劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』で注目したい“4つ”のポイント

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2021年7月期にTBSの日曜劇場枠で放送された、鈴木亮平主演のドラマ「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の劇場版が4月28日(金)に公開となった。

オペ室を搭載した大型車両(ERカー)で重大事故・災害・事件の現場に駆け付け、“一人も死者を出さない”という使命のもと、自らの危険を顧みず負傷者を救い出す都知事直轄の救命医療チーム“TOKYO MER”。

ドラマの最終回から2年後が舞台となる本作の見どころを紹介したい。

※本記事では劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の一部ストーリーに触れています。未鑑賞の方はご注意ください。

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「待ってるだけじゃ救えない命がある」変わらぬMERの使命



今回の映画では、横浜ランドマークタワーで爆発事故が発生。上層階に取り残された193名を救うミッションがTOKYO MERに課せられる。

そんな前情報をチェックしていただけに、映画が始まって早々、大スケールで映し出される飛行機事故の現場に驚いた。そこには、ためらいもなく燃え盛る航空機内に入っていき、救助に当たる喜多見(鈴木亮平)たちの姿が。

そして、すぐにオペしなければ助からない患者をERカーに乗せ、今にも爆発しそうな機体から慎重に退避していく一同。自分たちも爆発に巻き込まれて死ぬかもしれない——普通ならば、そんな最悪の事態が頭をよぎって手術どころじゃないだろう。

しかし、トンネルの崩壊事故や凶悪犯による立てこもり事件、山中の遭難事故、夏祭りでの爆発事故など、数多くの修羅場をくぐり抜けてきただけある。危機管理対策室から「危険だ、急いで退避しろ」と無線が聞こえてきても一切動じることなく、患者を救うことに全集中を注ぐ。

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それは喜多見らと共に現場で救助に当たってきたレスキュー隊員たちも同じ。千住隊長(要潤)の指揮のもと、彼らが全力でサポートしてくれたおかげでMERは無事に爆発から難を逃れる。

ドカーン!!と大きな音を上げ、爆発する機体。本作に、“嵐の前の静けさ”みたいなものはない。戦隊ヒーローのようなTOKYO MERが帰ってきた。そんな高揚感とともに物語は幕を開ける。

医療戦隊ヒーローのあり方に疑問を投げかける新キャラたち

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でも、私たちはどこかで麻痺していたのかもしれない。ヒーローはいつ、いかなる時でもみんなを救ってくれる。それが通常の光景になってくると、何やらヒーローが超人的な存在に思えてくる。

だけど、ヒーローだって人間だ。皮膚が切れたら血が出るし、足が折れたら骨がくっつくまでに時間がかかる。そしてもちろん、死ぬのが怖いという恐怖心も持っている。そんな当たり前のことに気づかせてくれるのが、本作で初登場となる新キャラクターたちだ。

まずはTOKYO MERに新たに配属となった研修医の潮見。SixTONESのジェシーが演じる彼は、いわば全ての人間に備わっている“死に対する恐怖”の体現者だ。どんな危険な現場でも救命処置を施す手元が狂うことのない喜多見たちを信じられないといった表情で見つめ、死ぬかもしれないという恐怖に慄く。

そんな潮見の新鮮かつ、当然のリアクションは私たちに初心を思い出させてくれるとともに、この映画で初めてTOKYO MERに出会うという人たちの心に寄り添ってくれた。

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もう一人は、杏演じる医師の鴨居。彼女は、TOKYO MERを厚生労働省管轄の組織として取り込もうと目論む、両国大臣(徳重聡)肝煎りの救命医療チーム“YOKOHAMA MER”のチーフドクター。全国の政令指定都市にMERを展開するため、TOKYO MERを去ることになった音羽(賀来賢人)の元恋人でもある。

音羽と別れた後、海外で最先端の救命医療を学んだ鴨居は「待っていなくちゃ、救える命も救えなくなる」というポリシーを持ち「待ってるだけじゃ救えない命がある」と危険極まりない現場に乗り込んでいこうとする喜多見たちにとって、ある種の障害となる人物。

だけど自分たちが危険をおかしたことで二次被害に繋がったり、それでもし怪我をしたり、最悪の場合、命を失ったら誰が負傷者の救命にあたるのか?という鴨居の考えも理解できる。

ランドマークの中層階から上層階へと火が徐々に燃え広がっていく中で、地上70階に避難した193名を救いに行かざる、行かざるべきか。そんな危機的状況の中で生まれるのは、“正義”と“正義”の対立だ。そこを“正義”と“悪”の対立に見せないところが信頼できる。

そのため鴨居も決して憎たらしいキャラクターではなく、杏は強い信念の中にもほんのりと迷いが感じられる演技で喜多見とはまた違ったヒーロー像を作り上げた。

鈴木亮平×仲里依紗が繰り広げる究極のラブストーリー

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一方、鈴木亮平が体現する完璧じゃないヒーロー像もいい。どんな時でも患者の前で取り乱さない喜多見は絶対的な安心感があるけれど、プライベート、特に妻である千晶(仲里依紗)の前では途端に頼りない姿を見せる。

国際医療機関の医師団に参加し、世界を飛び回る喜多見に千晶が愛想をつかす形で一度は離婚した二人。喜多見がテロ組織への関与を疑われたことで以前のように自由に海外渡航ができなくなったことから、今度こそ……と再婚の申し出を受けた千晶だったが、TOKYO MERのチーフドクターである喜多見は相変わらず忙しく、千晶が妊娠中であるにもかかわらず、ほとんど家に帰ってこない。

そう、喜多見は仕事人としては優秀だが、家庭人としてはちょっとダメなところもある。そのバランスを上手く保つのって案外難しい。少しでも多くの命を救いたいけれど、そのために家族を犠牲にしてもいいのか。

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そんな喜多見のジレンマはどんどん膨らみ、ランドマーク爆発事故の現場で最高潮に達する。上層階に取り残された193名の中に千晶がいて、喜多見は救助の現場でこれまでと同じくヒーローとして振舞うべきか、それとも愛する人を守りたいと願うひとりの人間として振舞うべきかという究極の選択を迫られるのだ。

2022年10月期のドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」(カンテレ・フジテレビ系)で長澤まさみ演じる主人公を精神的支配下に置く元彼でエース記者の斎藤を演じ、憎たらしくもその色気で視聴者を虜にした鈴木亮平。今年1月期のドラマ「大奥」(NHK総合)で気高く妖艶だが、その胸の内に壮絶な痛みを抱える女将軍・徳川綱吉役で涙を誘った仲里依紗。

次々と爆発が起きる緊迫した事故現場を舞台に、圧倒的な演技力を誇る二人が魂をぶつけ合い、作り上げたラブストーリーはこの上なく見応えがあった。

“音羽”賀来賢人の切ない演技にも注目

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千晶が命の危険にさらされる中、MERメンバーの脳裏に浮かぶのはドラマ版の第10話で起きた悲劇。そう、喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)の死だ。TOKYO MERが当初から掲げてきた“死者ゼロ”という目標は「喜多見に世の中の不条理を教える」というテロリストの身勝手な思いにより打ち砕かれた。

大切な人の命を救えなかった痛みは、喜多見やMERのメンバー、そして少なからず涼香に惹かれていた音羽の胸の中から消えることはない。感情をあまり表には出さない音羽だが、あらゆる瞬間にその喪失感を覗かせる。ポーカーフェイスを崩すことなく、音羽がそこにはいない涼香に思いを馳せていることを伝える賀来賢人の“瞳”の演技に涙腺を刺激されっぱなしだった。



私たちは事故や災害のニュースで何十名、何百人という犠牲者が出れば衝撃を受けるが、死者1名という数字を見たときに驚くことは少ない。だけど、その1人は誰かにとってかけがえのない存在であること。その1人を失い、誰かが失意のどん底に落とされることのないように、医療従事者たちは日々戦っていることを本作は繰り返し、繰り返し伝えてくれる。

映画はそんな医療従事者たちをヒーローとして描きながらも、彼らにも大切な人がいて、彼らもまた誰かの大切な人であることを実感せざるを得ないラストになっていた。コロナ禍、自身も感染のリスクを負いながら、医療の最前線で感染者の治療にあたった医療従事者たちへのリスペクトに溢れたエンドロールまで、ぜひ席を立たずに見届けてほしい。

(文:苫とり子

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©2023劇場版『TOKYO MER』製作委員会

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