続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年04月05日

「らんまん」坂本龍馬に大政奉還、大河ドラマかと思った <第3回>

「らんまん」坂本龍馬に大政奉還、大河ドラマかと思った <第3回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第3回を紐解いていく。

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龍馬の名台詞が炸裂

初回、第2回と主人公・万太郎(子役:森優理斗)が「生まれてこんほうがよかった」と悩んでいましたが、第3回、天狗こと坂本龍馬(ディーン・フジオカ)がそのネガティブな悩みを一刀両断。

「坊 生まれてこん方が よかった人らあ 一人もおらんぜよ いらん命らあひとつもない この世に同じ命はひとつもない みんな自分の務めを持って生まれてくるがじゃき」

「己の心と命を燃やして 何かひとつことを成すために
生まれてくるのじゃ 誰に命じられたことじゃない 己自身が決めてここにおるがじゃ」

(坂本龍馬)

そう言って、天狗は万太郎の望みを問いかけます。
問いかけによって、万太郎の心に眠るものが引き出され、生きる力が沸いてきます。

万太郎に力を与えた龍馬に迎えが来て、風のように去っていきます。

もし自分に息子がいたら……と万太郎にいたかもしれない幻の子どもの姿を見た龍馬の心に、命を燃やして自分のやるべきことをやっていながら、少しだけ心残りもあるのかなという、人生のままならなさを感じました。

ディーン・フジオカさんは外見も語り口もソフトだけれど、うちに熱いものを抱えたスケールの大きな人物の役が似合います。

迎えに来た仲間が「坂本さん」と呼んで、視聴者は龍馬だとわかりますが、万太郎は、天狗が時代の変わり目に重要な役割を果たす坂本龍馬だとは気づいていません。

時代は大政奉還に向かっているところです。

龍馬が去ったあと、ヒサ(広末涼子)たちが迎えに来て、そこで「バイカオウレン」を見つけます。そのときはまだ、花の名前はなく、ヒサはこれが一番好きな花だと愛でます。
 
小さく華奢で日陰にひっそり咲いているけれど強い、愛らしいこの白い花が、「いらん命らあひとつもない」の象徴になります。

言葉だけだとやや形骸化した印象もあるところ、花と龍馬に託したことで説得力ががぜん増します。

万太郎が悩みを語るとき、龍馬の手のひらに自分の手を重ねた仕草も、5歳の幼い少年が、たくましい大人の男に甘えたい心情が伝わってきて印象的でした。お父さんがいなくて寂しいでしょうし。この独自な表現(演技)もひとりひとりの命の証です。

また、タキ(松坂慶子)が万太郎に「蔵人」という労働者を大切にする精神を説きます。蔵人もまた、数多ある花のひとつなのです。

万太郎は自分の命の大事さを知ったと同時に他者の命の大事さも知りました。蔵人の歌を褒めるところも”実”があります。

長田育恵さんの脚本が達者だと思うのは、万太郎が龍馬と出会い、自然を感じて、生きようと勇気づけられ、自分のまわりの人達の存在にも思いを致したとき、ひとつの命が終わりに近づいていることを描いていることです。祖母のタキは峰屋のためにまだまだ生きる気満々であることと対称的に……。

しなっとしてきた花の絵を書くことで、万太郎はこの世に残そうとします。
その絵を贈られたヒサは「これやったら枯れんね」と喜びます。

この花の絵は墨をうっかりこぼしたところもうまく生かして描かれています。万太郎は「いらん命らあひとつもない」ことをさっそく実践しているのです。

蔵人の話に、さらにこの描写で、物語の厚みが一段と増しました。
これを最後まで続けてほしい。
きっと長田さんならやってくださると信じています。

「お母ちゃんきっと元気になるき」と今日は万太郎の元気な笑顔で終わりました。


【朝ドラ辞典 2.0 ディーン・フジオカ(でぃーん・ふじおか)】
「あさが来た」(15年度後期) 五代友厚役「らんまん」(23年度前期) 坂本龍馬役 「あさが来た」の五代役でブレイク。大河ドラマ「青天を衝け」(21年)でも再び五代を演じて話題になった。

(文:木俣冬)


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