「日曜の夜ぐらいは...」第5話:すべてが順調、なのに“信用”のふた文字が怖すぎる
主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは...」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。
本記事では、第5話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「日曜の夜ぐらいは...」第5話レビュー
「3人でカフェを開く」という共通の夢を得たことで、以前とは打って変わり生き生きとし始めたサチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)。将来開くカフェの参考になる情報をラインで送り合う3人の楽しげなムードを彩るのが、スピッツの楽曲「空も飛べるはず」だ。
〈君と出会った奇跡がこの胸に溢れてる/きっと今は自由に空も飛べるはず〉
「日曜の夜ぐらいは...」第5話は、まさしくそんな風に“無敵状態”となった3人が次々と自由を手に入れていく回だった。
3人のうち、最も変わったのはサチだろう。以前とは比べ物にならないほどの行動力を見せ、相棒の自転車でどこまでも飛んでいくサチ。その結果、彼女は強力な助っ人を得ることとなる。カフェのプロデュース会社に勤務する賢太(川村壱馬)だ。
たまたま気になるカフェに視察に訪れていた賢太と、サチは恋人のふりをしながら店内で過ごすことに。そこでサチが自分のカフェに入ったことがきっかけで夢を抱いたことを知った賢太は協力を申し出る。思わず感動して泣いてしまう彼の純粋さはみね(岡山天音)とも共通するもの。親身な姿勢でサチたちの相談に乗ってくれる未来がいとも簡単に想像できる。それもサチの行動力の賜物であり、ほんの少しの勇気で世界は一気に広がっていくのだ。
彼女は同じように、ある日ぱったりと連絡が途絶えた翔子の元にも数時間かけてペダルを漕ぎ続ける。遺産放棄させることを目的に自分の機嫌を必死に取ろうとする兄・敬一郎(時任勇気)の態度に傷ついた翔子にとって、サチのその行動はありがたかった。
重いかもしれない、迷惑かもしれない。今までだったらそんなマイナスの感情が先行して動けなかっただろう。でも翔子と若葉の存在が彼女を自由にしてくれた。同じように若葉も理不尽な世界に別れを告げ、サチと翔子がいる東京で新たな生活を手に入れる。
若葉が散々自分たちに嫌がらせをしてきた職場の人たちに怒りをぶつける場面は『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)ばりに胸のすく思いがした。でも最後は「いいちくわぶを作り続けろ!」と喝を入れたのは、どんなに苦しくとも逃げずに戦ってきた彼女なりの矜持だろう。そんな若葉を讃えるように思い切り抱きしめるサチと翔子。邦子(和久井映見)が言うように、その姿は尊いとしか言いようがない。
若葉の決断が地元に固執していた富士子(宮本信子)の心まで自由にし、上京を決意させる。二人はサチが暮らす団地に引っ越してきて、その結果今度は人との関わりが希薄になっていた邦子の生活まで彩るのだ。
何もかも上手くいっている。いや、行き過ぎている。そのことに一抹の不安を覚えるのは私だけだろうか。明るい展開が続く一方で、同僚とのカラオケでみねが歌う中島みゆきの「空と君のあいだに」の歌詞が影を落とす。
〈空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る/君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる〉
みねにとっての“君”とはサチ、翔子、若葉のことである。職場の人間関係にどうしても馴染めず、どこか気持ちに空虚感を抱いている彼にとって今最大の幸せは3人の笑顔を見ること。そのためなら、自分が貯めたお金を彼女たちのカフ開店資金に差し出すことも厭わない。しかも、その信頼は一方的なものではなく、サチたちも彼を信頼して経理担当に任命する。
サチの父である博嗣(尾美としのり)や若葉の母・まどか(矢田亜希子)が彼女たちの財産を当てにしている今、彼らとは無関係のみねがお金を管理することが安心という見方もあるだろう。しかし、もしそれでも二人がお金を強奪しにきた場合、みねが何かを犠牲にしてでもそれを阻止しようとしそうで怖いのだ。
「人生は信用できる人と出会うための長い旅」と若葉は言う。たしかに大金を安心して任せられるほど信用できる人と出会いはそうそうなく奇跡に近いものである。だけど、信用は重い。それを預けられた側は嬉しい一方で、絶対に裏切ってはならないという重責を背負う。全員がそのことに無自覚な今の状況を手放しで喜ぶことはどうしてもできずにいる。
(文:苫とり子)
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