インタビュー

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2023年02月26日

豊嶋花インタビュー:映画『ちひろさん』で“本音を言えない”女子高生を熱演「有村さんは、優しすぎます」

豊嶋花インタビュー:映画『ちひろさん』で“本音を言えない”女子高生を熱演「有村さんは、優しすぎます」

15歳にしてキャリアは14年目。1歳の頃に出演した「いないいないばあっ!」(NHK)をきっかけに、子役としてドラマや映画の世界へ足を踏み入れた役者・豊嶋花。連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(2012)「あまちゃん」(2013)、そして大河ドラマ「八重の桜」(2013)にも出演しており、携わった作品は数えきれないほど。

2月23日(木・祝)に公開される映画『ちひろさん』では、有村架純演じる元風俗嬢のちひろさんと、少しずつ交流を深める女子高生・オカジ役を演じている。2023年大河ドラマ「どうする家康」でも、姫と、彼女に仕える侍女の間柄で共演している豊嶋。10代とは思えない落ち着きと風格を持っている彼女に、改めて仕事への向き合い方を聞いた。

台本を覚えるコツは「とにかく散歩」

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――『ちひろさん』で豊嶋さんが演じている女子高生・オカジは、家族や友人に対しては本音を隠している反面、ちひろさんや小学生のマコトに対しては素を出せていますね。


豊嶋花(以下、豊嶋):そうですね、なかなか素を出せないことに悩んでいる子です。でも、ちひろさんやマコトの前では素直でいられる。台本はもちろん原作も読み込んで、その二面性を表現したいと思いました。ちひろさんたちと出会ってからの、オカジの前向きな変化を見てほしい、と。

――普段は、あまり役作りをしないそうですが?

豊嶋:特別なことはせず、今回のように原作がある場合は原作を読み込んで、あとは「散歩」をします。

――散歩、ですか?

豊嶋:私、歩きながらじゃないと台本を覚えられないんですよ。歩き回りながら読んだり、音声を聞いたりします。外だと危ないので、自宅の屋上とかで。それって、もしかして散歩って言わないですかね?(笑)

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――今泉監督からは、オカジを表現するにあたって、演出の指示などはありましたか?

豊嶋:具体的に「こうしてほしい」といったお話はなく、基本的に私に任せてくださっていました。委ねられるのは、プレッシャーもありましたけど……これまでやってきたことを信じて、できることをやるだけなので。

今泉監督は、現場で一緒に、そのシーンについて考えてくださることが多かったです。

――今回のように、原作がある場合は必ず読むのでしょうか。

豊嶋:絶対に読みます! 本当は、原作がないほうが自分でキャラクターを作りやすいので、より演じやすさが増すんですけど。

お仕事に関係なく、普段から漫画を読むのが好きなので、サイコパス系の漫画とかをよく読んでます。いろいろな場所でお話させてもらってるんですが、サイコパスや殺人鬼の役をやりたいんです。

現場で痛感する、有村架純の優しさ

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――豊嶋さんが演じられたオカジのように、普段、本音を言えないと感じるときはありますか?


豊嶋:私、人から頼まれるのが好きで。イエスマンなんです。何か頼まれたり、「一緒にやらない?」って誘われると断れないタイプ。自分が思ったことはちゃんと言えるんですよ、「こうしたらいいんじゃない?」とかは。でも、頼まれちゃうと弱いんです。「……やる」って言っちゃいます(笑)。

――ご自身で「姉御肌なところがある」とおっしゃってましたもんね。本編でも、子役の嶋田鉄太くんが演じるマコトとのやりとりが可愛らしかったです。彼の頼みを聞いてあげるオカジのシーンもありました。

豊嶋:オカジがマコトに勉強を教えてあげるシーンについては、ほとんどアドリブです。ある程度の流れは決まっていたんですけど、マコトが適当に答えを書き入れちゃうシーン以降からは、ほとんどアドリブで。鉄太くんは自然な演技ができる子なので、素で話してる感じがそのまま出てると思います。

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――ちひろを演じている有村架純さんとは、現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」でも共演されていますね。

豊嶋:「どうする家康」の現場では、有村さんとふたりでお話する、というよりは、皆さんで一緒にお話することのほうが多かったです。「まだ高校生なの!? わー!」みたいな(笑)。

私が演じたのは、有村さん演じる瀬名の侍女・たねという役で、赤ちゃんをお守りするシーンが多かったんです。だから、撮影現場はけっこう大変でしたね。子役の子が泣いちゃったり、本番中に「ママー!」って叫んじゃったり。

『ちひろさん』の現場では、普段の何気ない雑談をしていることが多かったです。ふたりで海に足をつけるシーンがあるんですけど、「先にオカジに上着を持ってきてあげて」とか、お湯を入れたバケツを先に差し出してくださったりとか。有村さんがあまりにも優しすぎて、いやいやいや……って感じでした。

――有村さんからは、プレゼントをいただいたとも聞きました。

豊嶋:私の誕生日に、Tシャツだったり他にもいろいろなプレゼントをいただきました。サプライズでお祝いしてくださったんです。有村さんからは「Tシャツ、部屋着とかに使ってね!」って言われたんですけど、とてもとても……使えないよ……ってなっちゃいました(笑)。

演技への意識が変わった瞬間

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――豊嶋さんは、すでに「梅ちゃん先生」「あまちゃん」「ごちそうさん」などの“朝ドラ”、さらに「八重の桜」などの大河ドラマに出演されていますね。当時は5〜6歳くらいだったとか。


豊嶋:当時のことは、まったく覚えてないんです。大河ドラマに出ることがどれほどすごいことなのかも、わかっていませんでした。お家のなかはお祭り騒ぎだったと思いますが、当の本人は「何のことやら?」って感じで。

――演技することを「仕事」だと捉えるようになったのは、いつ頃ですか?

豊嶋:小学5年生のころ、「トットちゃん!」(テレ朝系)というドラマのオーディションに出たんです。そのころから「やるぞ!」って、意識が変わったんだと思います。

――何か決め手はあったんですか?

豊嶋:どうしてもトットちゃんをやりたくてしょうがなかったんです。だから、役作りを徹底しました。「お仕事!」っていう強い自覚はなかったんですけど、「これ(演技)をずっとやっていくぞ」って思ったのを覚えてます。

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――その決意が、少し揺れたことはあったんでしょうか?

豊嶋:もちろん、ありました。勉強とお仕事との両立について、どうしようかな……と悩んだ時期も。でも、いまは両方頑張りたいと思ってます。

この先も、どうしよう……って迷うことはあるはずなので、そんなときは、周りの人の意見を聞きたいです。「こういう状況なんだけど」って、信頼している幼馴染や大切な人に相談したい。身近に「それは一時的な感情かもしれないよ」って、ズバッと言ってくれる人もいるので。

――これまで、どんなときに相談することが多かったですか?

豊嶋:最近だと、ドラマ「瑠璃も玻璃も照らせば光る」では撮影期間が1週間くらいしかなくて、結構タイトだったんです。終わったときの達成感はもちろん、楽しかった! って気持ちもあったんですけど、同じくらいに「これから、大丈夫かな……」って思いもありましたね。

でも、「しんどかったよ〜」って周りに助けを求めて、慰めてもらえば、その気持ちがスッと落ち着くことも多くて。これからも私は、人に頼り、頼られる生き方でやっていきたいなと思ってます。

人生最大のゴールは「幸せな結婚」だけど……

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――『ちひろさん』には、有村さん演じるちひろさんを筆頭に、マイペースで一癖ある大人がたくさん出てきます。豊嶋さんがこれまで接してきた大人で、「この人は変わってる!」と思う方はいましたか?


豊嶋:そうですね〜……やっぱり、祖父ですね。とにかく、めちゃめちゃ変わってます! 面白いし、お小遣いもくれるし(笑)、家族を大切にしてくれるし、大好きなんですけど。でも、会うたびに「変わってるなあ〜」って思います。

祖父は釣りが好きで、よく兄と一緒に連れて行ってくれました。釣りをするとき、針にエサの虫をつけないといけないじゃないですか? 私、絶対に触れなくって。針のほうを手に持って虫を付けてたら、おじいちゃんにギュウッて押し付けられちゃって。「ぎゃー!」って手を払ったら、私の持ってた針がお兄ちゃんの手に刺さっちゃったんです(笑)。

――目に浮かぶ光景ですね。豊嶋さんは、お休みの日もアクティブに過ごされてそうですが。

豊嶋:ひとりでいることは滅多になくって、絶対に誰かと会ってます。先日も、体調を崩しちゃったんですけど、大人しくベッドに寝ている間がヒマでヒマで……。

――人と話すのが好きなんですね! 初対面でも物怖じしないタイプですか?

豊嶋:人と話すことが好きなので、初対面でも緊張はしません。コミュニケーションが大好きなのは、小さな頃からこのお仕事をやらせてもらったおかげで、身についたものだなと思います。

――すでに多くの映画やドラマに出演されている豊嶋さんにとって、これからの「理想の大人像」があったら教えてください。

豊嶋:直近の目標は、お仕事のことです。アカデミー賞を受賞したい、そして、同じお仕事をしている仲良しの子と、同じタイミングで新人賞を受賞しようねって約束してます。人生最後の大きなゴールは……幸せな結婚をして、子どもを産んで、子育てをすることですかね。

(ヘアメイク=石川奈緒記/スタイリスト=岡本純子/撮影=渡会春加/取材・文=北村有)

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