揃えば、自然とエピソードも増えて冗長になりかねないのですが、『地獄の花園』の上映時間は何と102分。見せ場の連続を繋げていきながら、スパッと切って終わらせる爽快感がありました。

それまでのバカリズム脚本作品は「素敵な選TAXI」から「架空OL日記」『劇場版 殺意の道程』までどちらかというと、限られた人数の中での物語が多かったです。「住住」などはその極地と言えるでしょう。

しかし、よくよく考えて見れば「黒い十人の女」では世代も個性もバラバラな十人の女優を巧みに描き分けていて、物語こそ1人の男の殺害計画という閉ざされた世界のお話でしたが、“10人の女たち”はキャラ被りすることなく描かれていました。

■『ウェディング・ハイ』


バカリズム脚本作品の現状の最新映画は『ウェディング・ハイ』。個人的にも大変楽しく見て応援コメントも寄せたほどです。本作もまたキャストがすごい!

主演の絶対にNOと言わないウェディングプランナーを篠原涼子が演じ、さらに中村倫也・関水渚・岩田武典・中尾明慶・浅利陽介・臼田あさ美・六角精児・片桐はいり・皆川猿時・泉澤祐希・前野朋哉・尾美としのり・池田鉄洋・向井理・高橋克実という曲者&個性派がギュウギュウに詰められています。


基本的には1つの結婚式の始まりから終わりまでの話です。その中でも時勢をいじったり、回想シーンが入ったりと“実は…”が満載のTHE・バカリズム作品です。

これだけさまざまに詰め込んでも2時間弱の上映時間であることは、脚本のキャラクターのさばき方の巧みさの表れといえるでしょう。

ほぼほぼキャラクター全員がどこか、何かが欠けている人たちであることがまた笑いを誘ってくれます。中には「よくこんな役どころ引き受けたな」と思いながらも楽しめる作品です。おそらく脚本を読んだ演者たちが何より楽しかったのでしょう。

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些細なことこそ面白い

バカリズムのお笑いは脚本を担当した作品に限らず、誰しもが持っていたり体験したりしたことのある“些細なこと”にちょっとしたアレンジや、時に過剰なデフォルメを加えることで面白さに昇華させています。

手掛けるプロジェクトは年々大掛かりになってきている感がありますが、この基本線が変わらないうちはバカリズムに楽しませてもらえる日々は続くことでしょう。

個人的にはそろそろ“監督作品”があってもいいのかな?と思うところでもありますが……。

(文:村松健太郎)

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| 2021年 | 日本 | 117分 | (C)2022「ウェディング・ハイ」製作委員会 | 監督:大九明子 | 篠原涼子/中村倫也/関水渚/岩田剛典/中尾明慶/浅利陽介/前野朋哉/泉澤祐希/佐藤晴美/宮尾俊太郎/六角精児/尾美としのり/池田鉄洋/臼田あさ美/片桐はいり/皆川猿時/向井理/高橋克実 |

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