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「かしましめし」第2話:心の音が騒がしくてお腹が減る、だから一緒にご飯を食べよう

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おかざき真里の同名漫画を原作としたテレビ東京のグルメドラマ「かしましめし」が放送スタート。前田敦子、成海璃子、塩野瑛久が演じる、人生につまずいたアラサー男女3人がどんな日も美味しく“かしましく”ご飯を食べる模様を映し出す。

本記事では、第2話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

「かしましめし」第2話レビュー

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「かしましめし」を観ていたらお腹が減る。もちろんドラマに登場する気張らない料理があまりにも美味しそうだから、というのはあるけれど、多分それだけじゃない。

胸がちくりと痛んだり、胸にブワッとした喜びが広がったり、切なくて胸がキュッと締め付けられたり。千春(前田敦子)、ナカムラ(成海璃子)、英治(塩野瑛久)の日常がゆっくり丁寧に紡がれていく本作では、そうした自分の心の音にいつもより意識的になる。

だから観終わった後には心地良い疲れでグッタリしていて、自然とお腹が空くのだ。なんて、健康的なドラマだろう。

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そんな本作の第2話では千春たちの同居生活が始まった。引越しを無事に終え、卓上フライヤーで好きな具を串に刺して揚げて食べる3人。思えば、彼女たちが囲む食卓に並ぶのはこういうアレンジの効くメニューが多い。

一緒に食べているけど、具材や味はちょっとずつ違う。なんだかそこに、お互い干渉し合わない、だけどゆるく依存し合っている3人の関係性が現れているような気がした。

憧れの会社にデザイナーとして雇われるも、上司からのパワハラにより心が折れて退職した千春。同じ部署の婚約者・志村(白石隼也)が別の女性を妊娠させたことから、婚約破棄したナカムラ。同棲している恋人の辰也(吉村界人)と音信不通中の英治。

それぞれ色んな思いを抱えてはいるが、変に改まって気持ちを打ち明けたりすることはない。ナカムラが言うように、辛かったことを人に説明するのって結構しんどい。説明しながらもう一度傷ついた思い出を再体験しているような気持ちになるから。だから、話したいなら聞くけど話したくないことは話さなくていい、という彼らのスタンスにとても安心感がある。

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一緒にお花見をしに来たのに、互いの知り合いを見つけて自然とバラバラになるのもまた千春たちらしい。家族に見せる顔、職場で見せる顔、友達に見せる顔、好きな人や恋人に見せる顔など、人にはたくさんの顔がある。しかも、家族に見せる顔は職場の人には見られたくないし、職場で見せる顔は友達には見せられなかったりするもの。

だから、それを察してスッといなくなる。一見冷たいように感じられるかもしれないが、千春たちの関係はそういう細やかな気遣いで成り立っているのだ。この人は自分を故意に傷つけたりしない、自分に優しい人。そう信じられる相手が家に帰ったら待っていて、一緒にご飯を食べられる歓びにこの作品は溢れている。

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春。千春たちの新しい日常が、草木が芽吹くように少しずつ動き出す。

「君のその作品は誰のために作るの?俺はね、その中に尊いものがあると思ってる」という蓮井(渡部篤郎)の言葉に“上司からの期待に応えられなかった”という不当な罪悪感に苦しめられていた千春の心は少しだけ軽くなった。

ナカムラは元婚約者の志村に水をぶっかけ、桜の下で田口(倉悠貴)と出会う。社会参加のつもりでやってるセックスを「ごめん、今日はちょっとダメかも」と断れる相手。

冒頭でも書いたように、私たちは良い意味でも悪い意味でも感情が騒がしい日々を生きている。それを自分の中から外に出したい時も出したくない時もあるけれど、とりあえず受け止めてくれる誰かがいるというのはやっぱりいいものだ。

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ただ、そういう平和な日常をいともたやすくぶっ壊してしまう人もいる。連絡がつかなかった英治の恋人・辰也が突然帰ってきた。「スーツなんて似合わねえよ」と辰也は、英治が外で身に纏うものを遠慮なく剥いでしまう。その怖いもの無さが時に心地よく感じてしまえるから、人は厄介だ。怖いものがないから、その人は自分のことも簡単に切り捨ててしまえるのに。

「ご飯を作るのも食べるのも面白くて、もうずっとこのまま続くんじゃないかと思ってた。まさかあんな風に終わってしまうなんて思ってもいなかった」

そんな千春の台詞から漂う不穏な気配は、どうか気のせいであってほしい。

(文:苫とり子)


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