「らんまん」寿恵子の父(彦根侯ご家臣)の死因が衝撃的<第41回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第41回を紐解いていく。
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たんぽぽの綿毛が飛ぶ
第9週「ヒルムシロ」(演出:深川貴志)は、万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)、それぞれが、道に一歩踏み出し、種が蒔かれるところが描かれます。万太郎は、植物の雑誌を作ろうと考えますが、田邊教授(要潤)の許可をもらわないといけません。そのタイミングがなかなかなくて……。
屈託ない万太郎はすぐに話そうとしますが、田邊には適切な時期を見図うべきと藤丸(前原瑞樹)や波多野(前原滉)に止められ、なかなか言い出せません。きっとこれまでも、田邊の機嫌の良し悪しで理不尽にかなえられないことがあったのでしょう。
澄ました教授と、あたふたしている万太郎たちの対比が面白かったです。
万太郎と寿恵子、やがて家族になる主人公とヒロインの離れている状況を、並行して描くことは「エール」でもやっていましたが、「らんまん」は2本の道をつなぐ気配りがあります。
万太郎は雑誌を作ろうと動き出しているため、菓子を買いに立ち寄らなくなり、寿恵子は待ちぼうけしています。万太郎が話しかけていたタンポポに寿恵子は話しかけます。黄色から白い綿毛になったタンポポは、寿恵子が誰かに呼ばれたとき、ふわっと飛びます。
万太郎が「種を蒔く」と言った言葉と繋がっています。「蒔く時はぶわっとぶわっとたくさん飛ばさんといかんとです」。
この流れ、ひじょうに優雅です。
優雅だと感じるのはここも。寿恵子が高藤雅修(伊礼彼方)に呼ばれて、鹿鳴館の舞踏練習会に誘われたとき、彼女の父親の死因が語られます。
日本が西洋文化に移行していく中、慣れない習慣によって亡くなったことで、西洋を憎んでいるのではないかと高藤に指摘されますが、寿恵子はそうではないと否定します。
結果的に悲劇になったとはいえ、父は異文化を無理に押し付けられたのではなく、新しい冒険にまっさきに挑んだのだと寿恵子は肯定的に考えます。
一度はダンスは自分には無理と思った寿恵子ですが、父の考えを改めて思ったとき、自分も新たな文化に挑む決意をするのです。
「あさイチ」では朝ドラ主題歌特集を放送していて、あいみょんによる「らんまん」の主題歌「愛の花」の話題も取り上げられていました。その歌詞に、いまを憎んでいないというフレーズがあります。「憎む」という言葉は強めだと感じますし、何を憎まないかといえば、「いま」で、それもとても印象的。
生きていると、思いがけない流れが来ることがあります。そんなつもりじゃなかったことに戸惑ったり、抗ったりしますが、どんな状況でも絶望することなく、前を見る、ということなのでしょう。植物が踏まれることで、種を広げていくという万太郎の認識もまた、いまを憎まないことに繋がっています。
そんな話のとき、日本の酒蔵の景気が危ういという不穏な話題が持ち上がり……。
この構成、田邊教授だったら「完璧」で「美しい」と褒めてくれるのではないでしょうか。
(文:木俣冬)
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