「ハヤブサ消防団」第4話:中村倫也の魅力を最大限生かしたミステリー×コメディ×ラブ
本記事では、第4話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「ハヤブサ消防団」第4話レビュー
草原で白装束の子供たちがフルーツバスケットを楽しんでいる。平和な光景にもかかわらず、映画『ミッドサマー』を思わせるような狂気が胸に迫るその映像は彩(川口春奈)の夢だったーー。彩が目覚めると、そこは太郎(中村倫也)の自宅。二人は一夜を共にしたようで、少し気まずそうに言葉を交わす。あれれ、もしかして1話分見逃したかも?と誰もが一瞬思ったに違いない。「ハヤブサ消防団」第4話は二人の関係が急展開を迎えたところから始まり、その理由を頭から振り返る斬新な構成となった。そんな今回の見どころは、太郎と彩のラブストーリーに絡めたミステリーである。
ハヤブサ地区の町おこしドラマ企画を通し、少しずつ距離を縮める太郎と彩。お互いが気になり始めているのは明白だが、まだまだビジネスモードが抜けない。そんな大人の恋を加速させる上で欠かせないのが、対立からの和解である。
対立のきっかけは、彩がドラマ企画を町長・村岡(金田明夫)に却下されたにもかかわらず、その事実を脚本担当である太郎に伝えていなかったこと。外の人間なのにハヤブサ地区に詳しくなった中山田(山本耕史)からそのことを知らされた太郎は、彩に不信感を持ってしまう。そこで活躍するのが、消防団のおじさまたちだ。
もはやビジネス不仲の賢作(生瀬勝久)と郁夫(橋本じゅん)、その仲介役である役場勤めの森野(梶原善)と終始おふざけ担当の徳田(岡部たかし)。ふざけているようで不思議と頼もしさがある彼らは今回、ハヤブサ地区を毛嫌いする村岡による公益資金の私的利用を突き止めた。それをもって本人に揺さぶりをかけ、ドラマ制作に合意させたのである。
そんな“おじさまアベンジャーズ”の働きもあり、無事に仲直りすることができた太郎と彩。夜道で蛍を眺め、落雷被害を防ぐためにあらかじめブレーカーを落とした暗い部屋でお互いのことを語り合う……。田舎の舞台設定を十二分に生かしたロマンチックなシチュエーションで心を通わせる2人。キスのきっかけはイマイチわからなかったが、一旦結ばれたということにしておこう。
しかし翌朝、踊り出したいくらい浮かれていた太郎は雷に打たれたような衝撃を受けることに。中山田から、彩が新興宗教「アビゲイル騎士団」の元信者という情報が寄せられたのである。アビゲイル騎士団は数年前、教祖と幹部3名が信者12名を拷問の末に殺害するという凄惨な事件を起こした危険な教団。冒頭で流れた映像も彩の夢などではなく、実は彼女がかつて制作した教団のPR動画だったのだ。
まさかの事実に驚きを隠せない太郎。そしてこの第4話でもう一つわかったのが、放火の被害に遭った人たちの共通点だ。彼らは地元の寺院・随明寺への寄進額が飛びぬけて高い熱心な檀家だった。また、その多くが火災後に土地を真鍋(古川雄大)が勤める太陽光発電企業「ルミナスソーラー」に売っていたことがわかる。結果的に集落はどんどんソーラーパネルで埋まりつつあった。
真鍋が以前、彩のアパートを訪れていたのも気になるところ。二人にもし繋がりがあるとするならば、それはアビゲイル騎士団なのではないだろうか。だとしたら真鍋がソーラーパネルの普及に努めているのも、彩がハヤブサ地区の町おこしに前のめりなのも一種の宗教活動に思えてくる。
ミステリーを主軸にしながらも、ラブストーリーやコメディの要素も巧みに盛り込んでいる本作。そこでやはり効いてくるのが太郎役・中村倫也の存在であり、場面に応じて切り替わる表情が非常に魅力的である。探偵のごとく真相究明に努める際の凛々しい表情、彩を見つめる憂いを帯びた瞳、虫を前にした時の気の抜けた顔。その一つひとつから目が離せない。
(文:苫とり子)
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