© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

高橋一生が醸し出す、“ノーブル”な魅力

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個人カウントで通算(声の出演等も含む)40本目の映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開された高橋一生

今や映画・テレビ・CMにと引っ張りだこの人気俳優の1人となりましたが、子役やティーンエイジャーの頃からの彼を知っている身からすると何とも不思議な気がします。

ARATA時代から追っている井浦新もそうですが、“世間が追い付いた瞬間”を見ているような気がするのです。

怪異譚としての映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

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映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、荒木飛呂彦による同題オールカラーコミックを原作としています。

原作はルーブル美術館で行われたBD(バンド・デシネ)の企画展の1つとして動き出したもので、それまで原典の「ジョジョの奇妙な冒険」サーガから派生する形で展開されて来た「岸辺露伴は動かない」シリーズの1つの到達点というべき作品でした。

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当然“ジョジョ”の世界観なので独特の勢いある絵作・擬音・ポージング・効果線など、時に劇画と言ってもいいハイテンションの物語が展開されていきます。

ただ、本作を映像にするには映像化には不向きなエッセンスをそぎ落とすことが求められました。結果、ドラマから始まった“実写の岸辺露伴”は低体温で時に淡々とした空気感の漂う怪異譚となりました。

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ここまで劇的なシフトチェンジがあってもちゃんと露伴の物語に見えるのは、原作の強さと何と言ってもこの難役を演じ切った高橋一生の存在が大きいと言えます。

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』でさらに露伴のパーソナルな部分が深掘りされるので、高橋一生ファンにはたまらない1本です。

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また原作では未登場である泉京香役の飯豊まりえが“映画全体の救い”と言っていいポジションを好演して、詳細はネタバレになるので伏せますが“美味しいところ”をさらっていきます。

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ブレイク後は個性派ヒロインの受け手に

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10歳の時にスクリーンデビューをしているので、もう芸歴30年を超える高橋一生。

彼のキャリアはバラエティ豊かという言葉でも足りないでしょう。時には声優としてジブリの『耳をすませば』や『シン・ウルトラマン』のウルトラマンの声までやってみせています。

かなりストレートなラブストーリーから、クセのあるミステリー・コメディ・時代劇も。『シン・ゴジラ』のオタク系官僚の印象が強いという方もいるのではないでしょうか?

最大のブレイクポイントは、2017年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の小野但馬守政次役になるのでしょう。この時すでに37歳ですから、遅咲きと見られても仕方がないかもしれません。(個人的にはずっと前から知っていたため、“やっと感”いっぱいでしたが)

ちなみに「おんな城主 直虎」の演出陣に『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の渡辺一貴監督がいます。

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名実ともにブレイクを果たした高橋一生は、一枚看板として作品の顔になっていきます。とはいえ単独でグイグイと前に出るのではなく、主演型女優の絶妙な受け手としてW主演的に作品を創り上げます。

組み合わせで見ると、以下のような“錚々たる面々”という言葉がふさわしい、見事なまでの並びです。

■映画
  • 『嘘を愛する女』長澤まさみ
  • 『九月の恋と出会うまで』川口春奈
  • 『ロマンスドール』『スパイの妻(劇場版)』蒼井優

■ドラマ

  • 「僕らは奇跡でできている」榮倉奈々
  • 「凪のお暇」黒木華
  • 「天国と地獄~サイコな2人~」綾瀬はるか
  • 「恋せぬふたり」岸井ゆきの
  • 「インビジブル」柴咲コウ(大河以来)
映画もドラマも一癖も二癖もある作品が並ぶ中で、登場するヒロインは曲者キャラクターとなるのですが、それでも高橋一生は臨機応変に対応しきっている上に、ただの引き立て役ではなくちゃんと主役として印象を残しています。

これはなかなかに難しいことですが、それを“簡単にさらっと”やって見せているところが高橋一生の凄さだと言っていいでしょう。

常に漂う“品の良さ”



高橋一生はこれまでの作品でバリバリのアクションの担い手から、謎を抱えたサスペンス的キャラクター、腹に一物抱えたダークヒーロー的な人物まで幅広く演じ分けてきました。

そのすべてに共通して言えるのは、常に“気品=品の良さ”や“知性”を感じさせるノーブルな空気感を醸し出していることでしょう。

男女の魂が入れ替わったり、犯罪者集団を捕まえるために犯罪者とコンビを組んだりと、冷静に考えればかなりすごい話の主役をやっていたりするのですが、彼が常に醸し出す“気品”や”知性“といったノーブルな要素のおかげで、ちゃんと物語を着地させてくれます。

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こういう要素は修練して得られるものではなく天然に身に着いてくるもので、それは何ものにも代えがたい天性の武器と言えるでしょう。

この品の良さがあった上で、先述の通り白さ(光属性)から黒さ(闇属性)、さらにはグレーなモノもこなしてくるのですから、よくよく考えると高橋一生は無敵感があります。

これだから、特異な能力を持った天才大人気漫画家という役どころにも説得力を持たせられるのでしょう。

文字通りの一枚看板作品『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』



『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』も、現代パートで飯豊まりえ、回想パートで木村文乃という主演型女優が登場しますが、本作は文字通り高橋一生の“一枚看板の主演作品”と言えるでしょう。2020年から3年かかけて露伴というキャラクターを作ってきただけあって、座長として物語の芯となっています。

実はこういう立ち位置の高橋一生はレアケースであると同時に、高橋一生という人をより深く感じられる絶好の機会と言えます。

当たり前と言えば当たり前ですが、ちゃんとルーヴルとフランスでのロケも行われています。

非常に贅沢で絶妙な妖しさに満ち満ちた世界観に、見事にはまる高橋一生を是非ご堪能ください。

(文:村松健太郎)

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