映画『わたしの幸せな結婚』見逃さないでほしい“7つ”の魅力
“闇”の今田美桜が光を得ていく様子が凄まじい
今田美桜といえばもともと大きな目が特徴的で、華やかでおしゃれな雰囲気を持った人、というイメージがあった。
昨年主演したドラマ「女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」では、田舎から出てきたおかっぱ頭の主人公・麻里鈴(まりりん)を演じて視聴者を驚かせたことも記憶に新しい。そして『わたしの幸せな結婚』で演じた美世で、また新たな今田美桜を知ることができた。
美世はあまりに気の毒すぎる身の上で、幸せになることなど諦めて生きてきた女性。両親は政略結婚だったが、母は美世が幼いうちに他界。すると父は元々恋人だった女性と再婚し、妹が生まれた。継母・香乃子(山口紗弥加)は一度は自分たちの仲を引き裂く原因となった美世の母をひどく憎んでおり、その娘であり母に似た美世のことも憎んでいた。妹の香耶(髙石あかり)は幼い頃から両親に可愛がられわがままに育ち、美世を使用人同然に扱う。
単に使用人扱いというだけではなく、気に入らなければ熱いお茶を顔にかけたり暴力をふるったり、もはや虐待だった。父である真一(高橋努)も、見て見ぬふり。もともと美世の母と結婚したのは彼女が異能の家系だったためで、大金を積んだにもかかわらず異能を持っていなかったのも、美世が冷遇された一因らしい。
そんな風に扱われてきたため、美世は化粧っ気もなく表情は暗く、手はあかぎれだらけ。目には光がなくて真っ黒で、話し方もビクビクしている。「これが今田美桜なのだろうか?」と思うくらい闇のオーラをまとっていた。
そんな美世が清霞と出会い、清霞やゆり江と交流していく中で少しずつ明るい表情になっていく、人間としての尊厳を取り戻していく様子には心を打たれるものがあった。見た目や表情の変化だけでなく、人生を諦めておりすぐに謝罪や諦めの言葉が出ていたところから、強い意志を持つ人に変わった。日陰で枯れそうになっていたお花が日向に移され、水も与えられて綺麗なお花が咲くようになるのを見ているようだった。
捨て犬や捨て猫がいい飼い主と出会った前後の写真を見ると全く表情が異なるという話や、植物も声をかけて育てると咲き具合が異なるという話がある。人間もまた、愛情や優しさを受けるとこんなにも変わるのだなと伝わってきて愛おしい。
この変化を観客が実感できたのは、今田美桜が役と真剣に向き合い演じ分けたからだ。彼女はクランクアップの挨拶で「苦しいことがたくさんある女の子だったので……」と涙をにじませており、美世と全力で向き合ったことを物語っていた。
目黒蓮vs渡邊圭祐の“強さ”
目黒演じる清霞と渡邊演じる新は対立関係になる。この2人が対峙するたび、顔面vs顔面でめちゃめちゃ絵になるし美しいし強い。2人とも180cm越えで、いろんな意味で迫力がある。ぜひ大画面で観ていただきたいvs構造である。それにしても渡邊圭祐は、一見いい人だけど絶対何か裏がある、胡散臭いライバル役が似合うなぁ……。『わたしの幸せな結婚』のファンタジー要素にもハマっていた。今年で30歳を迎えるが、今後も実写化作品に出てほしい。
一人ひとりの芝居が素晴らしい
目黒や今田はもちろん、脇を固める俳優たちの演技も素晴らしかった。
五道を演じた前田旺志郎の演技がよかった。「主人公の気のいい友達」役が多い印象がある中で、この作品でも部下ではあるが友人のような関係でもある。とあるシーンの彼の演技には涙したほどだ。
美世の継母を演じた山口紗弥加の恐ろしさもよかった。ここ数年、ぶっ飛んだ役にも定評がある彼女。個人的にはドラマ「モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-」の入間瑛理奈並みに怖くて素晴らしい。行動もだが、目の“いっちゃってる”感が、なかなか他でお目にかかれないレベルなのだ。
清霞や美世を温かく支えるゆり江を演じた山本未來の存在感は、不穏にうごめくストーリーの中で数少ない安心できる部分だった。なにわ男子・大西流星が演じた堯人(たかいひと)は役どころも立ち位置も難しかったのではと思うが、感情の揺れがよく伝わってきた。
また、宮内省長官・賀茂村を演じた津田健次郎は(知っていたけど)声がいい……彼の声がバックになるシーンがあり、思わず聞き入ってしまう。そして尾上右近の、早々に「この人なんか裏があるな」とわかる胡散臭い雰囲気。さらに公開前は未発表だった、美世の母親役である土屋太鳳にもとても説得力があった。
一人ひとりのお芝居の力により、『わたしの幸せな結婚』はよりリアルで重厚感のあるものとなったと思う。
主題歌のSnow Man「タペストリー」が響かせる余韻
エンドロールで流れる主題歌である、主演した目黒の声で始まり目黒の声で終わる「タペストリー」が本当に物語に合っている。
物語の余韻を感じながらあらためて涙した人も多かったのではないだろうか。そしてSnow Manのファンの方は、最上部に「目黒蓮(Snow Man)」の名前が出たことに感動したと思う。
一度観てほしい、何度も観たくなる作品
さまざまな要素が入りつつも、違和感なくひとつの作品として成立しており、恋愛ものとしてもヒューマンドラマとしてもバトルファンタジーとしても素晴らしい『わたしの幸せな結婚』。先入観にとらわれず、一度観てみてほしい。また、一度観ると要素の多さゆえに再確認したい部分も出てくるし、彼らの表情や戦いをもう一度観たくなる。筆者も近々、おかわりしに行きたいと思う。
(文:ぐみ)
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