「らんまん」弥之助の「昔の誰ぞを思い出す」とは誰なのか<第105回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第105回を紐解いていく。
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華やかな菊比べ
岩崎弥之助(皆川猿時)の発案で、菊づくしの宴が行われることになり、寿恵子(浜辺美波)は万太郎(神木隆之介)に菊をとってきてくれないかと頼む。「万ちゃんの土俵」が来た! と九兵衛(住田隆)とりん(安藤玉恵)は盛り上げますが、「草花に優劣をつけるがは性にあわんけんど」とためらいながら「それが金になるがやったら」と引き受けます。
寿恵子が大事な「八犬伝」を質に入れたことが相当堪えたようで、「八犬伝」を二度と手放さないようにお金を作ることに協力しようとします。
たぶん、このあたりは、ドラマのオリジナルエピソードだと思いますが、単なる愛妻家だったり、善人だったりするのではなく、万太郎の心が動くのが、「八犬伝」という寿恵子にとっての初心にであることです。
万太郎が、子供の頃に、植物を見て心惹かれて、そのときの思いを失わずにやっているので、他者の初心に反応するのでしょう。田邊(要潤)に対してもそうだったと感じます。万太郎は常にあなたの心のど真ん中にあるものは何かを問いかけてくるのです(だから「草花に優劣をつけるがは性にあわんけんど」「それが金になるがやったら」と理想と現実がズレていてもそこは大目に見るしかないでしょう)。
万太郎の本質が、菊づくしのために採ってきた菊ノジギクに現れています。
菊づくしの宴はお料理も菊を模したものばかり。
宴たけなわ。菊の品評会がはじまります。
皆、めいめい、華やかな菊を持ってきて、美辞麗句で紹介しますが、寿恵子が持ってきたのは地味なノジギク。
「貧相」と軽んじられそうになりますが、弥之助は寿恵子の話に耳を傾けようとします。
寿恵子は万太郎の受け売りのノジギクの蘊蓄を語ります。
菊はもともと中国のもので日本で品種改良がされました。でも日本で自生し人の手の入っていない菊がある、それがノジギク。要するに野菊です。
日本の菊のオリジン。シダが植物の始祖にして永遠と田邊が言っていたことと同じ感覚です。そして、寿恵子のオリジンは「八犬伝」。
みんなの心にあるオリジンとはなにか。それを忘れていないか。
ノジギクは弥之助ほか偉い人たちの心にも刺さったようで、これは寿恵子が500円ゲットかと思いきや、優勝は、菊千代(華優希)の菊でした。
仲居頭マサ(原扶貴子)ははじめから菊千代に決まっていたと言い、自分はちゃっかり、心付けをがっぽり稼いでいました。
弥之助はやっぱり色恋優先なのか…と思わせて、300円でノジギクを買い取るとみえ(宮澤エマ)に申し出ます。もしかしたら、事前に語られていたように、この世界のしきたりで、芸者を立てたのかもしれません。無礼講の体(てい)でしたが、いきなりど新人の仲居が優勝するのは、いろんな人たちの手前、よろしくないでしょう。
弥之助の言う「昔の誰ぞを思い出す」の誰ぞとは誰でしょう。同じ土佐出身の坂本龍馬でしょうか。弥之助の兄・弥太郎は龍馬と関わりがあったとか。弥之助にとっても同郷ですから、幕末の風雲児には何かしら思いはありそうです。龍馬もまた、新しい時代を拓こうとしたオリジンのひとりなのです。
(文:木俣冬)
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