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2023年02月12日

「Get Ready!」第6話:水面(當真あみ)に命の選別を迫る必要はあったのか?モヤモヤが残るラストに

「Get Ready!」第6話:水面(當真あみ)に命の選別を迫る必要はあったのか?モヤモヤが残るラストに

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妻夫木聡主演のドラマ「Get Ready!」が2023年1月8日放送スタート。

本作は、多額の報酬と引き換えに、手段を選ばず患者の命を救う正体不明の闇医者チームの活躍を描いたダーク医療エンターテインメント。闇医者チームのメンバーには、主人公で孤高の天才執刀医・波佐間永介(通称:エース)を妻夫木、その相棒である交渉人・下山田譲(通称:ジョーカー)を藤原竜也、凄腕オペナース・依田沙姫(通称:クイーン)を松下奈緒、若き万能ハッカー・白瀬剛人(通称:スペード)を日向亘が演じる。

本記事では、第6話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

「Get Ready!」第6話レビュー


千代田医科大学附属病院の外科医・染谷(一ノ瀬颯)が警察に協力し始めた。日本の医療の最先端であり、最高峰でも手に負えない患者を救う仮面ドクターズが何者なのかを知りたい。その一心で。

きっと染谷は一人でも多くの命を救いたいと誰よりも願っている。だからこそ、救えない命があることに人一倍もどかしさを感じているのだろう。そんな染谷はまさしく今も、一人の治せない患者を抱えている。世界的なパティシエ・嶋崎(鶴見辰吾)だ。

嶋崎は亡き妻との夢を叶え、自分のお店を出したが、事故で右手を損傷。パティシエを引退せざるを得なくなったものの、経営者として成功を収めた。しかし、三ヶ月前、極度のインスリン不足で様々な症状をきたす糖尿病性ケトアシドーシスを発症。有効な外科的治療もなく、余命宣告を受けた。

自分では彼を救うことができないが、仮面ドクターズなら……?染谷がそう思っていた頃、奇しくも嶋崎は闇医者チームの次の患者候補として挙がっていた。


素行に問題も見られず、報酬もたんまり払えそうな嶋崎。さらにいえば、嶋崎は執刀医のエース(妻夫木聡)が波佐間という名前で出しているパティスリー「カーサブランシェ」の常連客・水面(當真あみ)の父であり、なおさら命を救う価値がある。誰もがそう思った。

しかし、エースには気がかりなことが一つ。それは水面の身体に見られる傷。実は水面は父である嶋崎から日常的に暴力を受ける被虐待児だった。嶋崎は自分の右手が思う通りに動かないイライラを、水面にぶつけていたのだ。

エースに頼まれ、水面に接触したクイーン(松下奈緒)はその事実を知り、憤りを隠せない。子供に暴力を振るうなんて許せないというクイーンの気持ちはよくわかる。だけど、「許せないというよりは悲しい」と言う水面。

いつも自分を喜ばせるためにケーキを作ってくれた父親がいつか戻ってきてくれるんじゃないか。美味しいケーキを食べたらもしかして……そんな思いで、水面は「カーサブランシェ」に足繁く通っていたという。


だけど、その淡い期待も水面の中からすでに消え去った。「あんな人、早く死んでほしい」という彼女の思いを受け、嶋崎の手術は見送りになるはずだったが、エースの判断でひとまず交渉してみることに。だが、今回手術をするかどうかを決めるのは患者本人でもエースでもない。水面だ。

水面を演じるのは、ここ数年“ネクストブレイク女優”としてよく候補に挙がる當真あみ。デビューからまだ2年も経っていないにもかかわらず、2023年は本作に加え、ZIP!の朝ドラ「パパとなっちゃんのお弁当」(日本テレビ系)、大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合)に出演となる。

あれだけ透明感があれば、もっと消え入りそうな感じがあってもおかしくないのに當真の場合は強い生命力を感じさせる。その凛とした眼差しが確固たる意志を伝えてくるのだ。當真のキャリアを振り返ってみても、中学生の天才小説家やフェンシングの選手など、何かの才能を持った役柄が多い。

今回演じる水面はごく普通の女子高生だが、序盤から何かありそうな雰囲気を醸し出していた。それがまさか虐待を受けていたとは……。仮面をつけたエースに「お前の父親はまもなく死ぬ」と衝撃の事実を突きつけられ、さらには父親の命を救うか、それでも暴力の苦しみから解放されるかという究極の選択を迫られる水面。

一度は救わないことを決断したものの、本当にこれでよかったのかと自問自答する水面の揺れる心を當真は表現した。


しかし、後半は水面の気持ちを知った嶋崎が心を入れ替えるという展開に。思い通りに動かない手でケーキを作り、それを「少しでも笑顔が重なっていく人生を父親失格ながら、空からずっと見守っています」というメッセージ付きで水面に贈る嶋崎。

それによって水面は、自分が暴力の苦しみから解放されるために父親を見殺しにしたという罪悪感にかられる。だけど、先に自分の苦しみから解放されるために水面を利用したのは嶋崎の方だ。

「あの子(水面)が私なしで生きていけるはずがない」と嶋崎はジョーカー(藤原竜也)に言った。子供はどんなに暴力を受けていても、親に頼るしかない。いつか自分を愛してくれるかもしれないという希望も抱いてしまう。それが嶋崎はわかっていて、自分の苛立ちを水面に暴力を振るうことで発散していたのだ。水面が罪悪感を覚える必要なんて一切ない。


結局、娘を苦しめた罪を生きて償わせるためにエースは嶋崎を救う。水面に自分が父親を見捨てたという後悔を負わせないためなのだろうが、だったら最初から水面に選択させる必要はあったのか。

DVは苦しみを埋めるための暴力がやめられない依存症の一つであり、その治療は困難を極める。死を前にしたからといって、すぐさま反省できるほど簡単なことはない。いや、反省していても自分の力では衝動が抑えきれなくなる病気だ。だから正直なところ、水面のためにケーキを作ったのも命拾いにしか思えなかった。

水面が生きてほしいと願っているのだから命を救うまではいいが、右手まで治してあげたのはなぜか。本当に罪を償わせるのであれば、パティシエにとっての命である手がうまく使えないという苦しみをもってしても、それによって誰かを苦しめることなく生きていく道を島崎に与える必要があったように思う。今回は残念ながら、色んなモヤモヤが残ってしまった。

(文:苫とり子)

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