映画コラム

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2023年03月18日

『シン・仮面ライダー』賛否両論になる「5つ」の理由|PG12指定だが子どもが観てもいいか?

『シン・仮面ライダー』賛否両論になる「5つ」の理由|PG12指定だが子どもが観てもいいか?



前置き3:残酷さや怖さも「仮面ライダー」シリーズにはあった



さらに、これまでの『シン』シリーズとははっきりと違う点がもうひとつある。それは、PG12指定(小学生には保護者の助言や指導が必要だが誰でも鑑賞可能)のレーティングがされており、直接的な殺傷と流血の描写があること。そして、個人的にはその残酷さも「仮面ライダー」の“らしさ”でもあると思えた。

そもそも、初代「仮面ライダー」は、変身ヒーローものであると同時に「怪奇ホラー」のテイストが強かった。「闇」を基調とした画は大人が観ても恐怖を覚えるものであるし、怪人の造形もグロテスクであるし、はっきりと死人も出る。その潜在的、あるいは直接的な恐ろしさが今回の『シン・仮面ライダー』でも引き継がれていた、いやグレードアップされていたのだ。

(C)2007 「仮面ライダーTHE NEXT」製作委員会 (C)2007 石森プロ・東映

それでも、初代「仮面ライダー」は劇中に子どもの活躍もあり、子どもにこそ向けた作品だと十分に思えた。だが、2007年の映画『仮面ライダー THE NEXT』はその初代「怪奇ホラー」らしさを強調し、こちらもPG12指定となっていた。

他にも、2016年よりAmazonプライムビデオで配信の「仮面ライダーアマゾンズ」も残酷な描写があり、2022年より配信の「仮面ライダーBLACK SUN」に至ってはR18+指定で完全に大人向け。「仮面ライダーW」の続編であるコミックおよび、2022年に放送とU-NEXTでの配信がされたアニメ「風都探偵」もセクシーな表現や流血表現があった。

「仮面ライダー」シリーズは、そうした純然たる「子ども向け特撮ヒーローもの」から外れた作品も展開していたのだ。このことは事前に知っておいた方が良いだろう。

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前置き4:グロテスクさに必然性はあるが、やはり親御さんの判断に任せたい

『シン・仮面ライダー』はPG12指定されるほどの残酷描写にこそ、物語の上の必然性があるし、むしろ子どもにこそ観てほしいと思う理由でもあった。これも詳しくは後述するが、本作は「暴力を描いてこそ、伝えられるものがある」と改めて思わせてくれたのだから。

持論ではあるが、人を殴ったり蹴ったり、それこそ刃物を持って戦ったりしても、一滴の血さえも出ないというほうが逆に子どもに見せる作品として危険であると思う。現実では、尋常ではない暴力を振るえば、血は出るし、生命を奪うこともある。その恐ろしさを、この『シン・仮面ライダー』は突きつけている。子どもこそ、創作物から暴力の危険性を学んでもいいとも思うのだ。

とはいえ、グロテスクな描写を子どもに見せてもいいかどうかというのは一枚岩ではなく、議論の余地がある。実写ならではのリアルさがあるため、アニメ「鬼滅の刃」シリーズよりも刺激は強いだろうし、鮮血が飛び散るだけでなくはっきり「潰れる」描写もあるというのもショッキングだ。

その殺傷と流血のシーンの数自体はそれほど多くはない。だが、個人的にもあまりに小さい子、特に未就学児のお子さんにはさすがに薦めないし、やはり最終的には親御さんそれぞれの判断に任せるべきところだろう。

また『クレヨンしんちゃん』とのコラボは幅広い年代層にも届けるための宣伝として理解はできるし、実際に観ても面白かったのだが、このために気軽に劇場で観て悪い意味でショックを受けるご家族の方がいるのではないかと心配してしまう。



いずれにせよ「PG12指定納得の残酷な描写がある」というのも、この『シン・仮面ライダー』を観る前に、やはり共通認識として知っておくべきことだろう。R15+指定になるほどではないとはいえ、大人でもグロいのが苦手だという方は、ある程度の覚悟を持ってから観てほしい。

前置き5:主要豪華キャストには賞賛の声が相次ぐ

賛否両論の理由が多岐に渡る本作だが、概ねほぼ賞賛方向に傾いているポイントもある。それは豪華俳優陣の好演とハマりぶりだ。

常に憂いを帯びた印象の池松壮亮、凛とした佇まいの浜辺美波、ニヒルな印象の柄本佑など、俳優それぞれの持ち味が存分に生かされている。手塚とおる西野七瀬など悪役サイドの俳優もとても楽しそうに演じられていたし、森山未来の存在感に圧倒される場面も多かった。

ちなみに、本作の予想外のサプライズには、現時点で公式に明かされていないシークレットキャストにもある。もちろん知った上で観てもいいのだが「ええっ!?この人がこの役で出てくるの!?」な感じも含めて楽しめるし、パンフレット(ネタバレ満載)を後から読んで「この人はこの役だったのか!」となるのも面白い。そのため個人的にはぜひ知らないままで劇場へと足を運んでほしい。ただ、「この人がこんな扱いなの?」ということが、これまた賛否両論の理由になっている気もするが……。

すっかり前置きが長くなったが、ここからは少しだけ本編の内容に触れつつ、賛否両論になる理由を解説していこう。

もちろん決定的なネタバレやサプライズは記していないつもりだが、初代「仮面ライダー」から変わったポイントや、序盤の展開、後半のアクション要素については触れている。公式にはあらすじすら明かされていない現状もあるため、予備知識なく観たい方は先に映画館へと駆けつけてほしい。

※以降は、予告編や公式サイトでなどでは明かされていない、初代「仮面ライダー」から変わったポイントや、序盤の展開、後半のアクション要素について触れています。

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©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

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