映画『エゴイスト』が見せる、さまざまな愛のすがた


映画『エゴイスト』が描いた“さまざまな愛のかたち”

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本作は「男性同士の恋愛を描いた」という切り口で紹介されていることが多い。確かに『エゴイスト』にとって大切な要素であり、その点の当事者が監修に入り俳優陣も制作陣も最大限の配慮と敬意を持って作られている作品であることは間違いない。

ただ筆者が実際に観て感じたのは、それだけではない人間同士の“さまざまな愛のかたち”を描いた作品だということだ。

龍太の事情を知った浩輔は「月10万自分が渡すから、体を売る仕事を辞め、足りない分はそれ以外の仕事で頑張らないか」と提案する。

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そこまでした理由は、龍太を好きだということはもちろん、自分が死んだ母に何もできなかった後悔を別のかたちで昇華させたい願いからでもあった。だから「自分がしたくてやっていることであり、自分のためにやっている身勝手な行為だ」と後ろめたく思ったり、後悔したりする。

『エゴイスト』というタイトルは、浩輔の自分の行為に対する評価を表した言葉だ。

そんな気持ちを抱えた浩輔が、妙子に対して懺悔をするような場面が何度かある。妙子が返す言葉が毎回印象的だし、観ているこちらまで救われた気持ちになった。

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また終盤に、浩輔が父(江本明)から母が闘病中に父に気持ちをぶつけたときの話を聞くシーンも印象的だ。父の「出会っちゃったんだからしょうがない。やっていくしかないだろう」という言葉が心に残る。

自分勝手にしたと思ったことに相手は感謝していたり、助けられた側はしてもらうばかりだと申し訳なく思っていても、実は助けた側も救われていたり。それが人と人の関わりの本質なのかもしれない。

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つらい展開も少なくないが『エゴイスト』を観たことも、浩輔と龍太(と妙子)が出会ったことも、「よかった」と思えた。浩輔や龍太たちのことだけではなく、自分が関わってきた大切な人、もういない人たちとの出会いやその間にあったことも、そう思えるような気がした。

人間や人生が愛おしくなるような映画『エゴイスト』を、一人でも多くの人に観てほしい。

(文:ぐみ)

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© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

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